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アジア・太平洋地域
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© UNICEF/2015 |
アジア太平洋地域では、HIVと梅毒の感染撲滅に向けて大きな前進があった一方で、まだ多くの母親や子どもがその恩恵を感じることができていません。
9月15日から17日かけて、中国の北京で行われる『第10回アジア太平洋国連HIV・梅毒母子感染撲滅タスクフォース会合』で議論される主要の分野の一つがこのギャップです。20カ国から集まる政府高官や専門家たちは、HIVと梅毒の母子感染を撲滅するため、検出率の向上やHIV治療プログラムの順守などの方法を模索します。
子どもの間の新たなHIV感染は、2000年から2014年までに3分の1近くまで減少しました。HIV陽性と診断され治療を受けている妊婦も、かつてないほど多くなっています。治療を受けているHIV陽性の妊婦の割合は、2010年から2014年の間に2倍以上になりました。しかし、感染率は、現在もいくつかの国で上昇し続けています。
治療を受けていないHIV陽性の女性は、最大45%の確率でHIVを子どもに感染させてしまいます。最近のUNAIDS(国連合同エイズ計画)の報告書によると、2014年だけで、アジア・太平洋地域の子どもたちの間で2万1,000件、平均すると1日に57人の新たなHIV感染が見つかっています。しかし、適切な治療をすれば、母から子への感染は約1%にまで落とすことができます。
© UNICEF/2015 |
HIVの治療を受ける親子。 |
梅毒の検査と治療は、政策面でも実施面でも、HIVの陰で遅れがちです。アジア・太平洋地域の3分の2の国では、梅毒の検査と女性へのサポートを推奨していますが、実際の検査のレベルは多様です。
梅毒は、妊婦や胎児に、流産や死産、新生児死亡、低体重出産、重大な新生児疾患など深刻な合併症を引き起こします。妊娠中のシンプルで費用対効果の高い検査とそれに続くペニシリンなどを使った適切な治療によって、このような合併症のリスクは劇的に下げることができます。
「妊娠中の女性はみな、HIVや梅毒の検査や治療を受けられるべきです。政府の強いリーダーシップと真摯な取り組みが、母親の健康を守り、生まれてくる子どもたちをHIVや梅毒から守るのです」とWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局長のシン・ヨンス氏は話しました。
HIVと共に生きる子どもたちは、必要なサービスを受けていないことがあります。アジア・太平洋地域では、HIV陽性の母親から生まれた子どもの4分の1しか、出生後すぐに検査を受けておらず、HIVに感染していると診断された乳児のおよそ半数しか、必要な治療を受けられていません。
「ひとりの親も、ひとりの子どもも取り残すことなく、HIVや梅毒の感染撲滅を押し進めます」とユニセフ東アジア・太平洋地域事務所代表のダニエル・トゥールは語りました。「私たちは、たとえ最も支援を届けるのが難しい子どもや家族であっても、確実に適切な検査と治療を受けられるようにしなくてはなりません」
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HIV陽性の女性は、妊娠中、そして出産や母乳育児を通してHIVを子どもに感染させる可能性があります。“HIV母子感染予防(PPTCT)”と言われる支援計画では、HIVと共に生きる女性が赤ちゃんへの感染を防ぐことができるよう、薬の提供やカウンセリング、心理社会的支援などが行われます。
「もしもアジア・太平洋地域の国々が今よりも倍の努力をして、HIV陽性の妊婦すべてが妊娠初期に検査を受け、治療を受けられるようになれば、子どもへのHIV感染をゼロにすることも可能になります」とUNAIDSアジア・太平洋地域支援チームのスティーブ・クロース部長は述べました。
2015年6月、キューバが世界で初めてHIVと梅毒の母子感染を撲滅したことが承認されました。「キューバは、母子感染ゼロが可能であることを世界に証明しました。アジア・太平洋の国々にも、エイズのない世代への取り組みを求めていきます」(クロース部長)
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