今、世界のインターネット利用者の3人にひとりが、18歳未満の子どもたちです。インターネットなどデジタル技術の普及は、子どもたちの生活を向上させ、人生における様々な機会を広げる一方で、ネット上で子どもが犯罪の被害に遭うなど、リスクももたらしています。

ユニセフの基幹報告書「世界子供白書2017」は、「デジタル世界の子どもたち」がテーマです。

デジタル世界の可能性と危険性

デジタル技術は、私たちが暮らす世界を大きく変えました。産業も、社会情勢も、私たち一人ひとりの暮らしさえも。現在、世界中でますます多くの子どもたちがインターネットとつながるようになり、そのことが子どもの生活や人生の機会に変化をもたらしています。

デジタル技術が正しく活用され、誰もがアクセスできるものになれば、貧困、人種、民族、ジェンダー、障がい、あるいは地理的な孤立などの理由で不利な立場に置かれている子どもたちも、様々な機会を得ることができ、よりよい未来を築くことができます。

一方で、インターネットの普及によって、子どもたちは、個人情報の悪用、有害なコンテンツへのアクセス、ネットいじめといった、これまでになかった様々なリスクに晒されていることも事実です。多くの子どもたちは、スマートフォンなどのモバイル機器を用いてインターネットにアクセスするため、おとなから見守られる機会が減少し、より危険性が高くなっています。

さらに、「ダークウェブ」や暗号通貨などのデジタル・ネットワークは、人身売買、ネット上で注文に応じる形の性的虐待を含む、最悪な形態の搾取と虐待を可能にしています。

本白書を発表した2017年12月、ユニセフ事務局長アンソニー・レーク(当時)は、「良くも悪くもデジタル技術は、今では私たちの生活の後戻りできない現実となっています。デジタル世界で、私たちが直面している二重の課題は、いかにして、すべての子どもたちに対して、インターネットの恩恵を最大化しつつ、彼らが被る危害を抑制するかということです」と述べています。

また、デジタル世界でも格差の問題が存在しています。世界の若者人口の3人に1人にあたる3億4,600万人は、インターネットが利用できない環境に置かれており、世界の進歩から取り残されているとともに、デジタル化が進む経済に参加するために必要な能力を習得できなくなっています。

これらの問題の他にも、ユニセフの世界子供白書2017では、デジタル技術が様々な方法で子どもたちの生活や人生の機会に影響を与えている状況を検証しています。

「世界子供白書2017」が提示するデータの例:

  • インターネットに最も繋がっているのは若者世代。世界の若者の71%がインターネットに接続。人口全体では48%。
  • インターネットに繋がっていない若者が最も多いのはアフリカで、5人に3人の割合。ヨーロッパでは25人に1人と、地域間で格差が生じている。
  • すべてのウェブサイトの約56%は英語。そのため、多くの子どもたちにとって、理解ができ、あるいは、文化的に適切なコンテンツを見つけることが難しい。
  • 世界で明らかにされている子どもの性的虐待サイトは、10件に9件以上の割合で、カナダ、フランス、オランダ、ロシア、および米国の5カ国に集中している。

ネット上の保護強化とともに、機会の拡大を

『世界子供白書2017 ~デジタル世界の子どもたち』は、最も不利な立場に置かれた子どもたちに恩恵を与え、最も弱い立場にある子どもたちへの被害を制限するとともに、デジタル技術の力を最大限に活用するため、下記6つの優先的行動を提案しています。

  • すべての子どもたちに、質の高いオンライン・リソースへの安価なアクセスを提供する
  • 子どもたちを、インターネットを通じた虐待、搾取、人身売買、ネットいじめ、不適切な素材への接触などの被害から守る
  • 子どもたちのネット上のプライバシーとアイデンティティを守る
  • 子どもたちがインターネットを通じて情報を取得し、参加し、安全でいられるためのデジタル・リテラシーを教える
  • 民間セクターの力を活用して、インターネット上で子どもたちが保護され、恩恵を受けられるための、倫理的基準や行動を前進させる
  • デジタル技術に関する政策の中心に子どもたちを据える

インターネットは当初、おとなのために設計されました。しかし子どもや若者の利用が増え続けた今、デジタル技術が彼らの人生や将来に及ぼす影響が、ますます高まっています。政府、民間セクター、子どものための組織、研究者、家族、そして子どもたち自身が、ともに行動を起こすことで、デジタル世界を格差のない公平なものにするとともに、インターネット空間を子どもにとってより安全で誰もがアクセスできる場所にすることができます。

持続可能な開発目標(SDGs)

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