メンタルヘルスへの高まる懸念
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、子どもや若者、親や養育者のメンタルヘルスに大きな懸念をもたらしました。
メンタルヘルスの問題に対する認識が高まり、対策を求める声が高まっていることを背景に、子どもたちの良好なメンタルヘルスを促進し、厳しい状況にある子どもたちを保護し、いまだかつてない課題に直面している子どもたちをケアする、またとない機会が到来しています。
ユニセフの基幹報告書『世界子供白書2021』は、「子どもたちのメンタルヘルス」がテーマです。
家庭、学校、コミュニティにおけるリスク要因と保護要因がどのようにメンタルヘルスの結果を形成するかに特に焦点を当て、考察しています。
子どものメンタルヘルスにまつわる課題
ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは、子どものメンタルヘルスにまつわる課題について、次のように述べています。
「COVID-19のパンデミックにより、世界中の子どもたちが日常の喜びを奪われました。貧困や暴力が増加し、多くの子どもたちが悲しみ、傷つき、不安を抱えています。
しかし、パンデミックが起きなくても、紛争や深刻な逆境を経験したり、教育や保護を受けられなかったりすることによって引き起こされるメンタルヘルスの不調が、子どもたちを苦しめています。
実際、COVID-19のパンデミックがもたらしたメンタルヘルスの問題は氷山の一角に過ぎません。私たちが行動を起こさない限り、パンデミック収束後も、子どもや社会に悲惨な結果をもたらし続けるでしょう」
無視された問題
- 世界中で、こころの病気は、子どもや若者の健康や教育、そして彼らが可能性を最大限に発揮することを妨げる大きな要因であり、見て見ぬふりをされがちな苦しみでもあります。
- 何もしないでいることの代償は、人の命、家族やコミュニティ、経済を犠牲にするという点において、非常に大きいものです。
- 子どもたちのメンタルヘルスを促進、保護、ケアするための対応が広く求められているにもかかわらず、投資はごくわずかにとどまっています。政府がメンタルヘルスの問題に費やす費用は、ひとりあたり1米ドルにも満たない国もあります。
子どもの基盤
©UNICEF/UN0377921/Panjwani
- メンタルヘルスは広く偏見(スティグマ)と誤解を受けていますが、実際には健康や幸福を前向きに捉えるものであり、子どもや若者が将来を築くための基盤となります。
- リスク要因と保護要因は、重要な発達段階にあるメンタルヘルスに影響を与えます。
- 子育ては、子どもたちのメンタルヘルスの基礎を築くために非常に重要ですが、多くの親はより多くの支援を必要としています。世界では15%の子どもが低体重で生まれ、約15%の女性が18歳までに母親になっています。
影響を受けやすいメンタルヘルス
- 学校や学習環境は、メンタルヘルスを支える機会を提供する一方で、いじめや試験に対する過度なプレッシャーなど、子どもたちをリスクにさらすこともあります。
- 人道危機やCOVID-19のパンデミックのような出来事はもちろん、世界の社会経済的、文化的要因は、すべてメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。2018年には4億1,500万人の子どもがストレスやトラウマにさらされていました。
- 家庭、コミュニティ、学校、社会的養護など、さまざまなシステムや分野にまたがる支援は、メンタルヘルスの促進と保護に役立ちます。
子どものメンタルヘルスを促進し、保護し、ケアするために
『世界子供白書2021』は、すべての子どもたちのメンタルヘルスを促進し、厳しい状況にある子どもたちを保護し、大きな問題に直面している子どもたちをケアするためのコミットメント、コミュニケーション、行動を呼びかけるものです。
©UNICEF/UN0419392/Dejongh
- コミットメント
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- リーダーシップの強化
- パートーナーやステークホルダーの明確な目標設定
- さまざまな分野の解決策や人材への投資
- コミュニケーション
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- スティグマへの対処
- 知識や理解の向上
- 沈黙を破り、メンタルヘルスの問題の当事者である子どもや若者の声を活かすこと
- 行動
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- 子どもたちの主要な領域におけるリスク要因の最小化および保護要因の最大化
- 支援の確保やシステムの強化などの取り組みに対する投資および人材育成