気候変動により、異常気象が起こる頻度が増え、災害の規模も大きくなっています。気候変動による影響は、すでに世界各地で食料や水、感染症、災害などさまざまな問題を引き起こしており、国際社会が十分な行動をとらなければ、状況はさらに深刻になる可能性が高まります。
その影響をもっとも受けるのは子どもたちです。世界中の子どもたちの健やかな成長と、将来の可能性がうばわれています。
洪水に見舞われた地域で、通学路を覆った水を足でかき分けながら学校に通う女の子(バングラデシュ)
自宅が、大型の台風と6フィートの高波によって破壊され、がれきの上に座る子ども(フィリピン)
パキスタンでの大規模な洪水、ヨーロッパと中東の一部での猛烈な熱波、アジア・太平洋諸国での大型ハリケーンによる被害など、気候変動に起因する大災害が相次いでいます。
気候変動がもたらす影響は、従来の人道的危機を深刻化させ、多数の人々の移動、子どもの栄養不良、感染症の蔓延などを引き起こしています。また、水のように希少な資源をめぐる競争も起こり、地域間紛争のリスクが高まる要因になっています。
世界のすべての地域は、安全な水の不足という課題に直面しています。水資源が十分にある国でも、水不足は珍しくありません。水インフラの崩壊や水質汚染、水資源の不適切な管理、紛争など、さまざまな要因で生じ悪化する水不足は、子どもたちの命と生活を脅かします。
近年、アフリカのサヘル地域で記録的な干ばつが相次いでいるように、災害はより頻繁かつ深刻になっており、影響を受ける地域も広がっています。こうした水の問題は、気候変動の影響によって今後さらに悪化すると予測されています。水需要が世界的に高まっていることも、水不足を深刻化させる要因となっています。
深刻な干ばつで干上がった川から、わずかに残った水を集める男の子(ソマリア)
深刻な干ばつ被害のため、農作物は不作となり、水場は干上がり、食料不安につながっている(ザンビア)
水不足になると、生存に欠かせない安全な水が手に入らなくなったり、あるいは高い価格で購入しなければならなくなります。水不足によって下水道システムが機能しなくなると、コレラなどの病気が蔓延するリスクが高まり、幼い命が奪われることも少なくありません。きれいな水がなければ、家庭や学校、医療施設において、衛生を保つために不可欠な手洗いも行うことができません。
お母さんのお腹の中にいる胎児期から、幼少期、青年期、そして成人になるまで、子どもの脳、肺、免疫システム、その他の重要な機能の健康と発達は、子どもたちが育つ環境の影響を受けます。気候変動の影響が深まるにつれ、安全な環境で育てることはより難しくなります。
洪水などで家屋が浸水した被災地では、細菌やカビの繁殖、害虫の発生、下水による汚染により、不衛生で感染症が発生しやすい状態になります。感染症は、幼い子どもたちの命に大きな脅威をもたらします。5歳未満児の死亡原因の約3割は、肺炎・マラリア・下痢です。
気候変動の影響による気温の上昇、干ばつ、あるいは降水量の増加は、作物の不作を招き、食料価格を高騰させています。それにより、子どもの栄養不良が増加しています。
幼い子どもは体温調節能力が低く、脱水症状を起こしやすいため、熱中症になるリスクが高く、最悪の場合は命を落とすこともあります。また、子どもたちは遊びやスポーツなど屋外で過ごす時間が長いため、熱にさらされるリスクも高まります。
肺が成長と発達の過程にある子どもは、特に汚染された空気の影響を受けやすい存在です。子どもは大人の2倍の速さで呼吸し、体重に比べてより多くの空気を取り込みます。幼い子どもたちは口で呼吸することが多いため、より多くの汚染物質を取り込んでしまいます。
気候変動と大気汚染は相互に影響を及ぼします。気温が高くなると大気汚染物質のレベルが上がり、熱波や山火事などの気候関連現象も大気の質を悪化させます。他方で二酸化炭素などの大気汚染物質は、主要な温室効果ガスとして、気候変動を加速させる可能性があります。
気候変動の影響は、災害の激甚化・頻発化にも及んでいます。災害によって、学校が休校になったり、道路が寸断されて通学が困難になるケースや、あるいは、極度の高温や厳しい寒さによる体調不良から授業を欠席するケースがあります。
極度の高温は、子どもや青少年にストレスや睡眠不足をもたらし、こころの健康を悪化させる可能性があります。心的外傷後ストレス障害やうつ病の増加とも関連があるとされています。
ユニセフは、世界のすべての子どもが命を守られ、学ぶ権利や遊ぶ権利が奪われないよう、そして尊厳のある生活が過ごせるよう、活動を展開しています。
災害、食料難、水不足、感染症蔓延など、気候変動が世界各地でさまざまな問題を引き起こしているなか、ユニセフは、すべての子どもたちがより安全な世界で生きられるよう、長期的な支援を行っています。
メイン:© UNICEF/UNI116709/Zaidi、気候変動による影響:© UNICEF/UN0286416/Akash、© UNICEF/UN0570020/Hogsholt、© UNICEF/UN0607653/Rich© UNICEF/UNI308044/Schermbrucker、© UNICEF/UNI486142/Freese、© UNICEF/UN0271252/Tremeau、© UNICEF/UN0642753/Willocq、© UNICEF/UNI118470/Noorani、© UNICEF/UN0642143/、© UNICEF/UN0378229/Panjwani
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