© Ladybirds Cinema

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』をご覧になったみなさまへ

『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』(配給元:キノフィルムズ/木下グループ)は、小学校の卒業試験に挑戦するケニアの94歳の女性と、一緒に学ぶ子どもたちの姿を捉えたドキュメンタリーです。

世界の教育の現状:5人に1人が学校に通えず

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による都市封鎖(ロックダウン)のピーク時には、休校により世界の学齢期の子どもの9割以上が学校に通えず、この子どもたちの少なくとも3分の1が教育から完全に切り離された状態でした。今も、世界では約5人に1人、約3億2,000万人の子どもたちの学校が休校になっています(2020年12月1日現在)。

子どもにとって、学校は教育を受けるための場だけではありません。学校は、子どもたちの安全や栄養状態を支える生命線となっているため、休校が長期化すると、格差が拡大し、子どもに対する暴力が増え、児童労働や児童婚が増えるといった悪影響も懸念されています。ユニセフは、学校の再開を優先させることを各国政府に求めるとともに、学校を安全な場に保ちながら子どもたちが学習を続けられるように、政府や自治体、学校などと協力しながら取り組んでいます。

こちらでは、映画の舞台にもなったアフリカを例に、ユニセフの活動をご紹介します。

学校に通うのに年齢は関係ない

息子のアルハジくんを抱っこするヤンデさん © UNICEF Chad/2016/Bahaji

チャドのダルエスサラーム難民キャンプでは、ナイジェリアとニジェールから5,000人以上の難民を受け入れています。人々は自国を悩ませている暴力からここに逃れてきました。17歳で小学1年生になったヤンデさんにとって、難民キャンプの中にある学校が唯一安心して過ごせる場所です。

「授業を受けている間は、色々なことを考えずに済みます。学校はいつも、新しいことを学ぶ機会を与えてくれるのです」

ヤンデさんは、紫色と白色のチェック柄のスカーフで頭を覆っていますが、その可愛らしい顔の上には厳しい人生を生き抜いてきた傷跡が見られます。隣には、友人のイェカカさんと娘のマリアムちゃんが座っています。ヤンデさんとイェカカさんは、他のクラスメイトたちよりずっと年上に見えます。

ヤンデさんはかつて、ニジェール領チャド湖の島レレワに住んでいました。彼女の村では、女の子は15歳になると結婚しました。
「ある夜、両親は私を呼んで、カンドさんという漁師と結婚する約束をしたと言いました。私は彼を見たことも、ましてや会ったこともありませんでしたが、尊敬している両親には何も言えませんでした」
結婚式当日は幸せだったかと尋ねると、彼女はすぐに、「両親は幸せでしたよ。私にとってそれが大切なことなので」と答えました。その後、ヤンデさんは妊娠し、数カ月後にアルハジくんが生まれました。

「息子が生まれて間もないある日のこと、夫のカンドは漁の最中、ボコ・ハラムに襲われました。彼らは、ボートやお金すべてを引き渡し、すぐに漁をやめるように脅しましたが、夫は抵抗したために殺されてしまいました。息子はもう、父親に二度と会うことができません」と彼女は悔しそうに言いました。

「数日後、ボコ・ハラムが私たちを殺すために村に向かっているから、すぐに逃げるようにと兵士たちから命令されました。私は夫を亡くしたばかりで、幼子を腕に抱えていました。 周りには、私のような人が大勢いました。子どもたちは泣いていて、何人かの母親たちも泣いていました。幸いなことに、兵士たちが私たちをダルエスサラーム難民キャンプに連れて来てくれたのです」

ヤンデさんはそのキャンプで、同じ村で育った幼なじみのイェカカさんと再会しました。「私の夫もボコ・ハラムに殺されました。同じ境遇の私たちは団結して、お互いに助け合っています」とイェカカさんは言います。

その後、ヤンデさんは好奇心から、初めて学校に入学することになりました。
「私は幼い子どもと一緒に学校へ通うことをためらっていましたが、校長先生が、息子と一緒に授業を受けることは問題ないと言ってくれました。初めて学んだフランス語の文は ‘Comment tu t’appelles?’ (あなたの名前は何ですか?)でした」と楽しそうに話します。

「学校は女性の自立に役立つと思うんです。学校に行く機会があったら、こんなに若くに結婚しなかったと思います。家族を助けていただろうし、母も私を誇りに思ってくれたでしょう」

私は2人の若い女の子と、結婚について、学校について、そして彼女たちの将来の計画など、たくさんのことを話しました。最後に、ヤンデさんはこう言いました。

「私がずっと学校に通い続けたいと言うと、なかにはからかう人もいますが、学校に通うのに年齢は関係ないと思います。大切なのは、その人がどのような意思を持っているかということだと思います」

教育は未来を変える

パンデミック以前より子どもたちの教育機会は不平等で、小学校に通うことのできない子どもの半数以上はサハラ以南のアフリカの子どもたちでした。

子どもたちが安全に学校に通えるようにすること、そして、各国がより良い体制を構築し、取り残されている子どもたちに手を差し伸べ、学習の機会が与えられることが重要です。

ユニセフは、すべての子どもたちが教育を受けられるように、世界の中でも特に困難な状況下にあるアフリカの子どもたちへの教育機会を拡大し、教育の質を向上することを目的に取り組んでいます。アフリカの教育支援に毎月募金するプログラム「マンスリー・サポート・プログラム スクール・フォー・アフリカ」にぜひ、ご参加ください。

ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム
スクール・フォー・アフリカ