|
氏名 | 波多野 奈津子 |
---|---|
派遣先 | ベトナム事務所(ハノイオフィス) |
派遣期間 | 2016年10月~2017年2月 |
ベトナムは、北に政治の中心であるハノイ、南に商業都市であるホーチミンが位置し、国土の3分の1が山岳・丘陵地帯で、人口の8割以上を占めるキン族を含めて54もの民族が暮らす多民族国家です。1980年代の市場経済導入後、目覚ましい経済成長を遂げ、2015年を目標年としたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)では、貧困率が約20年前の58%から8%に減少し、保健や教育の目標値も大きな改善が見られました。しかし、2014年の国の統計によると、年間約3万4千人の子どもが5歳になるまでに予防可能な疾患で命を落としており、そのうち7割近くは生後28日以内の乳児です。主な原因として窒息死、感染症や未熟児などが挙げられ、出産前後と出産時の妊産婦と子どものケアが欠かせません。また、地域や民族間に格差もあり、山岳地帯や少数民族の多い省※1では、乳児死亡率が国全体の平均より2.5倍にのぼることが分かっています。
そのような中、インターンでお世話になったUNICEFベトナム事務所のChild Survival and Development Sectionでは、妊産婦、新生児および乳児の死亡数を減らすことを目標に、対象となる4つの省で医療従事者の育成とコミュニティでの啓発活動を通じて、適切な母子保健サービスが届けられるよう事業を展開しています。私の主な役割は、2015年から始まったこの事業の進捗と今後の課題についてデータを収集・分析し、資金提供側の民間企業に対して報告をするモニタリング業務でした。そのため、保健省の専門家と一緒に省のリプロダクティブヘルスセンターや県、区の病院を訪問し、活動状況の聞き取りや、院内の設備環境、研修知識やスキルの確認調査を行いました。視察を通じて、地理的に医療が届きにくくインフラ整備が十分とは言えない地域でも、基礎的ケアの内容を定め※2研修と指導によりお産ケアを浸透させる仕組みについて学びました。
その他にも、新生児ケアを受けた母親に対するインタビューの実施と広報記事の作成、支援対象地域における母子保健の現状分析、Integrated Early Childhood Development※3に関する広報ツールの作成などの業務に携わりました。
今回のインターンシップから、ユニセフのプロジェクトや問題解決のためのアプローチについて実務を通じて学び、子どもの健康を守るためにあらゆる分野の人や組織と連携することが今後益々重要になっていくと実感しました。ベトナム事務所は、One UNという国連組織間の協調体制を推進する拠点の一つとなっており、WHOやUNFPA、UN Womenなど関連機関との交流も身近にあったため、そのような広い考え方について学ぶことのできる絶好の場であったと思います。大学院で集中的に学んだ母子保健分野の知識を生かしつつ、このような幅広い経験ができたのも、日本ユニセフ協会、ユニセフベトナム事務所ならびにユニセフ活動をご支援いただいている皆さまのおかげであり、この場を借りてお礼申し上げます。
活動の進捗をリプロダクティブヘルスセンターの方(写真左)と確認
インターナショナル・ボランティア・デーのイベントにて(左から二人目)