【2015年7月1日 カボンガ(ブルンジ)発】
暴力から逃れるために隣国タンザニアに避難したブルンジ難民の間で広がるコレラの流行に対応するため、ユニセフは、保健スタッフが携帯電話を用いて新たな感染ケースを追跡、監視できる取り組みを支援しています。
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「娘の具合が悪くなり始めたのは、月曜日のことでした」と、ウズィヤ・ンヤベンダさんは娘のエスタちゃんについて振り返って話しました。「水曜日には、酷い下痢と嘔吐の症状が出てきたので、娘を保健センターへ連れて行ったのです。コレラに感染したのではないかと思い、心配しました」
© UNICEF Burundi/2015/Nijimbere |
28歳のウズィヤさんと7歳のエスタちゃんは、タンザニアとの国境からわずか数キロメートルに位置するブルンジ南部のカボンガ村出身です。不安定な情勢と暴力の恐怖が増す中で、近隣諸国にはブルンジの人々の波が押し寄せています。今年4月以降、タンザニアには6万2000人以上の人々が避難しており、ウズィヤさん親子も避難民です。
「このあたりで私たちはたくさんの噂を耳にしました。多くのスクーターが国境を越えていると聞きました。私は怖くなって、自分も行きたいと思いました」と、ウズィヤさんはタンザニア行く決心をした日を振り返ります。「そして4人の子どもと近所の人たちと一緒に木製の船に乗ったのです。1時間と少しでタンザニアに到着しました。」
エスタちゃんの家族はタンガニーカ湖畔にある小さな地域、カグンガに到着しました。そこでは、何千人ものブルンジ難民がタンザニアにあるニャルグス難民キャンプへの搬送を待っていました。
カグンガは多くの難民が突然押し寄せたことで、非常に混雑していました。大部分は女性と子どもでした。清潔な飲料水と適切な衛生設備が限られており、コレラが発生しやすい状態になっていました。そして一度コレラが発生すると、保健医療機関を求めてブルンジへ戻る人々も出るため、感染はさらに広がってしまうのです。
「コレラはタンガニーカ湖畔特有の病気です」と、ユニセフ ブルンジ事務所ドロシー・ンタキルティマナ保健担当官は説明します。「ここではほぼ毎年コレラが流行しています。今回は人々が国を逃れて湖の反対側のタンザニアに移動したため、流行が勃発してしまいました。したがって、今回初めて確認された感染ケースは、湖の反対側、つまりタンザニアでした」
「下痢の症状を発症していた女の子と同じ場所で寝ていました」と、ウズィヤさんは説明します。「娘は熱があったので、私は初めエスタはマラリアに感染したのだと思いました。しかし、近くに保健センターがなかったのです」
混雑するカグンガの状況を見て、ウズィヤさんは最終的にブルンジの家に戻ることに決めました。「夫に電話で連絡すると、私たちがいる場所の状態は良くないと言いました。それで、夫が私たちを自転車で迎えに来たのです。家に戻るまで2時間かかりました」と彼女は話します。国境を越える付近でエスタちゃんは既に具合が悪くなっていました。カボンガの新設コレラ治療センターに移され、水分補給と亜鉛の提供といった治療を受けました。
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タンザニアに逃れてきたブルンジ難民が皆、再び国境を越えて自国に戻るという事態に陥り、6月末時点でブルンジ国内で確認されたコレラの症例は突然170件近くに上りました。これを受け、リアルタイムでコレラの症例を確認し、追跡することが必要不可欠となったため、ユニセフが支援する、携帯電話を活用したRapidPro(ラピッド・プロ)が導入されました。これを保健スタッフが使うことにより、新しい感染ケースや各患者の症例の進捗状況が報告され、全体の状況をモニタリングすることができるのです。
「ショート・メール・サービス(携帯テキストメッセージ)のアラート機能を使って、コレラの症例を突き止めるのは初めてのことです」と、ンヤンザ・ラック保健区で健康情報システムを担当するグロリオス・ンセンギュンバ氏は話します。「中央本部がすべての症例を把握し、必要な行動をとるためには、これが一番迅速な方法です。もし発症人数が増加している現在の状況でこのシステムがなければ、もっと多くの死亡者が出ていたでしょう」
コレラへの効果的な対応は、単に感染症例が確認された人々を治療するだけではなく、新たな感染を防止することも含まれます。保健センターやコミュニティ内で使用する啓発ツールは感染を予防し、病気の発生を迅速に抑制するために重要なのです。
ランギで地域保健スタッフのボランティアとして働くクラベール・ンディホクブワヨさんは、地域の人々がコレラ予防のメッセージを理解しやすいよう、イラストを使用しています。
「コレラ感染予防、対処方法―トイレを清潔に保つこと、手洗いをすること、川で汲んできた水は飲む前に消毒すること、もしも病気を発症した場合は感染拡大を防ぐために保健センターへ行くこと―を説明するためにこれらの啓発ツールを使っています」とクラベールさんは話します。
カボンガに戻り、ウズィヤさんは娘のエスタちゃんと自宅の玄関前の階段に座っています。5日間の治療を経て、エスタちゃんは体力と健康を取り戻しました。そしてウズィヤさんは今、再びコレラに感染しないようにするためには、どうすれば良いのかを知っています。
「娘が健康を取り戻すことができてとても嬉しいです。彼女の回復を助けてくれた看護師の方々に感謝しています」とエスタちゃんを笑顔で見つめながらウズィヤさんは話します。「今私は近所の人々にコレラをどのように予防すればよいか伝えようと思っています。この地域でもうこれ以上コレラが発生することはないでしょう」
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ユニセフはパートナー団体と連携して、ブルンジ国内におけるコレラ流行を防止するために、ブルンジの保健・エイズ対策省を支援しています。ユニセフはタンザニアとブルンジを隔てる国境沿いにコレラキットを設置するとともに、二ヵ所のコレラ治療センターの再建も支援しています。さらにユニセフは、コレラ症例管理のためにRapidPro(ラピッド・プロ)の活用をサポートし、石けんを使った手洗いといったシンプルな予防対策を確実に行ってもらえるよう、啓発ツールを提供し、保健センターやコミュニティーでの普及を促進しています。
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