【2015年11月10日 ニューヨーク/ジュネーブ発】
ユニセフ(国連児童基金)は10日、発達を続けているエルニーニョ現象の影響により、東部・南部アフリカの推計1,100万人の子どもたちが飢餓や病気、水不足の危機に晒されていると警告。エルニーニョ現象は、アジア・太平洋地域や南アメリカの一部でも洪水や干ばつを引き起こしています。
作物の不作や飲み水の不足により子どもたちが栄養不良や命を奪う感染症のリスクに晒されている中で、エルニーニョによって被害を受けているコミュニティの人々が支援を受けられなければ、その影響は数世代に及ぶ可能性があると、ユニセフは報告書『A wake-up call: El Niño’s impact on children (警鐘:エルニーニョ現象が及ぼす子どもたちへの影響) 』の中で述べています。
死や負傷といった差し迫ったリスクに加え、エルニーニョはマラリアやデング熱、下痢、コレラなど、子どもたちが命を落とす主因となる感染症の著しい増加につながる可能性があります。異常気象がコミュニティの人々の生計を奪うと、幼い子どもたちは低栄養で苦しみます。低栄養は、病気になる危険性をより高くし、精神的な発達を遅らせ、早すぎる死をもたらします。
「子どもたちやコミュニティは、エルニーニョの被害から回復するため、そして将来のさらなる被害の可能性に備えるための支援を必要としています」とユニセフ事務局長のアンソニー・レークは述べています。「同時に、エルニーニョの威力と潜在的破壊力は、パリに集う世界のリーダーたちに警鐘を鳴らすものです。地球温暖化防止対策の枠組みへの合意を目指す協議の中で、今日の子どもたちと、子どもたちが受け継ぐ地球の未来が危機に瀕していることを、彼らは思い出すべきなのです」
国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は、フランス・パリで、11月30日から12月11日の日程で開催されます。その目的は、温室効果ガス排出量削減による温暖化防止に向けて、国際社会が普遍的で拘束力のある新枠組みに合意することです。
© UNICEF/NYHQ2015-0512/Sokhin |
エルニーニョは気候変動によってもたらされているものではありません。しかし、科学者たちは、気候変動の結果エルニーニョ現象がより深刻になっていると考えています。現在エルニーニョの影響を受けている多くの国々は、気候変動の最も大きな脅威に直面している国々なのです。影響を受けている地域の多くはまた、貧困レベルも高いのです。
観測史上最大級のこの気象現象が、気象予報通りに今後数カ月間にわたって発達を続ければ、さらに多くの洪水や干ばつを引き起こし、台風やサイクロンを発生させ、被災地域はより拡大する可能性があります。
ソマリア: 300万人以上が作物の不作や食糧不足によって支援を必要としている。深刻な洪水によって、更なる状況の悪化が見込まれている。
エチオピア:過去30年間で最悪の干ばつが国を襲い、820万人が食糧不足に陥っており、子ども35万人が栄養支援を必要としている。
インドネシア:エルニーニョが泥炭および森林火災の影響を悪化させている。煙霧により、8月~9月だけで27万2,000人が急性呼吸器感染症に陥っており、特に子どもたちが影響を受けている。
太平洋諸国:エルニーニョの影響により、400万人以上の子どもたちが、食糧や水を手に入れることができなくなる恐れがある。
中央アメリカ:エルニーニョによる干ばつは観測史上最も深刻であり、グアテマラやホンジュラス、エルサルバドルのおよそ350万人が影響を受けている。
ペルー:政府によると、子どもと若者40万人を含む推定110万人が影響を受ける可能性がある。
エクアドル:150万人がリスクに晒されており、その半数は子どもたちだと考えられている。
*エルニーニョ現象は、太平洋の海面水温が上昇し、世界中の気象に重大な影響を及ぼす可能性がある気候パターン。2年~7年周期で発生。
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