【2016年2月17日 メキシコシティ発】
メキシコでは、両親が子どもを残してアメリカへの移住したで取り残された子どもたちや、中米諸国から仕事や安全を求めて国境を越えてきた外国人の子どもたちが急増しています。ユニセフ・メキシコ事務所では、おとなの同伴がなく社会的保護を必要としている子どもや青少年への対応を強化しています。
© UNICEF México/Daniel Ojeda |
オーランドくんは、暴力から逃れ少しでも良い生活を求めて、エルサルバドルからメキシコに渡ってきた10代の移民です。「僕の場合、すべては家の中で始まったのです。僕が6歳の時から、義理の父が兄と僕を虐待しました。些細なことで僕たちを殴ったのです。大きくなるにつれ、兄はこの状況に耐えられなくなり、マラス(エルサルバドルを拠点とするギャング)に加入しました。だけど、兄はマラスのメンバーに暴行され、重傷を負いましたが、幸い病院で一命を取り留めました。それで、僕は家を出ることに決めて、メキシコにやってきました」とオーランドくんは話します。「僕の将来の夢は、メキシコに残って弁護士の仕事に就き、移民の権利を求めて闘うことです」と決意を見せます。
©UNICEF México/ACarlomagno |
フェリックスくん(7歳)はメキシコ・ゲレロ州の自宅で祖母と妹たちと暮らしています。しかし、両親は家にはいません。「今は北(アメリカ合衆国)にいます」と話します。両親と合流するため、彼は「叔母さん」役の女性に引き渡され、車でティファナ・サンイシドロ間の国境を越えるために連れて行かれました。しかし、越境は失敗しました。
「書類に書いてあった名前は、お母さんやお父さん、ぼくの名前とは違っていました」と、メキシコに強制送還されたフェリックスくんは話します。「お父さん、お母さんと一緒に暮らしたかったです」と、いらだちの表情を浮かべて言います。
ティファナやその他多くの国境の町では、フェリックスくんのようなケースが、毎日何十件も繰り返されているのです。
おとなの同伴なく移住し、メキシコ移民当局に摘発される外国人の子どもや青少年の数は、2013年の5,596人から2015年の18,650人まで3倍以上に増加しています。そのため、このような子どもたちの権利が尊重されるよう、この問題への徹底した取り組みが必要なのです。
2015年に移住してきた子どもたちの97パーセントは、ホンジュラス(27.4パーセント)、グアテマラ(49.6パーセント)、エルサルバドル(20.5パーセント)の出身です。その大半は、12歳から17歳までの青少年です。
また2015年には、アメリカ合衆国から送還されたメキシコ人の子どもたちや青少年の事例が1,100万件以上ありました。このうち、84パーセントに当たる9,841人は保護者の同伴なく越境していました。
おとなに付き添われず移住する子どもたちは、事故、人身売買、犯罪組織への勧誘、虐待、搾取など重大な危険に直面するため、緊急の保護が求められます。
© UNICEF México |
合法的に移住できる書類を有していない子どもたちや青少年は、司法、教育、保健、その他基本的な社会サービスへのアクセスに関して多くの困難に直面します。出身国に送還され、二度と家族と会えなくなるのではないかという恐怖を抱えながら生活しているため、当局に対していかなる社会的保護も求めないケースが多いのです。
「メキシコが子どもたちの権利保護に関してより効果的な仕組みを確立できるよう、ユニセフは国全体の取り組みを共に推進します。このことは移住する子どもたちや青少年にとっての利益となるのです」とユニセフ・メキシコ事務所のイサベル・クローリー代表は話します。
「移民であるという以前に、子どもたちは権利を有する人間です。だから、移民当局の担当者が子どもたちの権利の保護について熟知し、心の傷を悪化させないようなコミュニケーションの取り方を学び、子どもたちの利益を最優先にしながら手続きを進められるよう、私たちユニセフは当局と協力しながら対応に当たっています」
最近の取り組みの一例として、駐アメリカ合衆国のメキシコ大使館・領事館員に対するトレーニングを実施しました。保護者の同伴のない子どもたちや青少年へのより適切な接し方について、実践的な知見を学ぶことが狙いです。さらに、ユニセフはメキシコ当局に対して、携帯電話やタブレットを用いて、場所を問わずリアルタイムで子どもたちの登録を行えるような先進技術の導入を支援しました。
「当局に拘束された子どもたちが最初に接するのは領事担当者です。彼らの役割としては、初期の調査を実施し、それを通して保護者の同伴のない子どもたちの特に脆弱な側面や保護に関するニーズを特定することが求められます」(クローリー代表)
ユニセフ・メキシコ事務所は、メキシコと世界中の子どもたち・青少年の生活を向上させるため、世界各国で得られた知見を活用しながら取り組みを継続していきます。
*名前は仮名です
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