【2016年3月29日 エチオピア発】
ユニセフ事務局長のアンソニー・レークが、深刻な干ばつに見舞われているエチオピアを訪問した際の様子を報告しています。
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©UNICEF/UN013928/Tesfaye |
干からびた作物、息絶えた家畜・・・1,020万人以上の人々が、命を守るための支援を緊急に必要としています。そして600万人の子どもたちが、渇きや飢え、病気に苦しみ続けています。エチオピアは現在、過去数十年間で最悪といわれる深刻な干ばつに直面しています。
岩が多く乾燥した大地が広がるエチオピアのアファール州ほど、この危機の影響を受けている地域はほとんどありません。ユニセフが支援する2つのプロジェクトが展開されているこの地域を、私はつい先日訪れました。
アファール州は、貧困下で暮らす人口の割合が、エチオピア国内で最も高い地域です。干ばつが起こる前でさえ、この地域では170万人が日々の困難に直面しながら、並外れたたくましさと尊敬に値する粘り強さを持って、必死に生活を送っていました。
岩石が多く、長い道のりを、砂ぼこりを上げながら車で進むと、岩や枝、布で作られた簡易な構造の住居が現れました。遊牧という生活は尊重されるべきである一方で、多くの遊牧民の子どもたちは、保健ケアや教育、必要な保護を受けられていないことも事実です。そして、児童労働や児童婚、FGMが、あまりにも一般的に行われています。女の子たちは、水を背負って何キロも歩かされています。さらに、この地域の5歳未満児死亡率は、国全体の平均よりもはるかに高くなっています。
遊牧民の人々に必要な水や医療ケア、教育を提供することは、非常に困難を伴います。この干ばつの影響で、支援を届けることがより困難になった上、事態はさらに差し迫っています。
例年であればエチオピアの農業生産量の80%以上を支えるはずの雨季に雨不足であったことや、エルニーニョの影響が重なり、アファール州の人々は、家畜の飼育や最も基本的な食糧の栽培で、更に厳しい課題に直面しています。エチオピア全体では、43万5,000人の子どもたちが重度の急性栄養不良の危険に晒されていますが、その多くがこの地域に偏っています。安定した給水源がなければ、病気から身を守る基本的な衛生やトイレすら、想像し難いほど贅沢なものになってしまいます。
©UNICEF/UN013935/Tesfaye |
しかし私は今回の訪問で、人々の窮状に心を痛めただけではありません。多くの人々の協力の下、エチオピア政府とユニセフのスタッフが、パートナーとの協力のもと、困難な生活を送る人々のために行っている革新的な支援活動に、刺激を受けるとともに大きく励まされ、勇気をもらいました。
人里離れたルバカダ村のコミュニティでは、エチオピア政府による20の移動保健栄養チームの1つが活動する支援現場を訪れました。移動保健栄養チームは、移動を続ける遊牧民の人々に、保健や栄養のサービスを直接届けています。チームは、スケジュールに従って、毎日新しい場所へと移動します。不安な気持ちを募らせながら子どもを連れてきた母親に対し、医療相談や妊産婦ケア、予防接種、マラリア予防対策、衛生サービスなどを提供するスタッフの支援の様子を目にしました。この移動チームによる支援は、保健ケア施設が新設されるまで、今後6カ月間続けられる予定です。
貧困にあえぐムセルという地域では、地球の周りを回る人工衛星を利用した水分地質マッピングによって、この人里離れた砂漠地域で暮らす人々の生活に、変化がもたらされています。当初はNASA(米国航空宇宙局)の、現在はEUROSTAT(EU統計局)の人工衛星によって、地下200mほどにある淡水を掘り当てるための最適な場所を、正確に示すことができるのです。地下の水源を探すために「運を天に任せて掘ってみる」という一昔前の方法だと、実際に水源を掘り当てられる確率は30~40%でした。しかし、この技術を利用した3つの井戸の設置では、100%の確率で、水源を正確に掘り当てることができました。現在設置中の4つ目の井戸が完成すれば、複数の村で暮らす1万7,000人と、飼育されている家畜が、持続的な水源を得ることができるようになります。
この取り組みは、トラックで水を運ぶ給水支援と比較すると、非常に費用対効果の高いものです。トラックによる給水支援3回分の費用で、持続的に使用可能な井戸1つの設置が可能です。
これは始まりにしか過ぎません。欧州連合と独、英、米政府、そしてエチオピア政府と協力し、ユニセフは村や学校、保健センターで、あるいは家畜用に水を利用できるようにするため、アファール州内のさらに7地域でもこの取り組みを広めるべく支援を行っています。
この取り組みは、家畜や人々の生活を守るだけではなく、干ばつで苦しむ人々の命を守るものです。そして、長期的に人々の生活と命を守り、コミュニティが将来起こり得る干ばつに耐え、回復する力を備えられるようにする可能性も提供します。この支援は、エチオピアの人々に、未来への希望をもたらすのです。
1歳の子どもを抱えた15歳の母親に、将来、子どもがどのようなおとなに育ってほしいか、と尋ねました。すると少女は、そんなことは今まで一度も考えたことがないかのように戸惑い、私はその姿にとても胸が痛みました。少女はそれからただ一言、「良くなってほしい」と答えました。
ユニセフの支援は、アファール州で暮らす遊牧民の人々に、強制ではなく、より定住した生活の選択肢という、新たな可能性をもたらしています。そしてまた、人々がより良い生活を送れるようになるための支援をしています。それは、世界のすべての母親が子どもに望むことであり、世界のあらゆる場所で暮らすすべての人が手にするに値するものなのです。
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