【2016年4月21日 ナイジェリア発】
生後25日のザイナブ・モハメドちゃんが、落ち着かない様子で泣き続けています。ナイジェリア北東部の紛争で自宅からの避難を強いられた人々が身を寄せるダロリ避難民キャンプ内の保健センターで、ザイナブちゃんが母親と一緒に診察を受けています。
母親が微熱の続くザイナブちゃんを少しでも楽にさせてあげようとするなか、看護師は熱を冷ますためにザイナブちゃんの服を脱がせました。そして、母親に母乳育児を続けるためのカウンセリングを行いました。しかし、外の気温は43度に達しており、ザイナブちゃんの熱を下げる手立てにはなりません。
© UNICEF/Nigeria/ Esiebo 2015 |
保健センターの乳幼児のための病棟には、ザイナブちゃんを含めた21人の赤ちゃんがいます。全員がナイジェリアと周辺国で2009年から続く紛争下で生まれました。この紛争で、200万人以上の人々が自宅からの避難を強いられ、その半数以上は子どもたちです。マイドゥグリの町から15キロほどの場所に位置するダロリ避難民キャンプには、暴力から逃れてきた3万人以上の人々が暮らしています。
母親のアミナさんは、武装勢力の襲撃により暮らしていた町が乗っ取られ、避難してきました。当時、アミナさんは妊娠していました。幸いにも、アミナさんはダロリ避難民キャンプに向かう交通手段を見つけることができました。しかし、全員がアミナさんのように無事に避難民キャンプに辿り着けたというわけではありません。避難民キャンプへ辿り着くための長い移動中に出産をしなくてはいけなかった人、辿り着くことができず、途中で命を失ってしまった人、病気になってしまった妊婦もいたといいます。
© UNICEF/NYHQ2015-2030/Esiebo |
日本政府を通じた日本のみなさまからの支援のおかげで、ダロリ避難民キャンプには設備の整った保健施設が運営されており、キャンプへ辿り着いたアミナさんもすぐにこの施設を利用して、その後無事に出産することができました。また、ユニセフはパートナーとともに、2015年、ナイジェリアの紛争で最も甚大な影響を受けた地域にある108の保健施設でプライマリ・ヘルスケア支援を実施することができました。さらには、何十万人もの避難民を受け入れている現地のコミュニティや公式避難民キャンプで、保健施設の建設、整備、備品の補充も可能となりました。
ダロリ避難民キャンプの診療所には妊産婦ケアのための病室や分娩室も配備されており、40歳のアミナさんも、この診療所でザイナブちゃんを出産しました。「祖父と兄は、ボコ・ハラムに殺害されました。ザイナブは、傷ついた私の心を癒してくれる存在です」とアミナさんが語ります。ザイナブちゃんは落ち着きを取り戻し、母乳を飲み始めました。
一時的に上がっていた体温も、数時間後には平熱近くにまで下がりました。すくすくと育っているザイナブちゃん。予防接種もきちんと受けています。ザイナブちゃんが受けた予防接種も、日本からの支援で可能となりました。
「この避難民キャンプの多くの人たちが、看護師のおかげで命を失わずにすみました」と語るアミナさん。アミナさんは将来、ザイナブちゃんにも看護師になってほしいと話します。「ザイナブにも、将来は人の命を守る仕事をしてほしいです」
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