【2016年6月7日 東京発】
先進国も含めた世界の5歳未満の子の4人に1人が、「発育阻害」(Stunting)状態であると報告されています。
© UNICEF/UNI139083/Markisz |
「発育阻害」は、栄養不良状態の一つで、特に出産前後の最初の 1000日間に適切な栄養が与えられないために、子どもたちの身体的・精神的発達が阻害される問題です。「発育阻害」に蝕まれた身体は、元に戻ることがありません。このため、子どもたち自身の成長のみならず、地域や国の発展の“足かせ”にもなっていることが、世界中のリーダーや国際社会でも深刻に受け止められ始めています。
WHO(世界保健機構)は、スタンティングを「子どもの横断的標準成長曲線(年齢と身長の標準値を示す曲線)に対する標準偏差(SD)の値がマイナス2(-2SD)よりも低い値状態の子」、つまり、身長が、同性同年齢の子どもの平均(標準)と比べ著しく低い状態と定義しています。同じ栄養不良問題でありながら、紛争や干ばつ等による飢餓状態が引き起こす痩せ細った姿とは異なり、「発育阻害」は外見的にはその問題の深刻さを訴える力はないため、“見えにくい”のが特徴です。しかし、生涯にわたって取り返しのつかない発達の遅れをもたらし、感染性や慢性的な疾病の罹患率を高めるため、私たちがよく知っている「栄養不良」と同様に、深刻な形で子どもたちの可能性を奪っています。
© UNICEF/UNI139086/Markisz |
アグネス大使が、ユニセフ親善大使として20回目の訪問先に選んだのは、初の中南米地域、グアテマラです。グアテマラは中所得国ながら貧富の差が大きく、5歳未満児のほぼ2人に1人が慢性的な栄養不良状態に陥っています。これは、世界ワースト6位、ラテンアメリカ・中央アメリカ地域ではワースト1位の値です。グアテマラ政府は2012年に「ゼロ・ハンガー・パクト」を掲げ、「最初の1000日」の栄養問題への取り組みを最優先国策の一つに位置付け、国をあげて取り組みを進めています。この国で、アグネス大使は「発育阻害」が起こる背景、子どもの生涯や社会の発展に与える影響、また栄養問題への人々の取り組みを取材。すべての子どもが持って生まれた能力を最大限に発揮できる環境整備の必要性を訴えます。
「発育阻害」の問題は、日本も無縁ではありません。「発育阻害」との関連性についての言及はありませんが、ユニセフの2013年の報告書は、日本の低体重出生率はOECD加盟27カ国中もっとも高いと指摘しています。また、国際社会は、食糧・栄養問題が世界の持続可能な成長の“足かせ”となっているとの危機感から、ロンドン・オリンピックを契機に飢餓サミットを開催するなど、食糧・栄養問題解決に向けて官民の連携を強めてきました。この流れは、今年のリオ・オリンピック、そして4年後の東京オリンピックにも引き継がれてゆく予定です。本年8月末にケニア・ナイロビで開催されるアフリカ開発会議(TICAD)でも、日本政府は、アフリカの栄養問題の解決に資するための「食料と栄養の安全保障のアフリカ・イニシアチブ」を発表される予定です。
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©UNICEF/2016/Sokhin |
アグネス大使によるグアテマラ訪問報告会を、2016年6月21日(火)13時30時~15時、ユニセフハウスにて開催します。詳細、お申込は下記のページをご覧ください。
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