【2016年10月31日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)が発表した最新の報告書は、3億人以上の子どもたち、世界の子どものおよそ7人に1人が、国際的な基準値(PM2.5)の6倍以上の、大気汚染レベルが最も高いとされる地域に暮らしていることを明らかにしました。
報告書『子どもたちのために空気をきれいに(Clear the Air for Children)』は、衛星画像を使って、初めて、どれだけの子どもたちがWHO(世界保健機関)の定めた国際基準値を超える大気汚染に晒されているか、また彼らがどこに住んでいるのかを表しました。
この報告書は1週間後にモロッコのマラケシュで開催される国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)に先駆けて発表されました。ユニセフはこの会議で、世界のリーダーたちに対して、各国において大気汚染の削減のために早急に行動を起こすよう呼びかけます。
「大気汚染は、毎年約60万人の5歳未満児の死亡原因に大きくかかわっており、さらに何百万人もの子どもの命と将来を日々脅かしています」とユニセフ事務局長のアンソニー・レークは述べました。「汚染物資は、子どもたちの発達途中の肺を害するだけでなく、血液脳関門を通り抜け、発達中の脳にも回復不可能なダメージを与えて、彼らの将来を損なう可能性があります。いかなる社会も、大気汚染に無関心でいることはできないのです」
衛星画像は、約20億人の子どもたちが、車の排気ガス、化石燃料の大量使用、埃やゴミの焼却などにより、大気汚染がWHOの示す基準値(PM2.5)を超える地域に暮らしていることを確認しています。南アジアには、このような地域に住む子どもの数が最も多く6億2,000万人に達し、次いでアフリカで5億2,000万人。東アジア・太平洋地域で基準値を超える地域に暮らす子どもの数は4億5,000万人います。
© UNICEF/UN037102/ |
この報告書は、調理や暖を取るために石炭や木材を燃やすことによる室内空気汚染の被害も検証しています。これは特に低所得の農村地帯に住む子どもたちが影響を受けています。
屋外および室内の大気汚染は、肺炎やその他の呼吸系疾患と直接的な関係があります。5歳未満で死亡する子どもの10人に1人はそうした病気が原因で亡くなっており、大気汚染は子どもの健康を害する主要な要因の一つなのです。
子どもたちは、肺、脳や免疫システムが発達途上にあり、彼らの呼吸器に汚染物質が浸透しやすいことから、おとなよりも室内外で大気汚染の影響を受けやすいのです。幼い子どもたちはおとなよりも早く呼吸し、体重に対してより多くの空気を吸入します。最も弱い立場にある子どもたちは、すでに健康状態が悪かったり、保健ケアへのアクセスが十分でない地域で暮らしており、大気汚染が引き起こす疾病に対しても最も脆弱です。
ユニセフは大気汚染から子どもたちを守るために、COP22に参加する世界のリーダーたちに対して、それぞれの国で早急に以下の4つの対策をとるよう求めています。
「私たちは、私たちの空気の質を守ることで、子どもたちを守るのです。どちらも私たちの未来の核となるものです」とレークは述べました。
© UNICEF/UN037103/ |
ユニセフは大気汚染のレベルを下げるように提言すると共に、子どもたちをその影響から守るための活動を実施しています。例えば、ユニセフは、バングラデッシュやジンバブエなどの国々で使用する調理用ストーブの開発、配布、使用を後押しし、子どもたちの健康に対する大気汚染の影響を削減するための各国の計画を支援しています。また、子どもたちの質の高い保健ケアへのアクセスを増やすこと、肺炎などの病気に対する予防接種をおこなうことなどの各国の取り組みも支援しています。
シェアする