【2019年1月31日 ダーリウ(イエメン)発】
今や、世界最悪の人道危機となっているイエメンでは、紛争が始まって4年近くが経過し、公共サービス、特に保健サービスは壊滅状態です。今なお続く戦闘と、コレラなどの生死にかかわる感染症の蔓延、そして社会インフラの欠如が、イエメンの人々をさらに苦境に追いやっています。
こうした状況を改善するため、ユニセフは世界銀行と協力し、コレラの流行を食い止めるために国内全土に配置された緊急対応チームを通じて、迅速な支援を提供しています。男女1人ずつの2名で構成された各チームが、それぞれの担当の県や地区をまわっています。
©UNICEF Yemen/2019 |
アミラ・アブドゥラさんは、ダーリウ県を担当する緊急対応チームのメンバーで、同僚のアーメッド・アブデルムティさんとともに活動して半年ほどになります。さまざまな困難を乗り越えながら、コレラ感染が発生している地域や村々をまわっています。コレラ感染のリスクや予防方法を人々に伝えるため、時には、舗装されていない道を長い時間も歩き続けてコミュニティを訪問しています。
「私たちは、支援物資を手に持って、でこぼこ道を歩き、各家庭をまわります」と語るアミラさんは、毎日、徒歩で家々を訪問し、コレラから子どもたちを守るための方法として、衛生キットを手渡していきます。「感染症に関する知識を伝え、感染から身を守る方法として、固形石けん、粉石けん、水をきれいにする浄水剤など、衛生キットに入っている物資の使い方を、住民たちに教えています。そして、コレラの感染源から身を守る方法として、排泄物の適切な処理方法や、常に衛生的な生活をするためのアドバイスもしています。」(アミラさん)
©UNICEF Yemen/2019 |
アーメッドさんもまた、緊急対応チームで熱心に働いています。「会おうとしている家族を探すのに、時には5時間もかかることもあります。他の家々に立ち寄り、家族の情報を得てはまた探す、という行程を続けます」
アーメッドさんは、自分や家族がコレラに感染しないように、自宅の衛生環境にも丁寧に気を配っています。しかし以前、アーメッドさんの母親が自宅とは別の場所でコレラに感染してしまったことがありました。
「いつも自宅をきれいにし、貯水タンクを消毒していますが、ある日、母がコレラに感染してしまいました。どうやら、私の妹の家を訪ねた際に、汚染された野菜を口にしてしまったようでした。家に戻ってきた母に、コレラの症状が出ていることに気付いた私は、すぐに母を保健センターに連れて行き、治療をしてもらいました。おかげで、すぐに回復しました。」
コレラの脅威はとても身近なところにあり、日ごろからの意識や衛生習慣がとても大切なのです。
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アーメッドさんとアミラさんは、ユニセフやパートナー団体によるコレラ感染予防の支援に対して、感謝の想いを口にします。そして、イエメンからコレラの脅威がなくなるまで、こうした取り組みが続くことを願っています。2人は、イエメンの人々の間で、コレラやその他の感染症に対する正しい知識が広がっており、衛生や保健の習慣により気を付けるようになったと感じています。
「人々は、排水のための穴を掘り、衛生について気を付けるようになりました。また、家畜のすまいを、排泄物を捨てる場所から離れた場所に変えました。女性は洗剤を使うようになり、この地域の衛生状況は改善しています」と、アミラさんは満足そうに語ります。
アーメッドさんは、「私たちは、コレラの流行を、かなりの程度まで抑止できています。どんな困難があっても、この疾病の流行を食い止めるのが使命です。コミュニティの住民たちが感染症についての認識を持ち、すべての人々が感染のリスクから守られてほしいと、私たちは願っています」と語ります。
ユニセフは世界銀行と協力し、2017年2月以来、アーメッドさんとアミラさんのような、緊急対応チームのメンバー1,700人以上を訓練しました。こうした緊急対応チームのメンバーは、コレラ流行に対応するプロジェクトの緊急ユニットに属し、イエメン全土の様々な地域で活動をおこなっています。
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