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日本ユニセフ協会

プレスリリース

ユニセフ・WHOが警鐘
障がいのある10億人が支援機器を利用できず
先進国と途上国の格差も浮き彫り

2022年5月16日発

ユニセフ(国連児童基金)は、本日、世界保健機関(WHO)と共同で新しい報告書を発表し、世界で25億人以上が車椅子、補聴器、コミュニケーションや認知をサポートするアプリなどの支援機器(assistive product)を一つ以上必要としていることを明らかにしました。しかし、そのうち10億人近くは、機器を手に入れることができず、特に低・中所得国では、生活を改善しうるこうした機器のニーズに対して、入手率が3%程度に留まることがあります。

世界中で高まる支援機器ニーズ

生後8カ月で受けた手術によって体の一部に麻痺が残ったアシールさん(8歳)。「車いすを持てるようになる前は、ベビーカーに乗り兄に押してもらって移動していました」と話す。(ヨルダン、2020年11月撮影)

© UNICEF/UN0374251/
生後8カ月で受けた手術によって体の一部に麻痺が残ったアシールさん(8歳)。「車いすを持てるようになる前は、ベビーカーに乗り兄に押してもらって移動していました」と話す。(ヨルダン、2020年11月撮影)

報告書「支援技術に関するグローバルレポート(原題:The Global Report on Assistive Technology)」は、支援機器の世界的なニーズとアクセスに関する根拠を初めて提示するもので、入手可能性とアクセスを拡大し、ニーズに対する認識を高め、何百万人もの人々の生活を改善するためのインクルージョン政策を実施するため、一連の提言を行っています。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「障がいのある子どもは2億4,000万人近くにのぼります。子どもが成長するために必要な機器を利用する権利を否定することは、個々の子どもにとっても損失であるだけでなく、ニーズさえ満たされれば彼らが貢献できるはずのあらゆることを家族や地域社会から奪ってしまいます。支援技術が利用できなければ、障がいのある子どもたちは教育を受けられず、児童労働のリスクは高いままとなり、偏見と差別にさらされ続け、彼らの自信と幸福が損なわれてしまいます」と述べました。

浮き彫りとなる格差

生まれつき障がいがあるタンジルちゃん(6歳)。両親は経済的理由で支援機器などを手に入れることができなかったが、ユニセフから車いすの支援を受けた。(バングラデシュ、2021年2月撮影)

© UNICEF/UN0464788/Himu
生まれつき障がいがあるタンジルちゃん(6歳)。両親は経済的理由で支援機器などを手に入れることができなかったが、ユニセフから車いすの支援を受けた。(バングラデシュ、2021年2月撮影)

同報告書では、人口の高齢化や世界的な非感染性疾患の増加により、支援機器を一つ以上必要とする人は、2050年までに35億人に増加する可能性があると指摘しています。また、機器を手に入れられるかどうかについて、低所得国と高所得国の大きな隔たりにも注目しています。35カ国を分析した結果、入手可能性は、貧しい国の3%から裕福な国の90%まで、幅があることが明らかになっています。

また、機器が求めやすい価格かどうかが、入手を妨げる大きな要因だと指摘しています。支援機器を使用している人の約3人に2人が、自己負担で購入していると報告しています。また、経済的な支援を家族や友人に頼っている人もいます。

さらに、70カ国を対象にした調査結果も示されており、特に認知、コミュニケーション、セルフケアの分野で、支援技術に関するサービス提供や訓練を受けた人材に関し、大きな格差があることがわかりました。

支援機器の利用可能性向上のために

友人と一緒に校庭で遊ぶフリンパリさん(7歳)。「学校の施設が車いすに対応していて嬉しい」と話す。(ブルキナファソ、2020年10月撮影)

© UNICEF/UNI388930/Dejongh
友人と一緒に校庭で遊ぶフリンパリさん(7歳)。「学校の施設が車いすに対応していて嬉しい」と話す。(ブルキナファソ、2020年10月撮影)

支援機器は一般に、地域生活やより広い社会に、他の人と対等に参加するための手段と考えられています。支援機器がなければ、排除され、孤立のリスクにさらされ、貧困状態になり、飢えに直面し、家族、地域、政府の支援への依存が増す可能性があります。

支援機器がもたらすプラスの影響は、個々の利用者の健康、幸福、参加とインクルージョンを促進することにとどまらず、家族や社会にも利益をもたらします。たとえば、質が高く、安全で、手頃な価格の支援機器が入手しやすくなれば、何度も入院したり、国の給付金に頼ったりすることが少なくなるなど、医療・福祉コストの削減につながり、労働力の生産性が高まり、間接的に経済成長を促します。

障がいのある子どもたちが支援技術を利用できれば、多くの場合、幼少期の発達、教育へのアクセス、スポーツや市民生活への参加、そして同年代の人と同様に就職する準備を整えるための、第一歩となります。加えて、障がいのある子どもには、その成長過程において、支援機器を何度も調整し、交換しなければならないという更なる課題もあります。

同報告書では、機器を利用しやすくするための具体的な行動として、以下のような提言を行っています。

  1.  教育、医療、社会的ケアシステム等の分野における利用を改善する
  2.  支援機器の入手可能性、安全性、有効性を高め、購入しやすい価格になるよう配慮する
  3.  労働力を拡大、多様化、改善する
  4.  支援技術の利用者とその家族を積極的に関与させる
  5.  社会の意識を高め、偏見と闘う
  6.  データと根拠に基づく政策への投資を行う
  7.  研究、技術革新、および生態系への投資を行う
  8.  環境を整備し、投資を行う
  9.  人道支援活動に、支援技術を組み込む
  10.  国際協力を通じて技術・経済支援を行い、各国の取り組みを支援する

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