2022年8月16日ニューヨーク/コペンハーゲン発
ユニセフ(国連児童基金)は、最大で1億7,000万米ドルに上る、史上初のマラリアワクチン供給契約をグラクソ・スミスクライン社(GSK)と結びました。この画期的な契約により、今後3年間で1,800万回分のマラリアワクチンRTS,S/AS01(RTS,S)が供給され、毎年何千人もの命を守ることができるようになります。
健全なワクチン市場実現のため
2020年には、アフリカだけで50万人近くの子どもがマラリアで死亡しています。ユニセフの物資供給センター長のエトレバ・カディリは、「今回のワクチン接種開始は、マラリアワクチン開発者に対し、同ワクチンは必要かつ求められており、開発を継続するよう促す明確なメッセージです」と述べています。「これは、始まりに過ぎません。利用可能な供給量を増やし、より健全なワクチン市場を実現するために、新しいワクチンや次世代ワクチンの開発には、継続的な技術革新が必要です。これは、子どもたちの命を守り、より広範なマラリア予防・管理プログラムの一環としてマラリアの重荷を軽減するための、私たちの共同努力における大きな前進です。」
世界保健機関(WHO)のデータによると、30カ国以上にマラリア感染率が中程度から高程度の地域があり、ワクチンの供給が拡大すれば、毎年2,500万人以上の子どもたちにマラリアに対する新たな予防策を提供できる可能性があります。
初のマラリアワクチン
RTS,Sマラリアワクチンは、35年にわたる研究開発の成果であり、寄生虫性疾患に対する初めてのワクチンです。このワクチンは、世界的に多くの命を奪い、アフリカで最も流行している熱帯熱マラリア原虫に対して作用します。
2019年、WHOが調整するマラリアワクチン実施計画の一環として、ガーナ、ケニア、マラウイの3カ国で同ワクチンの定期接種の試験運用が開始されました。試験運用で得られた経験とエビデンスは、2021年10月にWHOが熱帯熱マラリアの感染が中程度から高程度の国々で最初のマラリアワクチンを広く使用するよう勧告するための材料となりました。その直後の2021年12月、Gaviワクチンアライアンスは、対象国におけるマラリアワクチンプログラムへの資金提供を決定し、ワクチンの広範な展開への道が開かれました。
WHOの予防接種・ワクチン・生物製剤局長であるケイト・オブライエン博士は、「人々の命は毎日危険にさらされています。WHOは、より多くの国々がこのマラリア予防手段をできるだけ早く導入できるよう、ワクチンの供給と適時確保が進んだことを歓迎します」と述べました。「当初の供給量が限られていることを考えると、病気のリスクとニーズが最も高い地域に住む子どもたちをまず優先させることが極めて重要です」
すべての子どもにワクチンを
今回の契約発注は、18カ月にわたる集中的な準備と、産業界やパートナーとの協議の成果です。ユニセフは、世界最大のワクチン購入機関として、弱い立場にある子どもたちを守るためのマラリアワクチンの供給確保に遅れが生じないよう、調達交渉の成立に向けて行動を加速させました。
マラリアワクチンの需要は、感染国の間で高くなると予想されます。他の新しいワクチンと同様、当初は供給量が限られますが、製造能力が必要なレベルまで向上するにつれて、供給量は増加する見込みです。生産量が増えれば、1回分あたりのコストも下がるはずです。いつの日かすべての子どもが、この恐ろしい病気の予防接種を受けることができるよう、技術移転を含めた生産量増加の計画がすでに進行中です。
ユニセフはワクチン生産の地域的分散を支持しており、GSKや他の製薬会社がこの取り組みの一環としてアフリカの企業との提携を検討することを奨励しています。