2023年7月21日東京発
ウクライナで紛争が激化してから500日以上が過ぎました。恐怖や危険と隣り合わせの日々のなか、子どもたちは、今も“子どもらしくいられる日常”を奪われ続けています。
爆発性戦争残存物の影響を受けるウクライナ
手榴弾などの爆発物をおもちゃだと勘違いして触れてしまい、犠牲になる子どもたちも多くいると報告されています。例えばリマン出身で8歳のウラジスラフさんは不発弾を見つけて手に取ったところ、爆発してしまいました。「まだ破片が体の中にある」と語るウラジスラフさんは一命を取り留めましたが、今も不発弾の恐怖に苦しめられています。
ウクライナは世界で最も爆発性戦争残存物の影響を受ける国の一つになりました。国土の約30パーセントに地雷や不発弾が残っている可能性があり、多くの子どもたちの命を奪う原因となっています。治療を受けて生き延びたとしても、傷ついた子どもたちの多くは障がいが残った状態で、その後の人生を暮らさなければならないのです。
* * *
ウクライナ危機500日が経過
危機拡大から500日となった翌日の7月10日、日本ユニセフ協会は、東京都内で報道ブリーフィングを開催しました。ブリーフィングにはユニセフ本部民間支援企画調整局のカーラ・ハダット局長とともに、スペシャルゲストとして歌手のMISIAさんが参加。MISIAさんは昨年2月から自身のコンサートで歌を通して平和への祈りを訴えながら、会場やHPで募金を呼びかけ、集まった金額のうちユニセフのウクライナ危機対応のために1千万円を寄付してくださいました。被爆地長崎出身のMISIAさんは、「私が子どもの頃一番平和の尊さを強く感じたのは、戦争では兵士だけではなく、多くの子どもたちが亡くなると実感した時です」と語り、「ウクライナの子どもたちにこれからも心を寄せて欲しい」と訴えられました。
またウクライナのドニプロより、ユニセフ・ウクライナ事務所のムスタファ・ベン・メサウド緊急支援シニアコーディネーターがオンラインで現地状況の報告を行いました。危機拡大前91人だった職員を、今年6月には264人にまで増員し支援活動にあたっていること、また6月のカホフカダム決壊の際は、備蓄していた5~6リットル入りボトル飲料水11万5,000本と、飲料水用ジェリ缶(ポリタンク)7万3,000個の他、貯水タンクや給水車などを数時間以内に洪水の被害を受けた人々に届けたと報告しました。一方で、「ウクライナ全土で、子どもたちが殺害されたり、負傷したり、避難したり、その他の被害を受けている。このような事態は、最前線の地域だけでなく、人々が移動している途中の避難先でも、農村部でも都市部でも発生している。ウクライナの子どもたちは、16カ月以上前からこのような状況に直面しており現在も終わりが見えない」と、同国内で支援を必要とする410万人の子どもたちが今も置かれる厳しい状況を訴えました。
来賓としてブリーフィングに参加された外務省地球規模課題総括課長
松本好一朗氏は、「この危機で深刻な影響を受けているのは、子どもたち。特に日本の外交、援助政策上の重要なパートナーであるユニセフとは戦争状態が続くウクライナにおいても緊密に協力してきた」と語り、日本政府が、昨年3月以降ウクライナに対してユニセフを通じ合計約4000万ドルの拠出を行い、これまで累計260万人以上の子どもたち、妊産婦を含む女性たちとその家族に新生児用キットなどの緊急支援物資、移動式チームを用いた医療・心理的サポート、日常を取り戻すための教育やレクリエーション活動を提供することができたと報告。「いまこうしてお話をしている間も、彼の地では我々の助けを待っている子どもたちが多くいる。政府としても引き続きユニセフと協力を進め、多くの子どもたちを笑顔にできるよう、頑張っていきたい」と語られました。