2023年3月23日ニューヨーク/東京発
ユニセフ(国連児童基金)は、子どもたちの命を守り健全な成長を支えるための重要な分野として、水と衛生(WASH:Water, Sanitation, Hygiene)に注力しており、世界各地の支援現場、災害の被災地域、難民・避難民キャンプなどで、安全な水の提供(Water)、トイレなど衛生設備の設置(Sanitation)、および手洗いなどの衛生習慣の普及(Hygiene)に取り組んでいます。また、「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標6――2030年までに誰もが安全に管理された「水と衛生」を手に入れる――の達成を推進するよう、国際社会に働きかけています。
20億人が安全な飲料水、飲めず
世界では、20億人が安全な飲料水を飲めず、世界人口のほぼ半分にあたる36億人が、排せつ物の処理を行わないような衛生環境で暮らしています。また、何百万人もの子どもたちや家族が、手を洗うためのせっけんを手に入れることすらできません。その結果、毎年、少なくとも140万人(その多くは子どもたち)が、不衛生な水や劣悪な衛生環境に関連した予防可能な感染症によって命を落としています。例えば、ここ数十年、コレラの集団発生が起きなかった国々で、最近コレラがまん延しつつあります。
2023年3月22日から24日までニューヨークの国連本部で開催された「国連水会議(UN Water Conference)」は、SDGsの水関連目標6の達成に向け、水の管理方法を変革する行動を促すために制定された「水の国際行動の10年(Water Action Decade)2018~2028年」の中間評価の場と位置付けられていました。会議に際しユニセフは、不十分な水・衛生サービスが及ぼす社会的・経済的影響は、疾病や教育機会の損失(特に女の子)、コミュニティ全体の避難など、甚大である、と指摘。SDGsについて、2030年までに、安全に管理された水・衛生サービスへの普遍的なアクセスを達成するためには、世界全体で現在の進捗率を少なくとも4倍にする必要がある、と強調しました。
会議で発言したユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、気候危機が急速に悪化し、ある地域では干ばつによって水が不足し、ある地域では洪水や暴風雨により壊滅的な被害に見舞われていることを背景に、以下の点を指摘しました。
- 世界中で4億5,000万人の子どもが、水の脆弱性が高い、あるいは極めて高い地域に住んでいる
- 異常気象や水のパターンの変化によって災害が発生すると、水や衛生設備が破壊されたり、汚染されたりして、病気の発生リスクが高まる。
- 毎日700人以上の、5歳未満の子どもたちが、適切な水・衛生サービスの欠如により下痢性疾患で亡くなっている。
- 気候変動は、水不足や環境災害と密接な関係にあり、子どもは、気候変動に対する責任が最も小さいにもかかわらず、その影響から最も大きな負担を負っている。世界では、10億人以上の子どもたち――世界の子どものほぼ半数――が、気候変動の影響から「極めて高いリスク」を負っている国に住んでいる。
誰もが「水と衛生」を利用できる世界を
その上でラッセル事務局長は、本年11月末からアラブ首長国連邦で開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、子どもたちを優先するべき弱者として認識し、気候危機の最悪の影響から子どもたちを保護するよう訴えました。同時に、2025年までに適応資金を倍増させるという公約を、COP28で実現することが重要であり、その際、子どもやコミュニティへのサービスに焦点を当てることを求めました。
安全な飲み水と衛生設備の利用に関する権利は、子どもの権利でもあり、この権利が守られることは安全で健やかな子ども時代を過ごすために極めて重要です。ラッセル事務局長は、今後30年間で約42億人の子どもが生まれると予想される中、彼らがどのような世界を受け継ぐかは、国際社会が、今、下す決断と行動にかかっている、と呼びかけ、発言を締めくくりました。
会議の主な成果の一つ「水行動アジェンダ(Water Action Agenda)」は、「水の国際行動の10年」とSDGのそれぞれの期間後半における進展を加速させるためのすべての自発的なコミットメントを集積したもので、資金拠出誓約(官民より提出され、会期中に3,000億米ドルに到達)や協働プロジェクトなど約700件のコミットメントが寄せられました。