2024年1月29日ポルトープランス/ニューヨーク発
ハイチ全土で武装暴力行為が激化し、国内で避難を余儀なくされる子どもが17万人に急増するなど深刻な人道危機が起きていることに対し、ユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。
ハイチ情勢激化、子ども17万人超が避難
この驚くべき数は、国内避難をしている子どもの数が昨年の倍に増えていることを表しており、急速に悪化している状況と、同国で最も脆弱な立場にある子どもや家族への深刻な影響を浮き彫りにしています。
2024年1月現在、ポルトープランスとアルティボニット県を中心に、全国で31万4,000人近くが住処を追われていることが最新の集計で明らかになり、その半数は子どもだと推定されています。首都ポルトープランスのSolino地区とGabelliste地区では、暴動により、2週間足らずの間に2,500人近くが新たに家を追われました。これにより、すでに限られたリソースしかない受け入れコミュニティや既存の社会サービスに多大な負荷がかかる状況が起きています。
ユニセフ・ハイチ事務所代表のブルーノ・マースは次のように述べています。「ハイチでは、子どもや家族が繰り返し押し寄せる残虐な暴力行為に苦しんでいます。日々、新たな恐怖が訪れ、愛する人を失い、家が焼かれ、戦慄が影のように絶え間なくつきまとっているのです。食料、医療、教育といった必要不可欠なものを奪われた子どもたちは、子ども時代の非常に重要な部分をはく奪される危機に直面しています。これは、私たちの目の前で繰り広げられている人道的大惨事です」
巻き込まれ犠牲になる子どもたち
ユニセフが受け取った暫定的な報告書には、現下の危機の痛ましい状況が記されており、子どもたちの権利が著しく侵害されていることを明らかにしています。悲惨なことに、子どもたちが銃撃戦に巻き込まれ、死傷しており、そのいくつかの事例は通学中に起きた、との報告があがっています。さらに、子どもが無理やり兵士にさせられたり、自暴自棄になって武装集団に自ら加わったりする例も増えています。
暴力行為は、国内のあちこちの県で起きているいくつかのデモや抗議活動と相まって、何百もの学校を一時閉鎖に至らせ、子どもたちの教育を受ける権利を奪っています。また、必要不可欠な社会サービスの利用も妨害され、支援を必要としている人々に緊急に対応する上で極めて重要な役割を担っている人道支援従事者の活動も妨げられています。
「ハイチの子どもたちの未来が、終わりのない苦しみによってむしばまれているのを、私たちは手をこまねいて見ているわけにはいきません。無為無策の一瞬があるたびに、彼らの生活を脅かす危機は深まります。国際社会は、こうした子どもたちに希望と変化をもたらし、より明るく安全な未来を担保する義務があります」とマース代表は付け加えました。
高まるニーズに対応するために
ユニセフの推計によると、暴力行為の激化、栄養不良、コレラの再燃、および基礎的サービスが崩壊寸前となっているという理由で、2024年にはハイチ全土で300万人の子どもが人道支援を必要とするようになります。その3分の1以上が緊急の保護を必要としており、状況が悪化すれば、この数はさらに増えると予想されます。すでに西半球で最も貧しい国であるハイチは、この危機の中で、さらに脆弱性が高まる事態に直面しています。
こうした問題に対処するため、ユニセフとパートナーは、家族と離ればなれになった子どもや暴力行為の影響下にある子どもを含め、被害を受けている地域で多方面にわたる支援を行っています。ユニセフはパートナーと共に、医療ケアや心理社会的支援を提供し、子どもたちが癒しと回復に向けた過程を開始できる安全な空間を確保するなど、命を守る支援を行っています。ハイチにおける人道的ニーズに効果的に対応するため、ユニセフは2024年に2億2,170万米ドルの資金を国際社会に要請しています。