© UNICEF/MOZA01725/G.Pirozzi

生後5ヶ月のジュリエッタ
集中治療室でマラリアと闘っている

2007年1月 モザンビーク

生後5ヶ月のジュリエッタは病院の集中治療室でマラリアと闘っています。お母さんのザイーダは娘の頭を優しくなでながら心配そうに見守っています。ザイーダが娘のジュリエッタを病院に連れてきたのは10日前のことです。以来、ザイーダは病院に寝泊りしています。

「医者は娘の状態はとても深刻だと言っています…
集中治療室に移っても、回復の兆しすら見えません。」

マラリアはモザンビークにおける子どもの第一の死亡原因となっています。病院の小児科にかかる子どものうち6割がマラリアで、そのうちおよそ半数が病院で命を落としています。モザンビークがいまだに世界でも最も乳幼児死亡率の高い国のひとつである理由は、マラリアによる子どもの死亡率の高さにあります。
マラリアは妊娠中の女性にとっても脅威です。妊婦がマラリアに感染すると重い貧血症になったり、栄養不良になる可能性が高くなるからです。また、貧血症や栄養不良の母親から生まれる子どもは低体重で生まれ、その後の発育が大きく阻害されてしまいます。

モザンビーク政府はユニセフの支援を受けて、妊娠中の女性と5歳未満の子どもがいる世帯に無料で殺虫処理された蚊帳(insecticide treated nets=ITN)の配布をはじめました。ITNはハマダラ蚊から身を守るだけでなく、蚊帳の網目をくぐろうとする蚊を殺してくれます。

WHO(世界保健機関)は、ITNを適切に使用することで感染を60%削減することができ、子どもの死亡数を5分の1減らすことができるとしています。蚊帳を適切に使っていても、なおマラリアに感染したらどうすればいいのか。マラリアの症状が現れて、すぐに治療を受ければ、ほとんどの命は救われます。
マラリアに感染した5歳以上の子どもが、すぐに治療を受けた場合、命を落とすケースはほとんどありません。生まれてから5歳になるまでに子ども年々少しずつ免疫力をつけていくからです。

ユニセフとWHOなどが舵をとる「マラリア撃退運動」の一環として、モザンビークでは2000年に蚊帳の無料配布がはじまり、これまでに86の地域で170万張の蚊帳が配布されました。地域の保健センターが、出産前検診に訪れた全ての妊婦に蚊帳を無料で提供するというものです。配布された蚊帳の66%がユニセフの支援によるものです。
しかし、出産前に保健センターを訪れない女性もまだ大勢います。ザイーの暮らすサイサイという地区は、特に貧しい地区の一つです。保健センターの数も少なく、住民たちにとってアクセスは容易ではありません。

「この娘を産む前に検診を受けることができず、蚊帳をもらうことができませんでした。私たち家族には蚊帳を買うお金もないから、これまで蚊帳を使ったことがありません。」ジュリエッタの母親は心配そうにいまだに動くことのできない娘に目を落としてこう言います。

ユニセフと、WHO、その協力団体が「マラリア撃退運動」を始めて10年あまり。マラリアはいまだに、アフリカにおいて子どもの死因の中で、最大の単一疾患です。この病気は、毎日、3000人の子どもの命を奪っているのです。 3億5千万人以上が毎年、マラリアに感染していますが、その90パーセントは、サハラ以南のアフリカの人々です。マラリア撃退運動が功を奏して、数100万の子どもと住民がマラリアの治療と予防策を受けられるようになりましたが、いまだに、その脅威は残っています。