コードプロジェクト 子ども買春防止のための旅行・観光業界行動倫理規範

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「子ども買春防止のための旅行・観光業界行動倫理規範」
コードプロジェクト 第1回研修セミナー 報告

2005年3月14日、JATAやOTOAをはじめとする旅行業界、関係省庁等の皆様の御賛同を得て、コードプロジェクトが発足し、現在までに、約80社の企業にご参加いただいております。そこで、参加企業の皆様に、コードプロジェクト発足から今までの動きをご説明し、運用事例を挙げながら、参加各企業に今後具体的にコードプロジェクトを推進していただくため、第1回研修セミナーを開催いたしました。

第1回研修セミナー プログラム

■日時:2005年7月21日(木)
■場所:東京・港区 高輪ユニセフハウス
■主催:コードプロジェクト推進協議会

ご挨拶
(財)日本ユニセフ協会 専務理事 東郷 良尚

第一部
「コードプロジェクト推進協議会 これまでの動きと本セミナーの目的」

コードプロジェクト推進協議会 議長
(株) ジェイティービー 広報室室長 辻野 啓一

第二部
コードプロジェクト 目的と運用事例

1.海外の運用事例と日本語版用例集の紹介 
ECPAT/ストップ子ども買春の会
国内の運用事例 斎藤 恵子
(株) ジェイティービー 広報室マネージャー 三ツ橋 明子
(株) ジャパングレイス 取締役本部長 井筒 陽子

質疑応答

閉会のご挨拶
(社)日本旅行業協会
事務局次長・業務部長 理事 米谷 寛美


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セミナー冒頭、当協会専務理事でありコードプロジェクト国際推進委員会のメンバーでもある東郷良尚よりご挨拶とともに、東南アジアにおける人身売買の深刻な被害状況と、この問題と都市と農村の経済格差の関連について説明がありました。続いて、コードプロジェクト推進協議会議長の辻野啓一(株) ジェイティービー 広報室室長より発足式から現在にいたるまでの推進協議会の具体的な取り組み(日本語版用例集の作成やロゴマークの策定など)が報告されました。

日本語版用例集(PDF:596KB)はこちら

東郷良尚 (財)日本ユニセフ協会専務理事
辻野啓一 (株)ジェイティービー広報室室長

ECPAT/ストップ子ども買春の会の斎藤 恵子様からは、昨年11月19日に開催したシンポジウムで説明されたコードプロジェクトの概要、そしてプロジェクト発足までの流れが改めて発表され、さらに実際にプロジェクトで使われている機内ビデオの映像などを用いて海外の運用事例をご紹介いただきました。


11月19日『みんなで守ろう子どもの権利 STOP!子ども買春
子どもの買春・ポルノ・人身売買問題に関するシンポジウム』の詳細はこちら

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次に、コードプロジェクトを推進するために必要な6項目をどのように実行していくか、三ツ橋 明子(株)ジェイーティービー広報室マネージャー、井筒 陽子(株)ジャパングレイス取締役本部長よりそれぞれ国内での運用事例をご紹介いただきました。

運用事例1:株式会社 ジェイティービー 
『プロジェクト実施のスケジュール化と企業ポリシーへの反映』

株式会社ジェイティービー広報室マネージャー 三ツ橋  明子

ジェイティービーとしては、まずユニセフよりこの話をいただいたときから、どのように会社として取り組んでいこうかということを、本社の担当者で協議会を作りまして検討してまいりました。もともとJTBでは1980年の運輸省の通達ですとか、1999年の児童ポルノ禁止法の施行に伴う通達等に基づいて、社内において法令を遵守しましょうということで、社内規定の中に行動規範という形できっちりと規定をして遵守を進めてまいりました。3月14日(の発足式)で、ジェイティービーグループとして138社をもって、会長の舩山が行動倫理規範(Code of Conduct)に署名させていただきました。署名をさせていただいた後、6項目をどのように具体的に実現していくかということについて協議を進めているところでございます。

1.子どもの商業的性的搾取に反対する企業としての倫理規定や方針を確立する
ジェイティービーは来年の4月から事業持株会社制に移行するということがございまして、ジェイティービーグループ行動規範を策定しなおすというちょうど同じタイミングにあたりましたので、まずジェイティービーグループ行動規範の中に、子どもの人権保護への貢献という項目を設け、明確に記述をいたしました。現在のところ、こちらが私どもが具体的に取り組んだ、目に見えるものになります。これから2番目から6番目までの項目を進めていくわけですが、社内の協議会では以下のようなスケジュールで取り組んでいくことになっております。

2.出発地および目的地の両国内の従業員を教育・訓練する
2番目の項目については、グループ138社ございますので、2005年度内に、教育内容を、先ほどのECPAT様によるビデオの提示や、今まで私達が受けてきたレクチャー等から教育の内容を検討し、2006年の4月からの実施に向けて、順次進めさせていただく予定です。

3.供給業者(旅行目的地の旅行業者等)と結ぶ契約のなかに、契約両者が協力して子どもの性的搾取を拒否することを記した条項を導入する
供給者、私どもにとっての目的地のツアーオペレーターですが、こちらの項目に関しましても、来年の4月に新たな契約書の取り交わしがございますので、その時に合わせて本件に関する条項を盛り込んで、その上で契約をしましょうということになっております。

4.カタログ、パンフレット、航空機内映像、航空券、ホームページなどを通じ、旅行者に関連情報を提供する
カタログやパンフレット、チケット、ホームページ等に旅行者に関連情報を提供する点につきましては、先ほど辻野からもお話しましたように、今、推進協議会でロゴマークなどの選定を進めさせていただいていますので、そちらが済み次第、2006年度のパンフレット、例えば私どもの海外旅行のパンフレット、ルックJTBといったものを中心に、ロゴや業界内の統一の文章をJATA様とも検討して、導入していきたいと思っています。

5.旅行目的地の現地有力者に関連情報を提供する
それから5番目の点では、やはりこれは業界全体として、現地の国とか政府に働きかけたほうがいいのではないかと思いますので、業界全体の取り組みとしてJATA様とも検討しながら、協力してやっていきたいと思っています。

6.年次報告を行う
6番目の「コードプロジェクトの運営事務局の規定する指揮官に対して、文書を持って実行状況に関する年次報告書を提出する」ということは、一応2006年3月に年間活動報告書を英文で作成するという予定で進めております。これは広報が担当させていただくということで社内的に決まっております。

以上が今のところ社内で進めているコードプロジェクトに対する具体的な行動です。当初は6項目を完璧に3月までにやらないといけないと思い、発足式より前から検討したのですが、ユニセフとも打ち合わせをしていく中で、とにかく倫理規定を確立するということが大事であり、その後に、いつどのようなことをやりますという予定を組むというお話もいただきましたので、こういうスケジュールになっております。最後にジェイティービーのグループ行動規範が役員会で承認されましたので、どういう文章が入っているのかということを発表させていただきます。

ジェイティービーグループ行動規範 
第一章 社会とJTB GROUP CODE

1−5.『子どもの人権保護への貢献 
 私達は世界中の子どもたちに対する商業的性的搾取に反対します。』

以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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運用事例2:株式会社 ジャパングレイス
『企業内推進委員会と旅行者への啓蒙・旅行先地オペレーター(現地業者)への通知』

(株)ジャパングレイス 取締役本部長 井筒 陽子

当社は1969年に創業して以来、南太平洋を中心としたパッケージツアーを出しておりましたが、90年代半ば以降ピースボートというNGOとの出会いにより、国際交流をテーマに、大型客船をチャーターして、世界一周の船旅を実施してきております。2001.9 N.Y.での同時多発テロにおいては、多くのお客様が旅行をキャンセルされ、非常に厳しい経営状態を迎えました。社内において平和であることの大切さを改めて実感し「平和が旅を作り、平和が旅を可能にする」を会社方針としました。コードプロジェクトにつきましては、日々仕事に追われているというような状況ではありますが、積極的に取り組むべきだろうということで、まず関心のある人を社内で呼びかけました。12月に委員会を立ち上げ、関心のある社員約22名が集まり、ジャパングレイスとして何ができるかについて案を出し合いました。例えば、子どもの買春の現状に関してはまったく知識がないため勉強会を行うとか、当社独自で客船を使って何かお客様にそういったPRができないかとの案をもとに活動してまいりました。それを今からご説明したいと思います。


大体18名から20名前後の社員が集まり、昼食時間を使って、月二回、定例で勉強会および会議を実施しております。この2月にはECPATの斎藤さんをお招きして、当社の社員やお客様も交え、研修という形で子ども買春の現状に関するプログラムを行いました。なかなかこういった現状が日本国内において知らされていないようで、「え、こんなことがあったの」といった反応が非常に多く、社員の中でもぜひこれについては取り組んでいきたいという声を聞くことができ非常によかったと思います。

さらに、当社がチャーターしている客船では、約900名のお客様に約3カ月間乗船いただく間、朝昼晩の食事を当社が提供しておりますので、何かコードプロジェクトに伴う活動ができないかについて日本人の料理長とも相談しました。そこで、ドライマンゴというフェアトレード商品*を食材に使ったプディングやデザートを3回お客様に召しあがっていただきました。


このマンゴをメニューに出す際、日々船内で発行している新聞にコードプロジェクトに関する記事を載せたり、各寄港地を訪れる前日にその国の説明会などを行いますので、その説明会の折にジャパングレイスのコードプロジェクトの取り組みをお客様にご案内したりと、ご乗船いただいているお客様からは企業がこういう取り組みをしているということで非常に良い評価をいただいております。

そしてお客様に配布するメニューの一部に、「本日のデザートはフェアトレード商品を使っています。」という一文を入れて、お客様にご案内しました。また、実際マンゴプディングの味がどうか、メニューの内容がどうか、こういったことに関心があるかなどアンケートを取るなどし、今後の方針の参考にさせていただいております。実はこの日は船が若干揺れており、シェフも食べに来ていただけるか不安もあったのですが、宣伝効果もあり、多くの方に食事を召し上がっていただくことになりました。

他の取り組みとしては、コードプロジェクト調印の報告を自社のホームページに掲載しました。そして、年に3回当社がチャーターしている客船の船内見学会の折、1000名のお客様がこられるということで、例えばドライマンゴの試食とか、当社の社員による説明会、そして資料を配布するという形でコードプロジェクトの取り組みに関してお客様に説明させていただきました。

今後の取り組みとして、コードプロジェクトに調印しましたということの報告書を英文で作成し、例えば、コードについて知っているかどうかというような簡単なアンケートを入れ、現地旅行会社、現地のシッピングエージェント、代理店にFAXないしメールを送りまして告知していく予定です。それから、ロゴマークが出来上がりましたら、シールにして旅行にいかれるお客様のスーツケースに貼っていただくような運動もしたいと思っております。ホームページもこれからどんどんアップし、お客様にお知らせしたいと思います。社内勉強会では、もっと子ども買春に関する知識を深めていくために、月一回ぐらいの割合で勉強会を、担当を決めてやっていくように今進めているところです。

まだ何も始めていらっしゃらない企業様がありましたら、まず少人数でも結構ですから委員会を立ち上げていただいて、できればその責任者を肩書きのある方にやっていただき、できることから始めていただければ、日本の旅行業界全体としてもコードプロジェクトの活動が推進されていくのではないかと思います。できることからというのは、例えばECPATなどは本を発行されておりますので、そういった本を会社の資料として購入して、回覧をしてみるとか、いろいろ小さいところから始められることというのはたくさんあるかと思いますので、ぜひ取り組みをしていただければと思います。

(*フェアトレード商品:フィリピンのプレダ基金が中心に行っている活動で、彼らの庭で植えているマンゴを正規の金額で買い取ることによって、親が働くことで経営が成り立つようにし、本来学校に行くべき子どもたちが、外に働きに行かずに済むようにすることを目的としています。ドライマンゴは日本国内ですでに商品化されています。)

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閉会の挨拶

米谷寛美 社団法人日本旅行業協会理事

「この研修セミナーは『できること』の第一歩であり、皆様にもまず『できること』を1つずつやっていただきたい。1人でも多くの子どもを救うため、旅行会社として1人でも多くのお客様に関心を持っていただき、また1つでも多くの企業に参加していただくことで、世界のため、そして旅行業界、観光産業のさらなる発展のために貢献していきたい」

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