EYE SEE TOHOKU in 宮城県石巻市
1日目 11月19日(土)
9:00
ワークショップ・スタート:
講師であるイタリア人写真家ジャコモ・ピロッツィさんがまず自己紹介します。
「ユニセフは、世界のいろいろなところで子どもたちを助ける仕事をしています。すごく貧しかったり、衛生状況の悪い国の子どもたちを助けたりしています。わたしは、戦争や自然災害などの緊急事態の起こった国を訪れて、そこの子どもたちのようすを写真に撮って伝える仕事をしています。それから、これからみなさんとやるワークショップのように、子どもたちに写真の撮り方を教えて、子どもたちがどんな風に世界を見ているのか世界中の人に伝える活動もしています」
続いて参加する子どもたちが順番に自己紹介。
いよいよワークショップのスタートです。
世界の子どもたちのこと・写真の技術
「みんなにとって、いい写真ってどういう写真かな?」
「ぶれてないの」「目をつぶってない写真!」
小学生を対象とした今回のワークショップ。ジャコモさんは子どもたちが退屈しないように、子どもたちへたくさん質問をします。
岩手の中学生と同じプレゼンテーションを、言葉をやさしくして説明してゆくジャコモさん。
紹介されるジャコモさんの写真の多くは開発途上国や被災地域など、日本の子どもたちにはあまり馴染みのない国々で撮影されたものです。
子どもたちに「これはどこで写した写真だと思いますか?」とたずねると、最初に返ってくる答えは「ドイツ!」「ロンドン」「カナダ」。
ジャコモのワークショップは、子どもたちが知らない国々と出会う場になりました。
「みんなはタジキスタンという国の名前は初めて聞いたのかな?この写真を見て。日本と違うなと思う所はどんなところ?」
「服が違う」
「こういうゆりかごは日本にはある?」
「ない!」
「この写真にはお父さんが写っていないけれど、それはよその国に出稼ぎに行っているからなんだ・・・」
・・・
「この国は水がなくて困っていて、子どもたちが遠くにまででかけて井戸の底にある水をくみに行くんだよ。勉強する時間も、遊ぶ時間もない。そういう子たちがいるって聞いたことありますか?」
「アフリカにあるレソトという国では、王様が毎年、国中から若い娘を集めて新しい奥さんを選んでいます。この国ではHIVに感染する人が多くてとても問題になっています」
「パキスタンの子どもが街で靴磨きをして働いている写真だよ。パキスタンってどこにあるかわかりますか?」
子どもたちは同時に、写真の技術についても学んでいきます。
・・・
「写真を撮る時に被写体を真ん中からずらすのはどうしてか分かる?心のバランスを利用して、写す人にみんなが注意をひかれるように考えたからなんだ」
「見ている風景のなかにライン(線)を見つけてごらん。線を使うと、写真に奥行きがあることを見せることができます」
「昼間の陽射しの強い時間に撮ると、顔が影で暗くなってしまうよね。そういう時は、反射板を使ってうまく光を反射させるときれいに写せます。」
子どもたちが飽きることなく楽しめるよう、身体を動かして参加してもらいます。
「カメラのレンズを交換するのはどうしてだと思う?」
「かっこ良く見えるから」
「上手にとれるから」
「子どもを写す時には、被写体と同じ目線になって撮るんだよ」。ジャコモのアドバイスに従って、寝転んだ被写体の撮影に挑戦してみる子どもたち
・・・
難民キャンプに暮らす子どもたちの写真。家を失い難民となった子どもたちのことを説明した後、ジャコモさんが「子どもたちが家をはなれなきゃならならないのは、どうしてだと思いますか?」とたずねると、子どもたちは「放射能があるから」と答えるひとこまもありました。
「日本では自然災害がありました。この写真は戦争で家を失った子どもたちの写真です。アフリカのルワンダという国では、民族同士の闘いで100万人以上の人がなくなりました。世界には戦争や自然災害が原因で家を離れなくてはならない子どもたちがたくさんいるのです・・・」と、ジャコモさん。
世界のことと日本で起きていること。子どもたちはどこかに接点を感じとったでしょうか。
「何を写したい?」 子どもたちの期待:
休憩時間に、子どもたちにワークショップへの期待をたずねてみたところ、こんな答えが帰ってきました。
優菜さん「いつもは妹の変顔を携帯で撮ってる。変な顔してーって言って撮るの。 人が笑ってる写真を撮るのが好き」
朝陽君「カメラは面白い。望遠(レンズで写真を撮ること)が楽しかった!」
海利君「将来、まちが元に戻ったら、子どもたちに昔はこうだったんだよって伝えたいです」
朱里さん「(撮りたいのは)エイとか、魚とかかな〜」
NHKの方も子どもたちに取材をしていました。
右近さん「津波の時は、どんなだった?」
海利君「この世が終わったかと思った」
遥樹君「ゲームが大丈夫かなって思った。ゲームは流されちゃった。津波のあと、太陽が真っ赤になって、怖かった」
休み時間や昼食の時間になると、子どもたちはジャコモさんや大学生のボランティアの涼太君たちに、「ねえねえ、イタリアには何があるの?」「私、家でピザを作ったことあるよ」と、口々に楽しそうに話しかけていました。
13:00
チームに別れて、作戦会議!
午後からはグループに別れて、翌日に撮影に出かける場所と何を撮影したいか、テーマを話し合いました。
【チームA】リーダー 高橋(大学生ボランティア)
麿香さん
朝陽君
優菜さん
花音さん
真菜さん
【チームB】リーダー 武居(日本ユニセフ協会)
海利君
未来さん
千尋さん
遥樹君
【チームC】リーダー 谷口(日本ユニセフ協会)
連君
亜美さん
海希さん
朱里さん
涼太君
人気は鮎川のまちを象徴するホエールランドや、つい1日前にオープンしたばかりという「のれん街」(仮設商店街)、そして十八成(ぐぐなり)浜などの海岸でした。
撮影プランの発表:
【チームB】
テーマ:復興に向けてのがんばり
撮影場所
午前:ココストア、十八成浜海水浴場、清優館
午後:鮎川のまち、公民館、のれん街、ホエールランド、がれき置き場、鮎川小学校の仮設住宅
のれん街では人々が喜ぶ顔を写したいという海利君の言葉に、ジャコモさんからは「写真家は何を撮るのか選ぶことができます。悲しい姿もありますが、地域の人たちががんばって助け合う姿を写すのもよいですね」とコメントがありました。
【チームA】
テーマ:牡鹿の暮らし
撮影場所
午前:ホエールランド、のれん街、十八成浜
午後:給分浜、小渕浜、大原浜
海を撮りたいという声が多かったことから、ジャコモさんがその理由を質問すると、朝陽君から「おい(自分)の家が津波で流されたから海がきらいになった」という言葉が出てきました。朝陽君はいま裏山にあるおじいちゃんの家に住んでいるそうです。津波がおこってから、自分の家のあったところには帰ったことがないという朝陽君。そんな朝陽君にジャコモさんは「海への想いをキャプションに添えることで、写真には強いメッセージが込められることでしょう」と伝えました。
【チームC】
テーマ:復興に向けてがんばっている姿
撮影場所:ホエールランド、のれん街、笹ヶ平、十八成浜
撮影に向けて:
「過去、現在、未来。その三つの要素を盛り込むことで写真がメッセージを持つことになります。昔はどうだったか。今はどうか。未来はどうなっているだろうか。そんなことを考えながら写真を撮ってみてください。そしてキャプションのためにもメモをとることを忘れないようにね」 ジャコモさんからのアドバイスの後、子どもたちにいよいよカメラが手渡されました。
鮎川の子どもたちの目は、どんな世界を写しとってゆくのでしょうか。