EYE SEE TOHOKU in 宮城県石巻市
2日目 11月20日(日)
9:00
いよいよ、撮影スタート:
昨日受け取ったカメラを手に、朝から元気に集まってきた子どもたち。賑やかな一日のスタートです。この日の天気予報は晴れでしたが、教室でジャコモさんが子どもたちに一日の予定を説明している時に、通り雨が降りました。ワークショップの始まる前には小さな余震があり、震災はまだ完全におさまっていないことを実感します。
おしかホエールランド:
午前中、チームAとCはおしかホエールランドに向かいました。おしかホエールランドは沿岸捕鯨基地として栄えた鮎川港の捕鯨産業の歴史文化を伝えるために作られた観光施設です。津波被害のため現在は閉館されていますが、ホエールランドを象徴する展示物である大型船やクジラのオブジェは残っていることから、ここは子どもたちに「津波を生き残った町のシンボル」と考えられているようです。
「あそこに見えるのは金華山まで向かう船です。一、二年生が行く予定だったんだけど(今年は)地震で駄目だったんだって。前は桟橋だったところも今は沈んでしまって、船の数も少なくなりました。おじいちゃんがミンククジラを捕っていて、小さな船に乗せてもらって遊んだりしていました」
亜美さんはこの土地の思い出を、そう語ってくれました。
のれん街:
チームAとCが次に訪れたのは牡鹿公民館の隣に新設された仮設の商店街「のれん街」。この建物はドイツのNPOの支援によって作られたそうです。中にはお寿司屋さんや雑貨屋さん、電気屋さんなど十数のお店が営業しています。
魚屋さんの店先で、子どもたちはこのお店で働く朱里さんのおじいちゃんを撮影しました。「この魚はマグロ?サバ?」「カツオだよ」。知っているようで案外知らない魚の名前を質問し、写真を撮り、メモを取ります。
「黄金寿司」は海希さんのおじいちゃんの経営するお店です。昼時前でお店にはお客さんもたくさんいましたが、海希さんはおじいちゃんに事情を説明して写真を撮影させてもらいました。
のれん街には捕鯨の町・鮎川の名産品である鯨の骨で作られた装飾品を売るお店もありました。店主のおじさんをインタビューしたのは朱里さん。おじさんは鮎川が全国一の捕鯨のまちであること、商品のほとんどが津波で流されてしまったため、今は津波の後に新しく作られた商品を売っていることなどを話してくれました。
牡鹿公民館:
のれん街のすぐ隣にある牡鹿公民館ではこの日、新潟のボランティア団体「越後愛届け隊」によるイベントが開催されていました。食事を提供する人、子どもたちが楽しめるゲームを運営する人、チンドン屋の格好で音楽を奏でる人、楽しむ地元の人びと。お年寄りから子どもたちまで、大勢の人が公民館に集まっています。撮影よりもお菓子や楽しい催しものに夢中になってしまった子どもたち。
「きっと、自分たちだって楽しみたいんだよね。でも、写真のことも忘れないでね」ジャコモさんもスタッフも、子どもたちのようすを見守ります。
津波の被災地にて:
自然が豊かな鮎川のまち。津波の被害跡地を歩くと、鹿のふんや水辺に卵を産む赤トンボの姿が目にとまります。子どもたちによると、鮎川にはタヌキやリス、サルなども生息しているそうです。
お母さんが勤めていた老人ホームはすっかり流されてしまったと話してくれた亜美さん(お母さんは今、別の老人ホームで働いている)。
ファインダーをのぞき込むと見える緑のフレームを見て「地面の中に埋まっている人を感知したのかと思った」と話す涼太君。
撮影の合間に、子どもたちはふと、はっとするような言葉を発します。
13:00
小渕浜:
学校に戻って昼食を取った後、チームAのメンバーは、現在は瓦礫置き場となっている小渕浜の海岸を訪れました。ここにはカキの養殖に使うホタテの貝殻や浮子がたくさん置かれています。冷たい風の吹きつけるこの海岸で、子どもたちは寒さを忘れたようにはしゃぎながら思い思いの対象を撮影しました。
子どもたちが夢中になったのは、瓦礫の中に暮らす子猫です。
「食べるものがなくてお腹がすいているのかな?」。心配もあるのか、女の子たちはいつまでも子猫のもとを離れようとしませんでした。
「近くにおっとうの納屋があるからよく来る。納屋にはワカメを混ぜる機械がおいてある」と話してくれたのは朝陽君。通りがかったおじいちゃんはこの近くに暮らしていて、いつも朝陽君をかわいがってくれるのだそうです。
小渕仮設住宅:
チームBのメンバーは、小渕浜の近くの仮設住宅を訪れました。夕方で寒いこともあり、外を歩いている人はほとんどいませんでしたが、仮設住宅のすぐ隣に崖があるのを見つけると、子どもたちは元気に登って遊びはじめました。
仮設住宅の集会室では、ボランティアによる足湯が開催されていました。運営しているのは、宮城県出身の大学生・大友将矢さんが代表を務めるボランティアチームのメンバーです。大友さんは法政大学の学生ですが、現在は休学し復興支援活動に専念しているそうです。子どものひとりを津波で亡くしたという仮設暮らしの男性は、「こうしてボランティアの人が支援に訪れてくれることに元気をもらっている」と話してくださいました。
撮影を終えて教室に戻り、次回のワークショップの内容とそれまでに行なうことの確認をしてこの日のワークショップは終了です。
子どもたちに感想を尋ねると皆一様に「楽しかったー!」と笑顔。
校長先生も「子どもたちに感想を聞いたら、全員が楽しかったと即答してくれました」と、とても喜んでいらっしゃいました。
最終日となる3日目は撮影した写真にキャプションをつける作業が待っています。子どもたちの写真から、どんな物語が浮かび上がってくるでしょうか。