【2017年8月29日 サンサルバドル(エルサルバドル)発】
中米エルサルバドルでは、子どもの貧困、子どもたちに対する暴力が蔓延するなか、ユニセフはエルサルバドル政府に対し、貧困や暴力に対処するための政策の立案を支援しています。その一環として、最も厳しい状況に置かれた子どもたちや家族の生の声を聴き、施策のデザインに活用するというイニシアティブを進めています。ユニセフ・エルサルバドル事務所の廣田怜央・社会政策担当官からの報告です。
© UNICEF El Salvador/2017 |
「親が暴力を振るうのは、私たちを愛しているからです。もし愛していなければ放っておかれると思います。私たちがちゃんということを聞くように、叩いたり殴ったりするのです」(9歳の女の子、ラ・パス県)
「襲われるかもしれないので、通りに出て遊ぶことはできません。映画を見るために、テレビのある友達の家に行きたくても、行かせてもらえません」(13歳の男の子、ラ・パス県)
脆弱なコミュニティに暮らす子どもたちは、暴力についてこのように語ります。家庭内で親から受ける暴力は、しつけや愛情表現として正当化されています。また、青少年の犯罪組織「マラス」などの影響により、治安の悪化が著しい地域では、自由に外に出て遊ぶこともままなりません。
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一方、子どもたちは、さまざまな側面で貧困や不平等が広まっていることも認識しています。
「エルサルバドルではお金が社会的地位を表します。私はそうではなく、貧しい人たちがより多くの富を得て活躍するべきだと思っています」(12歳の女の子、ラ・リベルタ県)
「教育を受けられない子どももたくさんいます。水や食料を買うために、親と一緒に働いてお金を稼がなくてはなりませんから」(11歳の男の子、ラ・リベルタ県)
エルサルバドル事務所は、2016年8月に本イニシアティブを開始し、子どもたちや保護者へのグループインタビューを通して、現状認識やニーズの把握に取り組んできました。調査の設計にあたっては、心理学の専門家の支援を受け、インタビューにゲームやお絵かきを取り入れるなど、子どもたちが楽しんで参加できるよう工夫しました。
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また、不安定なコミュニティで安全かつ効率的に調査を行うため、これらのコミュニティで長年にわたり活動する国際NGOのTECHO(スペイン語で天井、住み家の意味)とパートナーシップを結び、共同でプロジェクトを進めてきました。ユニセフのリードのもと、30名以上の大学生ボランティアがインタビューの実施や分析などの場面で活躍しています。
このような外部のパートナーとの効果的な連携により、2017年8月までの1年間で、全国20以上のコミュニティ・学校で100件近くのグループインタビューを実施し、約300人の子どもたちと約100人の保護者の声を収集することができました。
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「この村ではめったに肉を食べません。毎日肉とトルティージャ(とうもろこしの粉で作るパン)が食べられたら幸せですが、鶏肉を食べられるのは日曜日だけです。」(9歳の男の子、ラ・リベルタ県)
「学校が遠く、歩いていかなければならなかったので、辞めてしまいました。いまは家の仕事を手伝っています」(14歳の女の子、ラ・パス県)
このように、子どもたちへのインタビューを通して、栄養や教育などの基本的なニーズが十分に満たされていないことがわかりました。
一方、保護者を対象としたインタビューでは、子育てに取り組むなかで必要とされる支援について、さまざまな要望が寄せられました。
「就学前の小さな子どもへの支援が足りません。訓練を受けた先生がいて、安全な場所にある保育所があれば助かりますが、そのために払えるお金はありません」(母親、サンミゲル県)
「若者が犯罪組織に入ってしまうことが最も心配です。学校が中心となり、さまざまなトレーニングやスポーツなどの機会を通して心身を鍛えるべきだと思います」(父親、ラ・ウニオン県)
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コミュニティの訪問と並行し、エルサルバドル事務所は、U-Report(ユー・レポート)というオンラインツールを導入し、青少年の社会参加を促しています。U-Reportとは、Twitter、Facebook、専用アプリを通して、14歳以上なら誰でも無料で参加できるプラットフォームで、定期的に配信されるアンケートに答えることで各自の置かれた状況や社会問題に関する意見などを伝えることができます。
U-Reportを通して集められた情報は、匿名でウェブに公開されるほか、有識者やNGOの代表などで構成される運営委員会が検討し、国やNGOによる子どもたちへの支援プログラムの立案に役立てられます。
2017年4月の立ち上げ以降、U-Reportの登録者数は4カ月で1,000人を超え、これまで、教育、保健、社会的保護、ジカ熱、インターネットの利用などさまざまなテーマに関して、青少年の参加者が意見を表明してきました。
エルサルバドル事務所では、このようなイニシアティブを通して集めた子どもたちと家族の声をもとに、今後は政府機関や他のパートナー団体とともに政策形成に向けたアドボカシーを強化していきます。
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廣田さんは、外務省JPO派遣制度により2016年4月からユニセフ・エルサルバドル事務所に赴任しています。
着任に先立ち、2016年1月から約4カ月間、日本ユニセフ協会広報室でインターンとして勤務し、子どもの貧困に関する報告書の翻訳・制作や、ジカ熱関連の情報発信など、様々な広報・アドボカシー業務に携わりました。
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