子どもに対する暴力
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暴力は、学校、児童養護施設などの施設、路上、労働現場、刑務所などいたるところで確認されています。子どもたちは、家庭内で家族やきょうだいから暴力を受けています。子どもに対する暴力によって死に至るのはごく一部で、ほとんどの場合、暴力は目に見える形の痕跡を残しません。しかし暴力は今日、子どもたちに最も深刻な影響を与えている問題のひとつです。
暴力の実態はほとんど表に出てきません。子どもたちは、虐待する側からの仕返しを恐れて、暴力の事実を訴えることができないと考えられています。さらに、虐待者だけでなく子ども自身も、子どもが暴力を受けることは珍しいことや悪いことではないと考えている場合があります。
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また、行為そのものを暴力ではなく、おそらく正当な行為であり、必要な罰として考えています。暴力の犠牲になった子どもは、自分自身を恥じたり、罪の意識を持ったり、暴力を受けて当然だとも思ってしまいます。こうしたことが、子どもたちが暴力について声をあげることから遠ざけているのです。
暴力は、子どもたちが成長する社会の中ですでに広まっています。彼らはメディアを通じて暴力を目にすることもあります。子どもたちの環境を形づくる経済、文化、社会規範の一部であることもあります。ジェンダーや差別、保護者の不在、子どもを保護し尊重する社会規範の欠如に付随する力関係のような様々な問題の根底に暴力の原因があります。その他、薬物、銃の供給、アルコール依存症、失業、犯罪、刑事免責、沈黙の文化なども要因としてあげられます。
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暴力は、子どもの発達過程において深刻な影響を与えます。最もひどい場合には、死を招いたり、重傷を負わせます。しかし、暴力はまた、子どもの健康や学習能力だけでなく学校へ行く意欲にさえも影響します。また、暴力によって家を出た子どもたちをさらなる危険にさらします。暴力は子どもたちの自信を奪い、将来良い親となるための能力を損ないかねません。
主要データ
- 世界中の子どもたちに対する暴力の実態を明らかにすることは不可能である。秘密裡に行われ、また報告されない場合があまりにも多いため、暴力を受けている子どもたちの正確な数を知るデータを十分に得ることができない。しかしながら、毎年5億人から15億人の子どもたちが、暴力を受けていると推定されている。また、毎年世界中の2億7500万人近くの子どもたちが家庭内暴力を目にしていると推定されている。
- GSHS(Global School Based Student Health Survey)の調べでは、学年齢期の子どもたちの20〜65パーセントが、過去30日間の間に、学校で言葉によって、あるいは肉体的ないじめを受けたと報告している。
- 暴力は、予期せず子ども自身とは無関係に起こる場合もあるが、ほとんどの子どもに対する暴力は、両親、継父母、親のパートナー、近親者、保護者、恋人、学校の友達、教師、宗教的なリーダー、雇用主といった、子どもたちと顔見知りで子どもたちが信頼すべき人物、また子どもたちを保護し、手助けすべき人物によって行われている。
- 家庭は子どもたちを守る環境が整っている場所であるはずだが、その一方で、しつけと言う形で子どもたちが暴力を経験する場ともなり得る。37カ国からのデータによると、2歳から14歳までの子どもたちの86パーセントが、体罰と心理的な攻撃の両方、あるいは一方を経験していることが明らかになった。また、3人に2人の子どもたちが体罰を受けている。
- 障害のある子どもたち、少数民族の子どもたち、路上で生活している子どもたち、罪を犯したとされる子どもたち、避難民、あるいは避難を余儀なくされている子どもたちを含む、ある種の子どもたちのグループや特定の環境にいる子どもたちは、特に暴力による被害を受けやすい立場にある。
カンボジア
子どもたちを暴力から守るソーシャルワーカーのストーリー
「パンデミックにより、家庭内暴力の件数が急速に増加しています。私自身も、家庭内暴力に苦しんだ経験があります。今は、私が子どもたちを助ける立場にあり、取り残される子どもがいてはいけないと思っています」。
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国際ガールズデー
(2009年12月現在)