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日本ユニセフ協会
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サイクロン「イダイ」による洪水
お兄ちゃんが助けてくれた命 被災した子どもたちへのユニセフ支援

【2019年4月26日  チマニマニ(ジンバブエ)発】

プルーデンスちゃん(5歳)は、兄のプラウドくんを最後に見た光景を忘れることができません。もし兄がいなければ、プルーデンスちゃんが今こうして生きていることはなかったでしょう。

サイクロン「イダイ」によって破壊された自宅に前に立つ、プルーデンスちゃんと母親。

©UNICEF/UN0303163/Mukwazhi/UNICEF

サイクロン「イダイ」によって破壊された自宅の前に立つ、プルーデンスちゃんと母親。

お兄ちゃんが助けてくれた命

今年3月、ジンバブエの東部、モザンビークとの国境近くの地域を、サイクロンによる洪水が襲いました。

「お兄ちゃんが私を抱き上げてくれて、私は必死でつかまるものを探したの」と幼いプルーデンスちゃんが振り返ります。「そして、お兄ちゃんは流されてしまいました」。

兄のプラウドくんは、自らの命を犠牲にしても、妹たちの命を救ってくれたのです。プルーデンスちゃんは、お兄ちゃんを含む、きょうだい3人といとこ1人を洪水で亡くしました。

プルーデンスちゃんが、ユニセフが被災地に設置した「子どもにやさしい空間」を訪れるようになったのは、洪水被害の1か月後のことでした。最初の頃は、隅っこにいて、悲しげな表情で、ひとりきりで座っていました。けれども、時がたつにつれて、ソーシャルワーカーの後をついて回るようになりました。

サイクロン「イダイ」が、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエの3カ国にわたって甚大な被害をもたらした結果、約160万人の子どもたちが被災し、支援を切実に必要としています。プルーデンスちゃんは、そのうちの一人です。 

突然流された日常

サイクロン「イダイ」によって家々が流されたルシツ渓谷の地域で、水面が迫った橋をわたる男の子。

©UNICEF/UN0303168/Mukwazhi

サイクロン「イダイ」によって家々が流されたルシツ渓谷の地域で、水面が迫った橋をわたる男の子。

同じくジンバブエ東部、ルシツ渓谷のコパ地域でも、ある子どもの人生が洪水によって一転しました。

「妹とおばあちゃんの家に行っていたの。そうしたら、洪水が起きて、一週間くらい自分のおうちに帰れなかったの」。ようやく自宅に戻れたエバニスちゃん(9歳)が直面したのは、家も、そして両親も、洪水で流されたという現実でした。

エバニスちゃんと妹のように、サイクロン「イダイ」が引き起こした洪水によって、親を亡くした子どもたちはたくさんいます。コパ地域だけでも、母親または父親を亡くした子どもは約240人、両親ともに亡くした子どもは70人以上にのぼることが分かっています。ユニセフは、被災地域で「子どもにやさしい空間」を設置し、こうした子どもたちへの支援を行っています。

けれども、孤児になった子どもや、困難な状況に置かれた子どもの数が明らかになるにつれ、新たな危機も表面化しています。

「サイクロンの影響で、プルーデンスのように、家を失くしてホームレスになり、人が密集した空間での生活を強いられている子どもたちがいます」と、ユニセフのタベドザ・子どもの保護専門官は指摘します。多くの場合、こうした子どもたちの面倒をみることになるのは年老いた人々であることから、子どもたちが必要とする適切なケアを与える手段や余裕がないことが、さらに問題を困難にしていると言います。

子どもたちに心のケアを

ジンバブエ東部のチマニマニに設置された、ユニセフ「子どもにやさしい空間」。子どもたちが遊んだり、学んだり、安心して過ごせる空間を提供している。

©UNICEF/UN0299253/Mukwazhi

ジンバブエ東部のチマニマニに設置された、ユニセフ「子どもにやさしい空間」。子どもたちが遊んだり、学んだり、安心して過ごせる空間を提供している。

ユニセフは被災地における「子どもにやさしい空間」の設置を通じて、何千人もの子どもたちに支援を届けているほか、パートナーとともに、ジンバブエのサイクロンの影響を受けた地域において社会サービスを強化するため、数十人のソーシャルワーカーの配置を支援しています。これまでに3,000人近くの子どもたちが、保護分野での支援を受けています。ソーシャルワーカーは今後、親と離ればなれになっている子どもたちに心のケア支援を提供することに焦点をおいています。

チマニマニの住民たちを襲ったのは、強風と洪水だけではありません。サイクロン「イダイ」によって、土砂崩れや落石の被害も生じ、橋や家、生活の糧となるものすべてが、流されてしまったのです。そのような状況下において、洪水は収まったとはいえ、人道ニーズは決して減ることはなく増加しています。

チマニマニなど被災地を訪れた、ユニセフ・ジンバブエ事務所のレイリー・モシリ代表は、「この危機の深刻さは明らかになりつつあります。子どもと女性への影響が非常に大きいことは確かです」

一刻を争う支援

インフラが破壊されたコミュニティにおいて、感染症の蔓延を防ぐ取り組みは一刻を争います。ユニセフは、水を媒介する感染症予防のための正しい情報とともに、石けん、浄水タブレット、衛生キットを6万人以上に提供しているほか、水システムの復旧にも全力を挙げています。

さらに、ユニセフは、政府の保健・保育省やWHOとのパートナーシップのもと、48万人以上を対象にしたコレラの予防接種キャンペーンを開始しました。

「この予防接種キャンペーンは、コレラ蔓延のリスクを減らすための予防策です。ユニセフはパートナー団体やコミュニティと共に、その啓発キャンペーンにも取り組んでいます。」(モシリ代表)

復興の道はまだ遠く

しかし、サイクロン「イダイ」によって避難をしている17万5,000人のほか、支援を必要としている人の数が約300万人にのぼる中で、困難な状況は今なお続いています。

「私たちの生活は、粉々に壊れてしまいました」と語るのは、3人の孤児を迎え入れ、親となったグラニィ・マゾコットさんです。「私たちは大切な人々を亡くしました。作物も、そして生活の糧も」。

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