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東日本大震災緊急募金 第161報
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設計をされた手塚貴晴氏、由比氏 |
清水寺のように高台に完成した新しい園舎には、南三陸町の大雄寺の参道に植えられていた杉の木が使われています。樹齢300年にもなるこの杉の大木も津波の被害を受け、塩害で立ち枯れてしまう運命にありました。この杉の木を新しい園舎に使って欲しいという園長先生の思いを聞き、建築家 手塚貴晴氏、由比氏は、木のぬくもりのある園舎の設計を、先生たちと相談を重ねながら行いました。「園舎に使われた木は材料ではなく、南三陸の動物たちが住んでいた木、そしてここに住んでいた人たちが毎日さわっていた南三陸の魂だと思って欲しい」と手塚貴晴氏は落成式で思いを伝えました。ともに設計をされた手塚由比氏は「時間はかかりましたが、今日この日を迎えられて本当によかったと思っています。この建物を造るのにたくさんの人が力を貸してくれました。みんなにこの建物をすごく楽しんで欲しいと思っています」と子どもたちに語りかけました。
園舎の再建を支援してくださっている長谷部 誠選手からも完成をお祝いするメッセージが届きました。「また子どもたちが楽しく過ごせる場所が完成したことを心よりうれしく思います。今回は、私が代表してこのようなメッセージを寄せさせていただきましたが、この幼稚園の建設には、一日も早い復興を願う日本中のみなさんの思いが込められています。そして、またの機会に、再び元気の良い子どもたちと再会できる日を心から楽しみにしています」
あさひ幼稚園 遠藤ゆみ子先生 |
あさひ幼稚園は、3月11日の東日本大震災の際、津波により園舎が流失しました。震災から3ヵ月後の2011年6月から志津川小学校、10月からは大船地区公民館で臨時保育を行っていました。遠藤ゆみ子先生は当時のことを思い起こしながら、あいさつをされました。
「何もない小学校の空き教室で始まったころ、ダンボールの滑り台をいただきました。子どもたちは誰に言われるともなく譲り合って使っていました。友達と一緒にいられることそのことが、なによりうれしかったのです。友達をいたわりながら遊ぶ姿に涙が溢れました。机を支援していただいた時、子どもたちは机に抱きついて歓声をあげました。幼稚園の机をこんなにもいとおしいと感じるくらい想像もつかない環境をあの震災はこの子どもたちに与えてしまったのだとあらためて感じました。ですが、子どもたちは元気いっぱいです。全国の皆さんからいただいた真心が元気の源になりました。本当にありがとうございました」
落成式の後、子どもたち全員に新しい園舎がお披露目されました。「ねね、こっち座って。私はこっちに座る!」と新しい椅子に座る女の子たち、「すごくおもしろい!」と部屋のあちこちを探検する男の子たち、たくさんの子どもたちの明るい声が響きました。キツツキの巣の跡がのこされた杉の木、元気に走り回れる回廊、仲間はずれを作らないという思いのこめられた仕切りのない園舎には、ぬくもりのある杉の香りが広がっていました。
園舎を囲むように造られた回廊 |
写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会