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ユニセフ協会からのお知らせ

官民による「児童ポルノ排除対策推進協議会」発足

【2010年11月25日 東京発】

日本政府(内閣府)は、今年7月、犯罪対策閣僚会議がまとめた「児童ポルノ排除総合対策」を具体的に推進する母体として、11月22日(月)、日本ユニセフ協会や全国知事会、全国連合小学校長会、全国社会福祉協議会、日本インターネットプロバイダー協会など、教育、福祉、行政、インターネット関連事業はじめ幅広い領域で活動する官民35団体・組織が参加する※「児童ポルノ排除対策推進協議会」を発足。「児童ポルノは絶対に許されない!」をスローガンに、国民への啓発や被害防止、インターネット上の流通・閲覧の防止、被害児童の早期発見と保護・支援を柱にした官民連携での活動をスタートさせました。
※参加予定・検討中等の団体・組織は除く。

「絶対に許さないもの」

この日開催された第一回児童ポルノ排除対策推進協議会では、会長に内閣府の末松義規副大臣を、副会長として、日本ユニセフ協会の赤松良子会長や内閣府の村木厚子政策統括官、また、事業者や教育界を代表する立場から、日本PTA全国協議会とテレコムサービス協会の代表者が選出されました。

「児童ポルノを絶対に許さない!」という立場でこの問題に取り組んでいきたいとの抱負を述べられた末松会長。児童に対する性的搾取や性的虐待の記録である児童ポルノの排除には、警察による取締りとともに、児童を性の対象とする社会的風潮を是正することが必要で、国民の理解や参加が不可欠であるとも訴えています。

グローバル社会の一員としての視点

© 日本ユニセフ協会
「グローバル社会の一員として児童ポルノ包囲網の抜け穴にならないように、そして他国に迷惑をかけることを一日も早く改善するためにも、あえて『単純所持』禁止の必要性をここに訴える次第です。」基調講演の中で、行政や民間で進められる児童ポルノ対策を歓迎しつつ、立法府での早急な取り組みの必要性も訴えた日本ユニセフ協会の東郷良尚副会長。

第一回推進協議会に続き、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された公開シンポジウムでは、日本ユニセフ協会の東郷良尚副会長が「児童ポルノ排除の必要性とグローバル社会」と題した基調講演を行い、本問題への取り組みにおいて、グローバル社会の一員としての視点を持つことの重要性を強調しました。

「ネット社会に入ったここ数年の間に児童ポルノ問題は単に国内問題として取り扱うことは不可能となっていることに着目する必要があります。」「日本は児童ポルノの生産大国であるとともに消費大国であると最近もさるアメリカの高官が指摘しています。G8司法・内務大臣会議は数次にわたり総括宣言の中で、児童ポルノ根絶のための国際協力を呼び掛けていますが昨年5月末の同会議では、総括宣言とは別に児童ポルノに関する独立した宣言が採択され、『われわれの共通認識とは裏腹に、児童ポルノが及ぼす被害が十分理解されないが故に法整備が行われていない幾つかの国がある。』と、名指しこそ避けられているものの法整備の遅れている国が指摘されております。」「国際的基準のなかで各国が特に求めているのが『単純所持』の禁止です。これは現在のインターネット関連の急速な技術革新のもとで児童ポルノの拡散を防ぐには無条件で単純所持を禁じるべきであるというコンセンサスに基づくものです。既にブラジルやフィリピンを含め、世界70以上の国が児童ポルノの『単純所持』を禁止しています。G8の中で『単純所持』が禁止されていないのは、日本とロシアだけであります。」(東郷副会長)

国内でも深刻化

© 日本ユニセフ協会
「子どもたちに学ぶことも必要ではないでしょうか?」。子どもたちを自ら児童ポルノの被害者や加害者にさせないために、大人の積極的な取り組みが必要と訴える大阪府寝屋川市教育委員会の竹内さん。パネリストからは、子どもたちへのインターネット教育のみならず、大人に向けた広報・啓発活動の必要性も訴えられた。

基調講演に続くパネルディスカッションには、東郷副会長とともに、教育、被害者の保護、インターネットホットライン、警察それぞれの分野の識者から、国内で深刻化する児童ポルノ問題の現状が訴えられました。

もともと海外から日本に連れてこられた女性の人身取引被害者の支援を目的に設立されたNPO法人ポラリスプロジェクトジャパンにも、「この3年位で日本人児童からの相談者が増えてきている」と報告されたのは、代表の藤原志帆子さん。どこにでもいるような普通の子どもたちが、お小遣い欲しさや、「進学費用の足しに」などの想いから、軽い気持ちでインターネットや携帯で自らの裸体の画像・映像を売り、それをきっかけに、より深刻な性犯罪に巻き込まれる子どもたちの数が、男女問わず増えているとの彼女の言葉は、「”リク写”という言葉をご存知ですか?」という問いかけではじまった大阪府寝屋川市の教育委員会で教育指導課指導主事をされている竹内和雄さんの報告でも裏付けられました。

「私も子どもたちから聞いて知ったのですが、“リクエストに応じて写メール”だそうで、WEBマネーで販売したりしているそうです。」「最近、こうした形で、親の知らないところで自らの裸体を販売する子どもたちが出てきています。」「携帯電話に関わる問題が、低年齢化、複雑化しています。」(竹内さん)

主な“舞台”はインターネット

警察庁生活安全局少年課の早川浩課長によれば、本年10月末現在、児童ポルノ事犯として摘発された件数は1,118件で、すでに昨年の年間総数を越えています。さらに、この中の「流通犯」にあたるものについては、その大多数はインターネットを通じたもの。被害者の低年齢化も進み、小学生以下の被害者の割合は平成21年度で15%。22年度は(暫定値ながら)18.9%に増加しています。

「インターネットホットラインセンター」への通報件数も増えています。同センターを運営する財団法人インターネット協会の国分明男副理事長は、児童ポルノの年間通報件数は、平成20年は約1,800件、21年は約4,500件だったのに対し、今年は上半期だけで約18,000件にのぼると報告。こうして発見されたインターネットサイトについては警察に通報し、プロバイダーへの削除要請などがなされていますが、海外にサーバーが置かれていたりする場合など、対処できない事例も出ています。国分さんは、「こうしたものをインターネット上から排除するためにも、いわゆるブロッキングのような取り組みも求められている」と、日本のインターネット関連業者の取り組みの必要性も強調されました。

一つの目的のために

インターネットブロッキングについては、児童ポルノ排除対策推進行議会にも参加する児童ポルノ流通防止協議会や安心ネットづくり協議会などの場で、民間の関連事業者らが中心となって、現在その導入に向けた検討・検証作業が行われています。この二つの協議会に参加されている日本インターネットプロバイダー協会の野口尚志さんは、「(ブロッキングについては)児童ポルノが子どもたちに与える被害の深刻さ、表現の自由、通信の秘密を踏まえ、国民の理解を得ながら取り組みたい。」としながら、国内外で新たな児童ポルノの流通手段としての利用が拡大していると指摘されている“ファイル共有ソフト”については、「現在検討・検証が進められているブロッキングでは対処できない」と指摘。一つの手段で全てをカバーすることはできないにしても、児童ポルノ排除という一つの目的に向かって様々な取り組みがなされることの必要性を訴えられました。

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