(財)日本ユニセフ協会

すべての子どもが、可能な限り最良の人生のスタートを切ることができるように…。それは子どもたちの権利でもあり、その権利を守ることが、ひいてはコミュニティや国、そして世界全体の未来を守ることでもあります。また、それは純粋に人間としての願いでもあるでしょう。

しかし、今の世界には、その“最良の人生のスタート”の権利を否定された子どもたちが多すぎます。

毎年1億3200万人の赤ちゃんが、まったく無防備に人生のスタートを切っています。その成長の過程では、多くのものが奪われています。愛情やケア、健康、栄養、保護…。それらは、子どもたちが成長するために欠かせないもののはずなのに。

その結果、1年間に5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもの数が1100万人にもなっています。この数は1日したら3万人、時間にすると3秒にひとりの割合です。1,2,3。1,2,3…、数えている間に、ひとり、またひとりと、声もなく子どもたちが亡くなっているのです。1100万人のうちの400万人は生後1ヶ月以内に亡くなっています。

子ども時代を生き延びられたとしても、幼い頃の栄養不良やケア不足により、全体で2億人以上の子どもたちが知的な障害を負ったり、認知力の明らかな遅滞に苛まれたりしています。そして、さらに多くの子どもたちが、学ぶ力が十分に育たなかったことによって、ハンディを背負わされ、将来的な可能性を奪われています。

2000年に生まれた子どもたちのことを考えてみます。

100人で考えると、そのうち

子どもたちの受難は、生まれる前からはじまっています。
子どもを産む母親が栄養不良だったり病気がちだったりすると、赤ちゃんは十分におなかの中で育つことができず、低体重で生まれてきます。低体重の子どもは、栄養不良や死の危険がより高いのです。さらに、母親の栄養不良は、妊娠時や出産時の母親の死亡率を何倍にも高めます。出産のときにも助産師さんなどの付き添いもなく、ひとりっきりで赤ちゃんを産んでいるお母さんも多く、妊娠中や出産時に事故や異常が起こっても、適切な対処を受けられません。

子どもは健康に生まれて来られないだけでなく、生まれたと同時に母親を失うという二重の悲劇に見舞われることになるのです。

母親が一生の間に妊娠や出産時の合併症で亡くなる危険性は、サハラ以南のアフリカでは13人にひとり、南アジアでは55人にひとりの確率です。
この確率は、先進工業国では、4,100人にひとりです。


健康に生まれても、親は家事や畑仕事など、毎日、朝から晩まで働きづめです。そのため、赤ちゃんをひとりっきりで寝かせておいたり、1日に1〜2回しか食事を与えられなかったり、あるいは何を食べさせるべきか知らなかったり…。問題が起きたときも、コミュニティにそれに応えられる仕組みがなければ、だれに相談したり頼ったりしたらいいのかわかりません。

そんなことが積み重なり、子どもは栄養不良になってしまいます。そして、病気になっていることに気付くのが遅れて、命を失ったり障害を負う結果となったり、知的発育が阻害されてしまったりするのです。

また、お母さんの受難は、子どもの受難に直結します。女性や女の子の社会的立場が弱いことや、女性への差別、女子に就学のチャンスが少ないことなども子どもの発育に大きく影響を及ぼしています。

子どもたちの命と可能性を守りたいと考えるなら、こうした問題をひとつひとつ解決し、悪循環を断ち切るしか方法はありません。

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