はじめに
大切な遺産を通じ、ご自身や故人の想いを次世代へつないでいく。人生の最期をむかえるときやご家族や大切な方とのお別れのときに行う寄付は、「遺産寄付」や「遺贈寄付」と呼ばれています。なかでも、ご自身が遺される財産について、遺言書を通じて法定相続人(*)以外の個人、又は団体に贈ることを「遺贈」いいます。
*法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者、子ども(または孫、ひ孫)、親(または祖父母)、兄弟姉妹(またはその子)まで。
- 遺産寄付/遺贈寄付とは…
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- 遺贈 … 遺言書を通じた、ご自身の財産のご寄付
- 相続財産寄付 … ご家族や大切な方から相続した財産のなかのご寄付
- 生命保険、信託などの契約にもとづいたご寄付
- お香典返しに代えたご寄付
遺贈とその手続きの流れ
1.相続と遺贈
人が亡くなると、法律(民法)にしたがい相続が行われます。亡くなった方の財産を引き継ぐ親族の範囲(法定相続人)や相続する財産の割合は、民法で定められています。もちろん、法定相続人の誰にどういった割合で財産を遺すのか、遺言書で指定することもできます。
なお、民法では法定相続人のうち被相続人(遺言者)の配偶者、子ども、父母が一定の割合の財産を取得する権利も保障しています。これを遺留分といいます。たとえば、遺言書で指定されている遺贈や相続分が遺留分を侵害していた場合、上記の法定相続人は、侵害額に相当する分の金銭を請求する遺留分侵害額請求権を行使することができるのです。法定相続人と遺留分については、「法定相続人の範囲と遺留分」をあわせてご確認ください。
遺贈では、財産を贈る相手は法定相続人以外の個人、又は団体で、遺言書で指定します。また、遺贈先が公益法人や認定NPO法人であれば相続税は課税されません(日本ユニセフ協会への遺贈は相続税の課税はありません)。手続きなど詳細については、遺贈先の団体に直接ご確認ください。
2.2種類の寄付方法~特定遺贈と包括遺贈
遺贈には、2種類の寄付方法があります。特定遺贈では渡す財産を特定するのに対し、包括遺贈では全財産に対する割合で指定するのが、それぞれの大きな特徴です。また、包括遺贈では、財産を受け取る受遺者は相続人と同等の権利、及び義務を負うため、債務を含めた財産の相続になります。
3.遺贈の流れ
ここでは、団体への遺贈の流れを例にご説明します。
1)専門家に相談
まずは、ご自身の財産からどのような割合で、どの団体に遺贈するのか決めます。そして、ご自身で決められた内容をもとに、弁護士や司法書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。遺贈予定先の団体で、寄付にむけた準備などの相談を受け付けていることもあります。
2)遺言執行者の指定
ご意思を確実に実現するために、あらかじめ遺言執行者を指定します。遺言執行者には、法定相続人や受遺者といった利害関係者も指定できます。しかし中立的な立場で執行した方が、円滑に手続きが進むことが多いようです。また遺言執行には相応の時間と手間、専門的な知識を要する場合があるため、多くの方は弁護士や司法書士などの専門家を指定されています。
なお、遺言執行者を指定しないで遺言書を遺すことも可能です。遺言執行者となる方が見つからず遺言書に指定がない場合、利害関係者が家庭裁判所に申し立てをすることで、遺言執行者を選任できます。
また、遺言執行者を指定する際、あわせて遺言者のご逝去の報を執行者に伝える、通知人を決めておくことをおすすめします。このあとの5)ご逝去の通知で記していますが、遺言執行者は遺言者逝去の知らせを受けて、遺言書の内容を実現するからです。通知人として、多くの方は身近な方、たとえばご家族やご近所の方、施設や病院のスタッフなどに頼まれているようです。
3)遺言書の作成
法的に有効な遺言書となるよう適宜、専門家とご相談のうえ作成することをおすすめします。遺言書では、誰に、どの財産を遺贈するのかを明記します。なお、遺贈先は正式名称と住所をお書きください。
例)公益財団法人日本ユニセフ協会(東京都港区高輪4丁目6番地12号 ユニセフハウス)
遺言書の方式は、本文(日付や氏名含む)手書きの自筆証書遺言と、公証役場に行って作成する公正証書遺言と大きく2種類あります。
自筆証書遺言は、費用や手間がかからないという利点がありますが、無効になってしまうことのないよう不備なく作成しなくてはなりません。そのため、作成時に弁護士などの専門家に相談される方もいらっしゃいます。一方で、公正証書遺言は、費用や手間はかかりますが、専門家である公証人と相談し作成するため不備が生じにくいといわれています。自筆証書遺言、公正証書遺言、それぞれの具体的な作成手順については、「自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方」をご確認ください。
4)遺言書の保管
遺言書の作成後は、大切に保管します。遺言書の保管は、ご自宅で保管、又は遺言執行者を指定している場合は、その方に遺言書を預ける方もいらっしゃいます。
ご自宅で保管される場合は、紛失や破棄のリスク、あるいは大切にしまい込んでおいたために発見されないといったことが心配されます。専門家などに預けられる場合は、相続が開始されてすぐに、預けた方へ連絡がいくようにしなくてはなりません。
いずれにしても、遺言書の保管場所や預けた方の連絡先を、可能であれば身近にいらっしゃる信頼できる方、あるいは通知人に伝えておきます。そして、遺言執行者を指定されている場合は、遺言者のご逝去の報を執行者に伝えてもらいます。
この他の保管方法については、以下に遺言書の方式別にお伝えします。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の保管は、法務局の保管制度(2020年7月10日より開始)を利用することもできます。保管制度については、詳しくは法務局のHP「法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度について」をご確認ください。
保管の申請は、遺言者の住所、又は本籍地、あるいは遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言保管所に自ら出向く必要があります。遺言者が亡くなるまで、保管されている遺言書を遺言者以外が閲覧することはできません。遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人、又は団体)も遺言書の閲覧や写しの請求が可能となります。
保管の手続きの手間はありますが、家庭裁判所の検認(自筆証書遺言の場合は、開封前に必ず、家庭裁判所でのこの手続きを受けなければなりません)が免除されるほか、公正証書遺言同様に紛失や変造などのリスクはありません。
公正証書遺言
公正証書遺言は、原本は公証役場で保管され、原本の写しである正本と謄本が遺言者本人に交付されます。正本は原本と同等の効力をもつため、大切に保管します。多くの方は、遺言執行者などの専門家に預けられているようです。
万が一紛失してしまった場合は、公証役場に再発行を請求することができます。ただし、遺言者がご存命中は、本人以外は再発行の申請することができません。ご逝去後は、相続人や受遺者などの利害関係にある方(又はその委任状をもった遺言執行者などの代理人)は公証役場に遺言書の有無を問合せることができるほか、謄本を請求することができます。
5)ご逝去の通知
遺言者のご逝去の知らせを受けた身近な方、あるいは通知人から遺言執行者へ連絡をします。遺言執行者は、遺言書の内容にしたがい手続きを開始します。(なお、遺言書において遺言執行者が指定されていない場合の手続きについては、「2)遺言執行者の指定」をご確認ください。)
遺言書の開封方法は、遺言書の方式により異なります。自筆証書遺言は、法務局で保管されていたもの以外について家庭裁判所の検認を受けなければならず、遺言書に封がされている場合は勝手に開封してはなりません。一方、公正証書遺言は検認の手続きを必要としません。
6)遺言書の開示
法定相続人や遺言書に記された遺贈先など関係者に、遺言執行者から遺言書の写し(公正証書遺言の場合は正本の写し)が送付されます。ここで、遺贈先が財産を受け取る意思があるのか(あるいは放棄するのか)を確認します。
7)遺言執行と財産の引き渡し
受遺が確定したら、遺言執行者が遺言書にもとづいて遺贈先に財産を引渡します。
8)寄付先よりお礼状の送付
遺贈先より、遺言者のご家族へお礼状が送られることがあります。団体によって異なりますので、詳しくは遺贈先の団体にお問合せください。日本ユニセフ協会では、お受けいただける場合、故人への感謝状やご家族へのお礼状をお送りしております。
更新日:2020年12月25日