日本全国の学校(園)を対象に実施しておりました「モンゴル指定募金事業」は、2016年末に受付を終了し、2017年末をもってプロジェクトを終えました。全国の学校から他大なご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。ユニセフ・モンゴル事務所からのお礼の報告をご紹介いたします。
モンゴル国、通称モンゴルは、北東と南西を中華人民共和国、北西部をロシア連邦と接している内陸の国です。国土の総面積は、約1,564,100㎢。日本の約4倍もある大きな国です。
モンゴルは、1990年代のソ連崩壊を機に大きな変容を遂げました。社会主義経済から市場主義経済へ転換し、浮き沈みを経験しながらも経済は発展してきました。しかし、経済成長の一方で、その恩恵が社会的弱者に行き渡らず、社会サービスの普及も道半ばです。例えば、就学前教育はまだ68%の適齢期の子どもに利用されるにとどまっています。また、都市部と農村部の格差は拡大の一途を辿っています。乳児死亡率は都市部で1,000人あたり18人であるのに対して、農村部では54人です。都市部においても、問題は山積みです。急速な経済発展や地方分権化が進むモンゴルでは、寒害で家畜を失った遊牧民も多く都市に移り住んでいるため、都市に人口が集中し、衛生や教育システムの普及が追い付いていません。
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
ユニセフは、北部の山岳地帯のフブスグル県と、首都ウランバートル郊外のナライハ区が、政策に子どものニーズを反映し、“子どもに優しいコミュニティ”作りを促進できるように、支援をしました。フブスグル州の中期発展計画(2016-2030)は、子どもにとっての優先事項が盛り込まれた内容になりました。また、両地域ともに“子どもカウンシル”が設置され、子どものニーズを分野横断的に政策に反映する仕組み作りがなされました。
モンゴルでは、地方行政が地域社会の発展のために使う“域発展基金”を持っています。ユニセフは、子どもや地域コミュニティが参加して、子どものニーズに考慮した地域発展基金の配分を促進するよう働きかけました。例えば、ナライハ区では、通学路に街灯がなく、登下校時に子どもたちが身の危険を感じていました。そうした子どものニーズが地方行政の予算配分に反映された結果、街灯が設置され、安心して子供が学校に通うことができるようになりました。また、子どもの遊び場不足が課題として共有された結果、同基金を使って、公園が拡充されました。2013年-2015年に子どもに関して使われた地域発展基金は、フブスグル州で14%増、ナライハ区では23%増となりました。同基金は、上記例のみならず、幼稚園の設立や医療サービスの充実といった用途でも使用され、子どもに優しいコミュニティ作りに活かされるようになりました。
ユニセフは、フブスグル県とナライハ区で就学前教育を担当する120人の先生へトレーニングも実施しました。トレーニングを通して、社会的に弱い立場にある子どもたち、経済的に困窮した家庭の子どもや障がいのある子どもを、就学前教育を通してどのように支援するのが良いのかが教えられました。加えて、ユニセフは保護者7,000人と子ども向けのハンドブックを作成し、就学前の幼児への教育や栄養の重要性を伝えました。
頂いたご支援に基づき、ユニセフはモンゴルの子どもたちが少しでも明るい未来を持てるよう、活動することができました。モンゴルをはじめ世界の190の国と地域の子どものために、ユニセフは活動を続けて参ります。
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
5歳のウルナは、モンゴルの首都ウランバートルのナライハ区に住んでいます。ウルナは「大きくなったらお医者さんになって、ほかのひとを治したい」という夢を持っています。ウルナのお父さんとお母さんは、ウルナが小さかったころを思い出し、夢を語るウルナをとても誇りに思っています。
ウルナは2歳を過ぎても、同じ歳の他の子どものように、話すことができませんでした。話すことができないので、ウルナはどんどん内向きになってしまい、家族や友だちからも距離を置くようになりました。お父さんとお母さんは、ユニセフが支援する幼稚園に週2回ウルナを通わせることにしました。その幼稚園は障がいを持つ子どもを対象にしていていました。ウルナは、ほかの子どもと会うことに少しずつ慣れていきました。その後、ウルナは公立の幼稚園に通うようにもなりました。
ウルナにとってドルジクハン先生と出会ったことは大きな転機でした。ドルジクハン先生は、ユニセフの支援を受けて、障がいを持つ子どもへの教育を学んだ先生です。幼稚園に通い始めたころ、うまく話せなかったウルナをみて、ドルジクハン先生は授業で“話し方”を教えました。少しずつウルナは話し方を覚え、そして幼稚園の友だちとも仲良くなりました。
ドルジクハン先生は、幼稚園が夏休みの間も、ウルナが練習を続けられるようにウルナとウルナのお父さんとお母さんにも、練習の仕方を教えました。「夏休みの間も、毎日わたしとお母さんは話す練習をがんばったよ」とウルナは話しています。ウルナはもっともっとうまく話せるようになっていくでしょう。
ドルジクハン先生は言います。「障がいのある子どもなんていません。適切な環境で、愛をもって接すれば、どんな子どもも持っている可能性を最大限に発揮できるのです」
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
© M.Batbaatar/UNICEF/2016
長きにわたり、たくさんの学校、園のご支援を賜りましたこと、本当にありがとうございました。これからもユニセフならびに日本ユニセフ協会へのご理解、ご支援いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。