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お知らせ

ベトナム指定募金プロジェクトのご報告

日本全国の学校(園)を対象に実施しておりました「ベトナム指定募金事業」は、2017年末に受付を終了し、2018年末をもってプロジェクトを終えました。全国の学校から多くのご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。ユニセフ・ベトナム事務所からのお礼の報告をご紹介いたします。

発展から取り残される少数民族たち・・・

インドシナ半島に位置するベトナムは、人口約9,170万人、南北に細長く、中国・ラオス・カンボジアと国境を接する国です。公用語のベトナム語を話すキン族が人口の約86%を占めていますが、他に53の文化や言語を持つ少数民族が暮らしています。

ベトナムは、1986年のドイ・モイ(刷新)政策導入を機に、急速な経済成長を遂げました。しかし、経済発展の恩恵を受けているのは多数民族であるキン族が多く暮らすハノイやホーチミンといった都市部に限られ、少数民族が多く暮らす山間部ではいまだ電気も通らず適切な衛生施設を持たない家庭も多くみられます。学校へのアクセスが非常に悪いからだけではなく、キン族出身の教員がベトナム語で行う授業の内容がわからず落第や退学をしてしまう少数民族の子どもが多くいます。初等教育を86%のキン族の子どもが受ける一方で、少数民族の子どもは60%に留まっています。頂いたご支援を基に、ユニセフは少数民族の子どもへの教育の改善に取り組みました。

皆さまのご支援で

©UNICEF/2011 ディエン・ビエン州は、最も貧しい州のひとつです。中国・ラオスとの国境に近い山間部に位置し、異なる文化・言語を持つ21の民族が暮らしています。ディエン・ビエン州の山間部では、家から学校までが遠く、特に雨期になると通学路が悪くなり通学ができない子どもたちが多くいます。山間部はインフラが普及しておらず、同州のわずか30%の人口しか安全な飲み水にアクセスできず、衛生的なトイレの普及も進んでいません。そして、下痢や肺炎にかかりやすい環境で子どもは生活しています。そこで、2016年にチュアタン族の子ども向けに、平日のみ学校に泊まることができる半寄宿制の学校の設置を行いました。これにより、週末は家族と家で過ごし、平日は継続的に授業に出席できるようになりました。トイレ、食堂、宿舎などの設備も揃え、衛生的な環境で、栄養のある食事を取り、子どもが勉強できる環境を提供しています。子どもは、歯磨きや手洗いといったライフスキルも学校で学び、家に戻ったときにも実践することで、家族に学校で学んだことを伝え、村の衛生環境の改善に貢献しています。 ©UNICEF/2011

加えて、ユニセフはベトナム政府と、少数民族が多い5つの州で、少数民族の子どもが中学校に進学・通学ができない理由を把握するために、調査を支援しました。調査を通して、少数民族の子どもが中学校に進学・通学する妨げになる要因が、多岐に渡ることが明らかになりました。例えば、先生が少数民族の文化・習慣への理解が不足していたり、ジェンダーの違いへ配慮が不足していることなどが、主な障害として含まれます。調査結果はベトナム政府と共有され、81万人余りの中学校に通う年齢の少数民族の子どもへ、より良い教育システムを提供するために活かされます。

©UNICEF/2010 ユニセフは、共通語であるベトナム語と少数民族固有の言語によるバイリンガル教育を促進しました。少数民族の子どもは、母語で教育を受けた方が学習習熟度が高くなることが分かっています。バイリンガル教育の重要性をベトナム政府と共有し、教師のトレーニングなどを共同で実施してきました。3つの少数民族言語を対象に、バイリンガル教育(ベトナム語-モン語、ベトナム語-ジャライ語、ベトナム語-クメール語)を説明するガイドラインを、地方政府の教育担当者向けに作成しました。このガイドラインを基に、バイリンガル教育の枠組みが促進される見込みです。 ©UNICEF/2010

皆さまのご支援を基に、支援を必要としているベトナムの少数民族の子どもを対象に、ユニセフは様々な支援を行うことができました。ベトナムをはじめ世界の190の国と地域の子どものために、ユニセフは活動を続けて参ります。

支援の現場から-ミーちゃんのお話-

©UNICEF/2013 7歳のミーちゃんは、チュアタン小学校で勉強をしています。チュアタン小学校は、ベトナム北部の山の多い地域にあります。ミーちゃんの家は、学校からデコボコの山道を1時間以上歩いた場所にあります。毎日家から学校に通うのはとても大変です。

ユニセフの支援で、ミーちゃんのような家が遠い90人の子どもが、平日は学校に泊まることができるようになりました。ミーちゃんは、平日は学校に泊まり、週末に家に帰ることにしています。ミーちゃんの1日は、6時半に起きて、友だちと校庭を掃除することから始まります。その後、朝食を食べ、授業が始まります。 ©UNICEF/2013

モン族出身のミーちゃんは、家ではモン語を話すので、ベトナム語は得意ではありません。もし先生がベトナム語で授業をすると、よく分からなかったり、ベトナム語を書くのも苦手です。チュアタン小学校では、先生はモン語で授業をするので、ミーちゃんは授業が分かります。今日の授業は、算数、ベトナム語、美術です。休み時間、ミーちゃんは友だちとなわとびをして遊びます。ミーちゃんは本当に学校が大好きで楽しそうです。

土曜日、ミーちゃんと友だちは、一緒に山道を歩いて家に帰ります。家に帰ると、お昼を食べながら、家族のみんなと1週間のできごとを話します。ミーちゃんのお父さんも、「ミーが勉強を続けてほしい」と応援しています。ミーちゃんは、月曜日からの学校を楽しみにしています。

長きにわたり、たくさんの学校、園のご支援を賜りましたこと、本当にありがとうございました。これからもユニセフならびに日本ユニセフ協会へのご理解、ご支援いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

公益財団法人 日本ユニセフ協会