私が活動している東部・南部アフリカ地域の20カ国では、ここ数年で初等教育の無料化が一気に進みました。それ自体は喜ばしいことですが、入学者の殺到に学校側が対応しきれず、以前から低かった教育の質がさらに悪化しています。机も教科書もない教室に100人近くが詰め込まれ、適切な訓練を受けていない教師が、子どもたちの言語でない授業を行っていたり、女子用のトイレがなかったり・・・。そんな学校が多いため、毎年大勢の子どもたち、特に女の子が通学を断念してしまいます。
女の子にとって、学校に女子用のトイレがあるかないかは、特に重要な問題です。学校に女子用のトイレが整備されていないと、女の子たちは成長するにつれ、学校に行くのをやめてしまいます。一週間学校を休めば、それだけ授業がわからなくなる。その結果、ますます学校に行くのがいやになっていく……悪循環です。このようにして学校をやめた女の子は水くみや家事などに追われるうち、将来を考える余裕もなく婚期を迎えます。
ユニセフは、教育の質を少しでも良くするため、教材の提供や先生への研修などを行っています。同時に村の集会所などで、子どもたちが家事をしながらでも通える1日3時間程度の非正規学校を支援しています。女の子が通いやすいよう、先生には現地の女性を抜てきします。コミュニティ内で比較的高い教育を受けている女性に即席でトレーニングを施し、先生になってもらうのです。女性を先生に起用すると女の子が学校に通いやすくなります。また、ほとんどの女の子にとって、社会で活躍する女性を目にするはじめての機会となります。学校に通いだした女の子が「先生になりたい」と言うのを聞くたび、チャンスを広げてあげることの大切さを痛感します。
下痢性の病気やHIV/エイズなど、情報があれば防げる死因で多くの命が失われているアフリカ。教育の生むは命にかかわります。女の子たちが学校に通って大切な知識を身につけ、自ら選びとった人生の中でその知識を広めていけるように願っています。