「手遅れ」で亡くなる小さな命
日本の1.6倍の面積をもつマダガスカル島。熱帯雨林から半砂漠までさまざまな風景が広がる美しい島ですが、人々の暮らしは貧しく、子どもたちは栄養不良のためあらゆる病気にかかりやすくなっています。
特にサイクロンや干ばつなどにより衛生状態が悪化したり、食料難が続いたりすると、骨が浮き出るほどやせ細った赤ちゃんや、下痢やマラリアで憔悴しきった赤ちゃんが診療所に運ばれてきます。もっと早くに来れば助かるはずですが、村から診療所まで何時間もかかったり、交通費が払えなかったりして、手遅れになってしまいます。
生まれた瞬間から死にさらされる小さな命
生まれたばかりの赤ちゃんは抵抗力がほとんどありません。
自宅で生まれることの多い、マダガスカルなどの開発途上国の赤ちゃんは、不衛生な出産から破傷風や肺炎などにかかり命を落としてしまうことがよくあります。
そして、その大多数が生後1週間もたたないうちに息をひきとっています。
生まれた瞬間から死にさらされ続ける小さな命。その命を守るために、ユニセフは「母子健康週間」に取り組んでいます。
「母子健康週間」 年に二回の命綱
ユニセフは2006年から毎年二回、全国すべての村々へいっせいに保健員を送り、予防接種やビタミンA、虫下し、妊婦さんへのマラリア予防薬の投与などを行う「母子健康週間」を実施しています。これは、日ごろ診療所に行けない多くの母子にとって、ケアを受けられる唯一のチャンスです。
コミュニティボランティアや保健員が一軒一軒で家庭を訪ね、「診療所に行きましょう」「妊娠したら検診に行きましょう」などと言って、母子を診療所へ送り込みます。
診療所が遠すぎる地域では、コミュニティボランティアが遠隔の村まで行き、移動診療を行います。
移動診療所と言っても、ビタミンAや薬をかばんに詰め、ワクチンを冷蔵保存する“コールドボックス”と呼ばれる箱を下げた保健員が、徒歩、自転車、荷馬車、あるいはバイクなどで、村々へ出向くだけのものですが、子どもたちにとってはこれが命綱となるのです。
マダガスカルでは人口の4割が最寄の診療所から5km以上離れて住んでいます。5kmは歩いて約1時間の距離ですが、地域によっては何時間も歩かなければいけないことも珍しくありません。
これを赤ちゃんをおんぶして上の子供の手を引きながら行くのはやはりお母さんにとって大変で、診療所に行きたくてもなかなか行けないという現実があります。
「母子健康週間」は、この3年間で、村々に根付き、確実にプラスの効果が出はじめていると感じています。 赤ちゃんを抱いたお母さんたちが続々と集まってくるのを見るたび、この活動がどれほど頼りにされているか感じます。
政情不安・・・それでもユニセフは、活動を続けます
今ユニセフは、この国の子どもたちの命をつなぐ重い役割を担っています。3月の政変以来、多くの支援機関が活動を中止・縮小してしまったためです。他の機関が撤退してしまった中でも、ユニセフはこの国で活動を続けています。
子どもたちを取り巻く環境が厳しい時期だからこそ、子どもたちを守らなければならない。どんな状況下でも子どもを最優先にし、子どものために活動を続けます。
「どこに生まれてもすべての子どもはみんな平等の権利を持っている」。これがユニセフのスタンスです。 政治的な混乱の中でも、ユニセフはすべての子どもたちを平等に支援の手を差し伸べます。 アクセスの悪い村々に住む子どもたちにも、支援を届けに行きます。
母の想いを胸にー
これから先、わが子が病気になったら、今また自然災害が起きたら・・・。
私にも赤ちゃんがいるのでお母さんの心配がわかります。 母になって思うことは、「わが子に元気に育ってほしい」と願う母の想いは、国や文化を越えて普遍的なものだということです。
どんな時でも子どもの命を最優先する、ユニセフの信念を胸に活動を続けています。
Photos:© UNICEF/Madagascar/Yuki Takahashi, © UNICEF/Madagascar/Susanna Mullard, © UNICEF/NYHQ2009-1168/Theodose Sitrakiniaina