2022年9月26日スーダン発
世界では、小学校学齢期の子どもたちの8%にあたる約5,900万人が学校に通えていません。ユニセフは、すべての子どもたちが学校に通い、質の高い教育を受けて卒業できることを目指して、世界各地で教育支援を行っています。
例えばスーダンでは、ユニセフの代替学習プログラムを通じて、貧困や紛争、家庭の状況などのさまざまな事情で学校に通えていなかった子どもたちの学習をサポートしています。
等しく教育を受ける権利
青ナイル州の州都ダマジンにあるユニセフが支援するアル・ゾウール学習センターには、7~9歳の児童が40人と、10~14歳の生徒が60人在籍しています。同州には、68の代替学習センターがあり、ここはそのうちの一つです。
センターに通う子どもたちの多くは、家庭に経済的な余裕がないため、一度も学校に通ったことがありません。ほかにも、学校を中退した子どもや、紛争で家を失ったり、争いに巻き込まれたりしてしまった子どももいます。それぞれに異なる事情を抱える子どもたちですが、一つだけ言えることは、みな等しく教育を受ける権利がある、ということです。
10年前からこの学習センターで算数/数学の教師をしているサナ・ヤヒアさんは、こうした子どもたちへの授業は決して容易なことではないと言います。「センターで教えるのはとても難しいです。子どもたちのほとんどは教育を受けたことがなく、勉強するのも初めてだからです。その上、家庭は経済的に苦しく、親は子どもたちをサポートすることができません。だからこそ私たち教師が、授業で教えるだけでなく、その後の復習などもサポートする必要があります」
子どもの個々の事情に対応できるプログラム
このセンターの代替学習プログラムは、子どもたちのニーズを満たし、それ以上のことを提供することができています。このプログラムは、学校に通ったことがない、中途退学した、あるいは通常の教育システムには馴染めないなど、さまざまな理由で教育を受けられなかった子どもたちのために考案されたものだからです。
センターでは、アラビア語、英語、理科、算数/数学の各科目を計6人の教師が教えています。ヤヒアさんと他の先生たちは、ただ授業をするだけでなく、子どもたち個々の事情や家庭環境を理解することで、より良い教育とサポートを提供できるようにしています。センター長のマジダ・アブデルマジードさんは、「児童・生徒たちの中には、地元の市場で働いている子もいます。生徒たちの厳しい状況は理解していますが、頑張って学習を続けて欲しい」と言います。
センターで学ぶ女の子たちの多くは、午前中に授業を受けてから市場へ出かけます。すべての子どものニーズに応え、だれひとり欠けることなく授業を受けられるよう、センターでは午前と午後に授業を行っています。そうすることで、女の子たちは家族のための役割を果たしながら、都合がつく時間帯に授業に参加することができます。また、学習の遅れが生じている子どもたちのために、補習授業も特別に設けられています。そして、このセンターでは、結婚のために一度は学校を去らなければならなかった思春期の女の子たちにとっても、再び、そして安全に教育を受けられる場所になっています。
すべての子どもに、学ぶチャンスを
センターが提供する学習カリキュラムは、文字の読み書き、計算、ライフスキルの3つに重点を置いています。そうすることで、児童・生徒たちが、正規の基礎教育に復学できるよう、あるいは技能訓練を受けて将来的な雇用の可能性を高められるように支援をしています。現在、センターに通学する子どもたちの75%、特に年齢が低い子どもたちが正規の学校制度に戻れているといいます。
「子どもたちはこのプログラムを卒業し、公立学校へ進学します。生徒の1人は青ナイル大学に入学しました。とても誇らしいです。」とセンター長のマジダさんは言います。
ユニセフは、学習センターの建設を支援し、学校に通えていない子どもたちに学習の機会を提供し続けています。またノートや文房具の学用品や、レクリエーション・キット、教育キットなどを提供するとともに、教師や学校管理者向けの研修も行っています。子どもたちが学校に通い続けられるように様々なサポートと工夫を重ねることで、厳しい状況にある子どもを含め誰も取り残されない教育支援を届けています。