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「子どもにやさしい学校」に必要なこと

「子どもにやさしい学校」に必要なこと

ブルキナファソの中北部地方にあるザンバンガ村で、最初は恥ずかしそうにしていたサラマタさん(14歳)ですが、徐々に打ち解けてザンバンガ小学校でのことを話してくれました。サラマタさんは6年間の初等教育課程を修了しましたが、公立中学校の進学試験に合格できませんでした。学力を落とさないために、1年間小学校に残って勉強を続け、再度、進学試験を受け、その結果は8月に発表されます。

進学試験のために1年間、勉強を頑張ったサラマタさん

サラマタさんの進路の選択肢は限られています。7km離れたブルサの町にある公立中学校への進学試験に合格しないと、私立中学校に進学しなくてはなりませんが、サラマタさんの両親には私立の学費を支払う余裕はありません。ブルキナファソでは、小学校修了後に中学に進学した女子は31%(2011-12年度)しかおらず、サラマタさんも学業をあきらめなくてはならない大勢の女の子の一人になるかもしれません。

サラマタさんは小学校から歩いて10分くらいのところにあるイェランビドゥ村の出身です。両親と3人の弟と一緒に暮らしていて、すでに家を出た兄と姉が一人ずついます。兄と姉は学校に行けませんでしたが、サラマタさんは両親に学校に行きたいとお願いしました。「私には学校に行く権利があるの。」きっぱりと言います。「お父さんとお母さんに私を学校に行かせてってお願いしたの。友達はみんな学校に行っているし、私も行きたいわって。」

サラマタさん(写真一番左)とクラスメイトたち

ザンバンガ小学校は1998年にブルキナファソ政府により建設されました。2010年以降はユニセフが「子どもにやさしい学校」づくりのために、学校に必要な備品の提供、教員研修の実施、PTAやクラブ活動の立ち上げなどの支援をしています。

サラマタさんの一日は、家族みんなの分のお湯を沸かすために、5時半に起きるところから始まります。体を洗って着替えを済ませると、前日の夕食の残りを朝食用に温め、30分後には友人たちと一緒に学校へ向かいます。始業前に学校に着くと、友人のアセタさんと一緒に木の下で教科書を取り出して復習します。7時半に始業ベルが大きく鳴ると、子どもたちは教室に入ります。授業はフランス語から始まり、子どもたちは大きな声で元気よく順番に音読します。フランス語の発音につかえると、先生が手助けをしてくれます。

600人以上の子どもたちが通うザンバンガ小学校

「私は文字が読めるから幸せよ。お父さんもお母さんも読み書きができないけれど、私は薬の説明書きなどが読めるから、家で役に立てるのよ。」サラマタさんは誇らしげです。

あわただしい午前中が終わると、サラマタさんは10歳の弟アダマと一緒に昼ごはんを食べに家に帰ります。「家に着いたら食べる前に石けんで手を洗うのよ。たまにお母さんがリグラ(煮込みご飯)を作ってくれるわ。でもリグラはあまり好きじゃないの。」そして恥ずかしそうに「私がもっと好きなのはトウ(トウモロコシの粉を練って固めた主食)なの。」

サラマタさんにどうしたらもっとザンバンガ小学校が「子どもにやさしい学校」になると思うか聞いてみると、よく考えてから答えてくれました。「先生たちの宿舎が学校の敷地内にあったらいいと思うわ。先生たちの家は遠くて、そこから毎日勉強を教えに来てくれているから。あと、お手洗いが男女別になっていないのと、ちゃんとした手洗い場がないの。先生たちが持ち運びできるプラスチックの手洗い器と石けんを使わせてくれるわ。学校に水をくみ上げるポンプが2つあったらいいな。生徒の人数が多いのに、今は1つしかなくて足りないから。」

学校に4つしかないトイレ

学校のポンプで水をくみ家に持ち帰る女の子

サワドゴ先生(30才)は教師になって7年目です。ユニセフの支援で「子どもにやさしい教授法」の研修を受けました。「子どもたちにどのように教えるべきかという私の認識が変わりました。子どもたちに教えるということは、子どもと教師の間でコミュニケーションをとることが大事なのだということを学びました。生徒たちは参加型の授業を通じて学んでいます。教師が生徒に質問をし、生徒から答えを引き出します。そして、今度は生徒たちが教師に質問し、それに対して教師が答えます。そうすることで教師と生徒の間にはよい関係が築け、子どもたちはクラスの中で発言することを怖れなくなります。私が子どもだったころとは大違い、今はとてもよくなっていると思いますよ。」(サワドゴ先生)

校庭で話してくれたサワドゴ先生

教授方法の改善や教員研修へのユニセフの継続的な支援により学校はとてもよくなりました。一方で課題もまだたくさん残されています。教員向けの宿舎がないために、サワドゴ先生はブルサ市の自宅から15kmの道のりを毎日バイクで通っています。教員の給料も高くはなく、家族を養わなくてはならないサワトゴ先生にとって、学校との往復にかかるガソリン代は大きな負担になっていますが、生徒に教えたいというサワドゴ先生の意欲が失せることはありません。

サワドゴ先生は教師の仕事を楽しんでいます。62人の6年生の子どもたちに毎朝会うのを楽しみにしていますが、教室を増やせばスペースに余裕ができ、生徒たちはもっと良い環境で学べるようになるだろうし、学習もはかどるだろうとも思っています。「この学校は現在606人の生徒がいるのに、教師は校長を含めて11人しかいません。でも、こうした大変な状況であっても私は教師をやめようとは思いません。私は子どもが好きで、だから教師になったのです。私は生徒たちを心から誇りに思っています。だって彼らの成績はこの地域で一番いいのですよ。」(サワドゴ先生)

試験の結果を見る男の子

小学6年生の子どもたち

写真クレジット:©UNICEF/Burkina Faso