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モザンビーク
活動報告

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モザンビークの教育事情について

モザンビークの学齢期の子どもの数は約720万人に上ります。内戦終結後、初等教育純就学率は大きく上昇し、2007年の64%から99%にまで大きく改善されましたが、これは政府が学費の無償化や教科書の無料配布など、教育分野に力を注いできた成果といえます。

しかしながら、小学校に入学する子どもの数は増えましたが、教育の質の改善が追いついていない状況で、子どもたちの学習習熟度は低く、中退率は高止まりするなど、深刻な課題が残されています。例えば、2016年に実施された小学3年生を対象とした調査では、読み書きでは4.9%、算数では7.7%の子どもたちしか目標とする学力に達していませんでした。また、小学校の修了率は45%で、半数以上の子どもたちが小学校を卒業できていません。

モザンビークの教育指標

幼稚園の就園率(3歳~5歳)
5%
学齢期(小学校)の子どもの数
720万人
小学校の修了率
45%
小学校に通っていない子どもの数
120万人
子どもと教員の割合(小学校)
子ども60人あたり教員1人
5歳未満児死亡率(1,000人中)
5%
学齢期(小学校)の子どもの数
720万人
小学校の修了率
45%
小学校に通っていない子どもの数
120万人
子どもと教員の割合(小学校)
子ども60人あたり教員1人

モザンビークでの教育支援の内容・成果

日本の皆さまからのご協力で教育支援を実施している地域

国内でも教育面での課題が多く、教育指標が最も低いナンプラ州とソファラ州、及びサイクロンによる甚大な被害を受けたザンベジア州を対象に教育支援を行っています。

子どもたちの教育の基礎となる就学前教育

途上国の教育支援といえば、初等教育を思い浮かべる方が多いと思いますが、ユニセフは、小学校に通い始めるまでの就学前教育もその後の人生の基盤を築く上で、重要なものであると考えています。

しかしながら、教育予算が限られている途上国の多くでは、就学前教育に対する認識はまだ低く、政策的にも初等教育を優先させる傾向があります。世界では、1億7,500万人の子どもたちが就学前教育を受けられていません。また、低所得国で就学前教育を受けている子どもはわずか5人にひとりです。

就学前教育がもたらす効果

就学前教育が子どもたちにもたらす様々な効果はこれまでの調査や研究で明らかになっています。乳幼児期は、脳が飛躍的に発達する大切な時期で、子どもたちの好奇心を満たす刺激・知識、情緒・社会性の発達に配慮したケアと教育を受けることで、子どもたちはその後の人生において大きな可能性を発揮することができます。

例えば、少なくとも1年間の就学前教育を受けた子どもは、小学校の生活に必要不可欠なスキルを伸ばし、学校を留年あるいは中退するリスクが減少することがわかっています。また、学力についても就学前教育を受けた子どものほうが伸びる傾向にあります。
世界各国の教育予算のうち就学前教育に対する予算の割合は平均6.6%で、データが入手できた国々のうち40%近くでは2%未満でした。(2017年データ)ユニセフは、国の教育予算の少なくとも10%を就学前教育に充てることを各国政府に働きかけています。

短期集中就学準備(ASR)プログラム

モザンビークでは、就学前教育の就園率がわずか5%と低く、ユニセフは教育省とともに、4~5歳の子どもたちが就学前教育を受けられるように、「短期集中就学準備(ASR)プログラム」を導入しました。

ユニセフは、2016年からモザンビーク中部にあるザンベジア州で試験的に同プログラムを導入し、効果測定を行ったところ、多くの効果がもたらされることがわかりました。プログラムを導入したザンベジア州の地区の教育担当官のアニベル氏は、「就学前教育は、子どもや小学校、保護者、教員、地域社会に多くの良い面をもたらすことがわかりました。小学校に入学した児童たちは、教員の指示を理解し、授業を集中して聞くことができます。教員も、学ぶ意欲を持った児童たちに、学年の最初から1年生向けの授業をすぐに始めることができます。家庭では、保護者たちが宿題をみるようになったほか、子どもたちが学校で直面した問題について助けるようになりました」と話します。

プログラムの対象者や内容は以下をご覧ください。

2024年以降の支援計画の対象者

5~6歳の子ども
6,930人
子どもたちの保護者
5,890人
就学前教育を担当するファシリテーター
432人
小学校1年生の教員
180人
  1. 5歳~6歳の子どもを対象とした就学準備クラス

    120時間(8週間、週5日、1日あたり3時間)をかけて、数の数え方や公用語のポルトガル語での読み聞かせなどの学びを通じて、基礎的な算数と言語スキルを身につける。クラスは研修を受けたファシリテーターが担当し、子ども15人に1人の割合で配置される。クラスでは、幼児向けのドリルや文房具、黒板、おもちゃなども提供される。また、ブランコやシーソ―、ジャングルジムなどの外遊びのための遊具の資材が提供され、遊び場も設置される。

  2. 保護者向けの講習会

    事前に2日間の研修を受けた保護者の代表が講師となって、幼児の保護者向けに、週1回、1時間の講習会と2時間のグループディスカッションを9週間かけて行う。講習会では、就学前教育の重要性、幼児期の脳の発達や適度な刺激の必要性、子どもたちの自信や自尊心を育む方法、学習での親の役割、基本的な算数や読み書きの教え方、衛生や栄養などについて保護者が学ぶ。

    就学前教育プログラム 保護者用ポスター
    (モザンビーク政府・ユニセフ作成)

  3. 小学1年生を担当する教員向けの研修

    小学校に進学した子どもたちがスムーズに学校生活に適応できるように、小学校低学年向けの学習方法、遊びを取り入れた指導方法、子どもたちにとって学びやすい学習環境や教材作りなどについての研修を実施。

    研修を受けた教員が遊びを取り入れた学びを小学1年生のクラスで実践している

動画 子どもたちが小学校で学び始めるための大切な準備(就学前教育)

質の高い初等教育をすべての子どもたちへ

2024年以降の支援計画の対象者

ソファラ州:
小学生70,421人、教員1,234人、校長138人

水と衛生環境を整える

モザンビークでは、学校内に男女別のトイレや手洗い場が設置されていない学校が多くあり、思春期を迎えた女の子たちが生理期間中に学校に通えなくなるなど、教育の妨げになっています。また、感染症対策としても、水と衛生環境の整備は切迫した課題です。

2024年は、手洗い場を備えた男女別トイレが21校に設置され、児童は安心してトイレを利用できるようになりました。また、36校に設置されている、地域住民も使える給水所の定期的なメンテナンス・修理や、地域住民からの水の使用量の徴収などを担う水管理委員会のメンバー426人が、知識定着のための再研修を受け、メンテナンス技術や財務管理についての理解を深めました。

新しいトイレが学校に整備されました >(2023年3月更新)

動画 みなさまのご支援で小学校にできた安全なトイレ

学校に設置された男女別のトイレ
校内の手洗い場を利用する子どもたち

子どもたちのクラブ活動

子どもの権利とライフスキルを普及・啓発を目指す学校のクラブ活動があります。ライフスキルは日常生活に生じる様々な問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な力です。クラブ活動では子どもたちが、暴力への対処方法、早すぎる妊娠や児童婚、生理など、女の子の出席率に影響を与えるデリケートな問題の扱い方を学びます。2023年は95校の児童600人がクラブ活動に参加しました。今後は、参加していない児童3万人にもこうした情報・知識を伝えていきます。

クラブ活動に参加する子どもたち

校長や教員などへの研修の実施

子どもたちが質の高い教育を受け中退することなく小学校の全課程を修了できるように、教員など教育関係者を対象とした研修を支援しています。

  1. 校長先生や学校運営委員会のための研修

    学校が円滑に運営され、抱えている課題を解決できるように、校長先生などを対象とした研修を実施しています。研修の期間は30日間で、6つの科目(教育学、学校運営、財務管理、リソース管理、法律、情報通信技術(ICT))を学びます。前半の15日間は、講義形式で行われ、後半の15日間は、参加者自身の学校における具体的な課題に取り組む実地研修が行われます。

    また、効率的な学校運営を目指して、各学校には地域住民などが参加する学校運営委員会が設置されています。ユニセフは委員会メンバーを対象に、早すぎる妊娠や児童婚の事例の把握と適切な対処法、児童の退学や欠席を防ぐための方法などに関する研修を実施しています。研修は、子どもに対する暴力への対処や、教育省が学校に直接提供する学校支援金の管理における能力強化も目的としており、2023年6月~2024年5月の間に、95校の委員会メンバー1,590人が参加しました。

    研修を受ける校長先生たち

    学校運営に必要な研修を校長先生に >(2022年3月更新)

    女の子たちの退学を防ぐために 学校ができる取り組みを >(2022年3月更新)

    よりよい学校運営を目指して ―学校支援金の管理― >(2024年9月更新)

  2. 教員のための研修

    ユニセフは、教育省が実施する現職の教員を対象とした遠隔教育による研修の支援を行っています。教員が授業を欠席せずに研修に参加できるように、タブレットなどを利用する遠隔学習を取り入れており、ユニセフは、教員養成大学や選定された学校で行われている遠隔教育による教員研修の内容を充実化させ、設備を改善しています。皆さまのご寄付により、教員の能力強化を目的とした学習センターや遠隔教育研修センターでインターネットサービスが利用できるようになり、遠隔教育のさらなる拡大が期待されます。また、2023年には、他の教員をサポートできる経験豊富な教員370人が、スキル向上のために読み書きや算数の教え方に関する研修を受けました。

    子どもたちに夢を与えられるように >(2021年12月更新)

緊急事態下の子どもたちへ届ける教育

2023年2月に発生したサイクロン・フレディは、史上最も長く続いたサイクロンで、モザンビークに2度上陸しました。ユニセフは被害が最も大きかったザンベジア州で、子どもたちの教育の機会が奪われることがないよう、仮設学習スペース20棟を建設し、被災した児童2,200人に学習キットを配布しました。

学習キットを手に笑顔の子どもたち
仮設学習スペース

数字で見る2020年5月~2023年12月までの支援の成果

支援の内容
ソファラ州
ナンプラ州
短期集中就学準備(ASR)プログラムを受けた子どもの数
7,600人
1万2,400人
児童に読み書きや数の数え方を教えるための研修を受けた教員の数
95人
250人
教育を継続できるよう、ライフスキル※を身につけるための学校のクラブ活動に参加した児童の数
3万人
5万人
児童の欠席や中退を防ぐため、子どもの暴力等に関する研修を受けた教員の数
190人
250人
児童の欠席や中退を防ぐため、子どもの暴力等に関する学校運営委員会メンバーの数
1,590人
2,410人
学校運営に関する研修を受けた校長の数
40人
150人
トイレ・給水所・手洗い場を設置した学校の数
5校
30校

※ ライフスキル:日常生活に生じる様々な問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な力

活動報告

詳しい活動報告はこちらからご覧ください。
※「ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム スクール・フォー・アフリカ」支援レポートより

スクール・フォー・アフリカ報告会

ユニセフ・モザンビーク事務所やアフリカの地域事務所で勤務する日本人職員による報告会を開催しています。

日本人スタッフの活動報告

モザンビーク事務所で教育支援を専門として活動している日本人スタッフからの活動報告です。