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安心できる学校で学びたい

安心できる学校で学びたい

学校が襲撃されたことを想定した訓練

「ある朝、僕が学校で授業を受けていると、武装した男たちがオートバイに乗ってやってきました。彼らは、もし学校で先生を見つけたら殺すと脅しました。そして、家も学校も燃やし、ノートまでも燃やしました。たくさんの人が殺されました。このとき以来、僕は夜も眠れなくなりました」。

授業を受けるイブラヒムさん

サヘル地方のアルビンダにある村を出てから3年、イブラヒムさんはあの日のトラウマを抱えたままです。ブルキナファソの120万人の国内避難民のうち6割は子どもで、彼はその内のひとりです。13歳のあどけない表情をしたこの少年は、ウェンドゥにある小学校の5年生になりました。今朝はクラスメートと一緒に、算数の授業を受けています。子どもたちは笑顔で、教室は和やかな雰囲気につつまれています。

訓練は、笛の音で突然始まります

突然、担任のハミドゥ先生が笛を吹くと、子どもたちはすぐさま、電気を消し、窓やドアを閉め、机の下に避難します。5分の間、教室は水を打ったように静まりかえりました。そして、訓練の終了と授業再開を告げる2度目の笛の音が響きます。このように、学校が襲撃されたことを想定した訓練が繰り返し行われています。

ブルキナファソで治安が悪化した2015年以降、学校は武装集団の襲撃の標的のひとつになりました。その影響は憂慮すべきもので、2021年12月現在、3,280校の教育施設が休校になり、51万人以上の子どもたちが教育を受ける機会を奪われているのです。

緊急事態時を想定した訓練は、週2回実施されています。ハミドゥ先生は、「訓練は、最初は生徒たちにとって大変なことでしたが、今では訓練の目的をよく理解しています」と説明します。生徒の一人、アミナタさん(15歳)も家族と一緒に村を離れ、避難生活を送っています。「この訓練は、私たちを危険から守るためのものです。クラスの全員がそのことを理解しています」。

訓練を開始する先生

学校への襲撃は子どもたちに大きな恐怖感を与え、中退率増加をもたらしたり、子どもたちに長期の心理的な影響を及ぼしたりしています。教員たちは、軽度の心的外傷後ストレス障害を持つ生徒のケースに対処するための訓練を受けています。

しかし、深刻なケースの場合は、教師がユニセフなどの支援団体に報告し、生徒たちへ更なるケアを行います。「私たちは、深刻なトラウマを抱えた子どもたちを目の当たりにしています。彼らは悪夢にうなされ、何ヶ月も睡眠を十分にとれていません。今でも、バイクの音が聞こえると驚いて飛び跳ねる子もいます。このような場合には専門家が適切なケアを行うことで、多くの子どもたちを助けています」とハミドゥ先生は話します。

ユニセフは学校を安全で安心して学べる環境にするために、緊急事態時を想定した校内訓練の実施や心理社会的ケアの提供などが含まれる「セーフスクール」プログラムを展開するなど、学校の安全を確保するための取り組みを加速させています。日本の皆さまからのご支援で、2021年は、次のような取り組みをブルキナファソで行いました。

・792人の教員、319人のPTAメンバー、427人のソーシャルワーカーを対象に、心理社会的ケアなどの「セーフスクール」プログラムについての研修を行いました。
・55校で危機管理委員会を設立しました。
・中北部、北部、ブクル・デュ・ムウン地方の1,840校で、緊急事態時対応プランの作成や訓練を行い、70,002人の子どもたちが参加しました。

授業を受ける子どもたち

(2022年3月更新)