「COVAXファシリティ」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを、複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組みです。

この世界的危機の中、新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達・供給・輸送は、前例のない規模でのワクチン調達・供給になることが予想されており、世界最大のワクチン調達者であるユニセフ(国連児童基金)は、「COVAXファシリティ」を代表してその主導的な役割を担います。

ユニセフは、ワクチン供給にとどまらず注射器や医薬品等を供給し、現地での予防接種キャンペーンを支援しています。ワクチンは、最前線で働く医療従事者やソーシャルワーカー、リスクの高い脆弱な人々に優先的に届けられています。

新型コロナウイルス感染症:公平で迅速なワクチン供給のための取り組み(2020年10月公開)

COVAXが生まれた背景とは?

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まった早い段階で、この世界的な危機を収束に向かわせるためには、世界中のすべての人が確実にCOVID-19ワクチンを接種できるようにする必要があることが分かりました。

そのため、世界のリーダーたちはCOVID-19ワクチンの開発と製造、診断法や治療法の開発を加速させ、すべての国の人々が迅速かつ公平にそれらにアクセスできるようにするための解決策を模索したのです。その解決策として生まれたのが「COVAX(コバックス:COVID-19 Vaccine Global Access)」です。

COVAXファシリティの役割とは?

Gaviアライアンス、WHO、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)が主導する「COVAXファシリティ(COVID-19 Vaccine Global Access Facility)」は、世界の国々が共同でワクチンを確保・購入する枠組みです。高所得国、高中所得国が資金を拠出して一定数の自国用ワクチンを購入する枠組みと、国や団体などからの拠出金により途上国へのワクチン供給をおこなう枠組みが組み合わされています。

どの国も取り残されることなく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを手に入れられるよう、すべての国に門戸が開かれており、2021年1月22日時点で、日本を含めた世界190カ国が参加を表明しています。 かつてない世界規模での連携を目指すCOVAXファシリティは、COVID-19の危機を収束させることが期待されています。

COVAXの中でのユニセフの役割とは?

ユニセフは、製造業者やパートナーと協力して、COVID-19ワクチンの投与量の調達、輸送、物流、保管を担います。

「汎米保健機構 ワクチン調達のための回転基金(PAHO Revolving Fund)」と協力して、92カ国の低・中所得国へ向けた調達と配送を主導するとともに、97カ国以上の高所得国・高中所得国による調達の支援もします。対象国の人口の合計は、世界人口の5分の4以上を占めます。

なぜ、ユニセフがCOVAXファシリティを代表してワクチン調達を担うの?

Gaviアライアンスの主要調達パートナーであるユニセフは、年間20億回以上のワクチンを約100カ国に代わって調達し、定期的な予防接種の普及や感染症蔓延対応を支援することで、予防可能な病気から子どもの命を守っています。

新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達・供給・輸送は、かつてない規模での取り組みになるであろうことをふまえ、ユニセフは長年培ったワクチンの調達・安全な保管・輸送の経験とノウハウを最大限に用い、「COVAXファシリティ」を代表してその主導的な役割を担います。

© UNICEF/UNI259359/van Oorsouw
早産で生まれた新生児をケアする医療従事者。

ユニセフは、世界中の医療従事者が優先的に予防接種を受けられるようになることで、より多くの医療従事者が現場に復帰し、子どもと母親が必要とする保健医療(予防接種、栄養不良・マラリア・下痢など命を奪う病気の治療、産前・産後ケア、新生児への保健サービスなど)を受けることができるようになることを期待しています。

これらの重要なサービスが提供されなければ、何百万人もの子どもたちの命が危険にさらされます。新型コロナウイルス感染症という一つの感染症の影響によって、予防可能な他の病気で子どもの命が奪われることを、どうにかして防がなければなりません。

世界に届く、新型コロナワクチン

©  UNICEF/UN0427081/Fazel
COVAXにより供給され、アフガニスタンの空港に到着した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン。

ユニセフは、新型コロナウイルス感染症ワクチンが開発段階だった2020年から、承認後に備えて、ワクチン供給・輸送のための準備を進めてきました。

例えば、ワクチン接種に欠かせない注射器の大規模な確保と備蓄、ワクチンを適切な温度で安全に運ぶための「コールドチェーン」の確保、ワクチン接種のための人材の訓練などです。

COVAXを通じた初供給のワクチンは、2021年2月にアフリカのガーナに届けられ、その後も、COVAXワクチン配分計画に則り、コートジボワール、アフガニスタン、パレスチナ、イエメンなど世界各国に順次供給されました。2022年9月までに146カ国において17億回分のワクチンが提供されました。

COVAXは、2022年末までに低所得国で暮らす人々の70%が新型コロナウイルスのワクチンを接種することを目標に掲げ、そのために必要な41億回分のワクチン供給を目指しています。

ユニセフ本部サイトで公開している「COVID-19 Vaccine Market Dashboard」(英語)では、COVAXを通じたCOVID-19ワクチンの確保数や供給数、市場価格等に関する最新の情報を公開しています。

ワクチンを運ぶ「コールドチェーン」とは?

コールドチェーン(cold chain)とは、ワクチンを適切な温度で運ぶための低温物流システムで、予防接種事業には不可欠です。
熱に弱いワクチンを一定の低温で管理し、安全に輸送するためには、保冷設備の整った輸送車や保管庫に加え、高度な専門性とノウハウ、国境や組織を越えて連携するネットワークが必要です。

ユニセフは半世紀以上にわたって、「すべての子どもに予防接種を届ける」という強い意思のもと、子どもたちの命を守る予防接種事業を実施しています。多くのパートナーと協力して築いたコールドチェーンを通じ、2020年は年間19億回分のワクチンを調達し、世界の子どもたちの45%に予防接種を届けました。

COVAX においては、通常よりもかなり低い温度での保管が必要なワクチンであることから、ウルトラコールドチェーン(超低温でワクチンを管理する物流システム)を構築・拡大するため、ユニセフはパートナーとともに、2021 年だけで 800 台の専用冷凍庫を 70 カ国近くに設置しました。

新型コロナウイルス感染症ワクチンを、製造元から必要とする人々へ迅速かつ公平に届けるためにも、適切なコールドチェーンを事前に確保しておくことは、ユニセフの重要な取り組みの一つです。

COVAXに関するこれまでの情報(プレスリリース)

新型コロナウイルス(COVID-19)に関するページ

※本ページの情報は、2022年10月7日時点のものです。