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マハマット・アリ(13歳)
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サッカーは学校で集中して勉強することや、チームの一員となることを教えてくれたと語るマハマット |
アリは、年上の従兄たちがサッカーをしているのをながめ、テレビに映るサッカーのスター選手たちに驚嘆し、いつか自分もそんな選手のひとりになりたいと思って育ちました。けれども両親の死によって生活は一変し、気持ちが落ち込んで将来のことなど夢みることもできなりました。
人があふれんばかりにいっぱいの難民キャンプでは、若者が楽しめるような娯楽はほとんどありません。そんな中で、アリがサッカーを再び始めたことにマハマットさんはほっとしています。スポーツはアリにとって気分転換になり、彼が受けた心の傷を癒してくれているからです。
「最初はとても大変だったけれど、あとから叔父がこのキャンプに来て、再会することができました。その後は叔父がずっとぼくのめんどうを見てくれています。いろいろなことがあってから3年が経ち、ぼくの気持ちもすこし落ち着きました」とアリは言います。
アリを難民キャンプでサッカーに誘ったのは、コーチのワランディンガー・ブデューベニです。彼もまた難民です。アリは優秀なストライカーになったばかりでなく、サッカーを通じてもっと多くのことを学んだと言います。
「サッカーをするとき、アリは無心になれるんです。サッカーを通じて少し元気がもらえるようです。サッカーをしていると悩み事も消えて、夜もぐっすり眠れるみたいですよ」コーチはそう言いました。
アリの親友ロマンも似たような境遇にあります。彼の両親も3年前に殺害されました。ふたりはこのキャンプで出会い、すぐに友達になりました。「サッカーによって、感情的にも精神的にもずいぶん救われました。ひとりぼっちで、サッカーもしていないときは、亡くなった両親のことばかり考えてとても落ち込んでいました。でも、サッカーをしていると悪いことは全部忘れられます。」とロマンは言います。
アリとロマンのあこがれはロナウジーニョです。でも、彼のようなスター選手になるには、良い教育を受けなれければならないことを、ふたりはよくわかっています。
「サッカーをやることで、学校のことも大切に思えるようになりました。もうひとつサッカーが教えてくれたことは、フェアプレイです。仲間とサッカーをするとき、自分がチームの一員だということがよくわかります」そうアリは言いました。