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イブナ・シェリー(11歳)
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土曜日の朝、試合前に練習するイブナ |
ボア・モンケットに移ったとき、叔母ジェルメーヌが心配したことのひとつは、イブナの学校を見つけられるかどうかでした。彼女が働いていたナゾンの印刷所は店を閉めてしまったので、学費を払うことができません。しかし幸運なことに、家族ぐるみでつきあっている友人が、近所にある無償の教会学校にイブナを入れてくれました。
その学校、ティムカテック・スクールは、カリキュラムがいいばかりでなく、サッカーを奨励していて、そのことがジェルメーヌの心をとらえました。彼女はずっと以前から、ブラジルのナショナルチームのファンで、とりわけロナルドとロナウジーニョが大好きでした。
「男の子でも女の子でも、育てるときには絶対にサッカーをさせたいとずっと言い続けてきました。イブナには、サッカーを続けるように言っています。サッカーをしていたら、よその国に旅行に行って見聞を広めるチャンスもあるし、サッカーをしなければわからないことが経験できますから」とジェルメーヌは言いました。
ジェルメーヌは独身です。イブナの両親は田舎の農場で働いていて、しばしばイブナをひとりで家に残さなければならなかったので、イブナを自分のもとにひきとって育ててきました。姪のイブナがふしだらに育たないように、彼女は自分でも認める厳格さで接してきました。何十年も内紛が続いたハイチでは人々はとても貧しく、多くの女の子たちが性産業に携わって生活しています。叔母はイブナがそうなることを一番恐れたのです。
ティムカティックのサッカー・コーチであるフリッツ・キャリオットは、残忍な行為と不正の歴史を持つ社会で育つ子どもたちに、サッカーの試合は大切な社会的教訓を教えてくれると考えています。「サッカーは、傷ついたときに暴力に訴えるのではなく、お互いを許すということを教えてくれます。子どもたちはサッカーを通じてフェア・プレーを学ぶのです。」
サッカーには、イブナがこれまで経験してきた大変な暮らしを埋め合わせてくれる何かがあるのかもしれません。ジェルメーヌを手助けしてイブナを学校に入れてくれた教師のソフィア・ピエールは、次のように話してくれました。「イブナは以前より楽しそうです。サッカーをしているときはいうまでもなく、サッカーを見学しているときでさえ、楽しそうにしています。」
イブナも同じこと言います。「サッカーをすると元気になります。そして、世界のどこかで起こっている悪いことについて考えなくてもよくなるんです。」