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財団法人日本ユニセフ協会

UNITE FOR CHILDREN UNITE FOR PEACE

アッバス・ジャッジー(16歳)
治安の悪い地域でも生きていけるのはサッカーのおかげ〈イラン〉

モンタカブ・チームのメンバーとアッバス
video VIDEO high | low(英語)

金曜日の朝6時、ほとんどのティーンエージャーがまだ眠りの中、16歳のアッバスには寝ている時間はありません。イスラム教国では金曜日が休日ですが、アッバスはピッチの上で、サッカーの技術をみがくことに夢中です。

「毎晩8時から10時まで、近所の友達と通りや公園でサッカーをしています」アッバスは地元のサッカー場ゲートの外で、チームメイトを待ちながら話してくれました。あたりにはゴミや使い古しの注射器が散らばっています。「でも水曜日と金曜日だけは、モンタカブというチームで練習したり、試合をしたりしています。今日はアンサール・ユースというチームとの試合です。」

正しい生き方で

アンサール・ユースとの試合でボールを追いかけるアッバス

アッバスはモンタカブ・チームで最年少のプレーヤーです。ほかのメンバーの大半は、イランへ肉体労働者あるいは建設現場の労働者、荷物運搬人として出稼ぎに来ているアフガニスタン人です。チームメイトに共通しているのは試合に勝つという情熱です。かれらにはコーチ、ナシール・レザイがいます。しかし、彼はコーチというよりもみんなの相談役です。彼はみんなと同じ地域の出身なので、みんなの問題をよく知っていて、メンバーが悪い道に入らないように気をつけています。

「私は10代の頃からここで育ちましたから、麻薬の問題があることも知っています。サッカーをすることで、そういう問題にかかわらない生活を送ることができますし、私の力の及ぶかぎり、そのようにかれらを導こうと思っています」コーチであるナシールが、試合前のウォーミングアップ中に、そう話してくれました。

アッバスが暮らしている地域は、治安が悪いことで知られています。失業率が高く、そのため貧しく、麻薬中毒や暴力が横行しています。若い人たちは展望がなく、生活は容易ではありません。

サッカーはクスリのようなもの

サッカーの試合前、カメラに向かってポーズ

アッバスは、このテヘラン南部にある小さな家の一部屋で、母親と11歳になる妹とともに暮らしています。父親は11年前に脳腫瘍で亡くなりました。それ以来、母親が生活を懸命に支えてきました。彼女は2軒の家で掃除をして給料をもらっているほか、家の2部屋を貸して家賃を得ています。

2年前、アッバスは学校をやめて、収入を得るために仕事を探すことにしました。彼は仕立て屋の助手としての仕事を見つけ、糸を切ったりお茶をいれたりして働いています。

「サッカーがあるから生きていけます。サッカーはぼくにとってクスリみたいなもの。病気のときも、サッカーをすれば元気になります。サッカーは生活についても、そして協力することや目標を達成することについても教えてくれました」アッバスはそう言いました。彼の一番好きな選手は、ユベントスのアタッカー、ズラタン・イブラヒモヴィッチだそうです。

アンサール・ユースとの試合が始まりました。試合は思い通りに運びません。でも、アッバスはそこからまた何かを学んでいるのです。

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