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アフガニスタン:児童婚をやめて−子ども時代を取り戻した少女【2013年7月31日 アフガニスタン発】 婚約したとき、ファルザナさんはまだ10歳でした。 アフガニスタン西部の小さな村で、農業をするファルザナさんの父親は、娘より40歳も年上の男性と娘を結婚させることにしました。新郎は既婚者で、すでに6人の子どもたちがおり、そのほとんどがファルザナさんより年上でした。新郎は、ファルザナさんの父親に9000ドル以上の結婚持参金を渡したのです。 ファルザナさんは、父親に結婚を取り消すよう懇願しました。家計の負担になるのなら食べる量を減らすと約束しましたが、父親の決意は変わりませんでした。 現在12歳のファルザナさんは「泣きながらこんな結婚はいやだ、と両親に懇願しました」と当時を振り返ります。 唯一の支えは母親のハビーバさんでした。ハビーバさん自身も早くに結婚し、早婚の厳しさやリスクを自ら体験して知っていました。ファルザナさんの弟たちも反対しましたが、結婚式の日取りは決まっていったのです。 弟のヤーハ君は「おねえちゃんはいつもいろいろなことをしてくれていたし、花婿はあまりにも歳が離れている」と反対していました。 ■断れない状況
ファルザナさんの家はアフガニスタン西部の村の貧しい農家です。月30ドル以下の収入で4人の子どもを養っていた父親のグラムさんは、花婿が用意した9000ドルという額を断ることができなかったのです。 「私たち家族は貧しく、家財もありません。こんなに貧しくなければ、この結婚に賛成しませんでした。」と、グラムさんは語りました。 結婚式の日が迫ったある日、ハビーバさんは、必死の思いで行動を起こしました。ユニセフが支援する子どもの保護ネットワーク(CPAN)に相談したのです。このネットワークは、アフガニスタンの子どもの保護のために政府、NGOや青年団体や地方自治体と協力しています。 ■背景にあるのは貧困と意識の乏しさファルザナさんの村にいる子どもの保護ネットワークのメンバーは、このように幼い年齢でファルザナさんは結婚してはいけないと、父親と花婿を説得しはじめました。地域の宗教指導者で、子どもの権利ネットワークのメンバーでもあるスルタン・モハマッド・ユスフザイ氏が中心となり、何度も話し合いを行いました。 ユスフザイ氏は「イスラム教は児童婚を禁止しています。たとえ子ども同士が婚約していたとしても、女の子が適切な年齢に達するまでは同居を認めていません。イスラム教では、新郎新婦が成人するまで結婚を認めていません」と述べ、「児童婚の主な原因は貧困です。貧しいがゆえに、親は早すぎる結婚をさせてしまうのです。家族がイスラム教の道義や人権について、知識がないことも原因となっています」と続けました。
3ヶ月の話し合いの末、父親は受け取っていた結婚持参金を花婿に返すことにし、双方が結婚を取り消すことに合意、結婚式のわずか10日前のことでした。ファルザナさんと母親、そして弟たちは、結婚が取りやめとなり、安堵しました。 ファルザナさんは、児童婚から逃れることができましたが、このようなケースは幸運です。アフガニスタンでは、児童婚は広く行われており、女性の5人に約1人が15歳前に結婚し、46パーセントの女性が、18歳前に結婚しているのです。 ■地域を巻き込んだ取り組みをユニセフは、この慣習を変えるには、地域全体で取り組むほかないと考えています。 「児童婚は、社会で広く行われ、受け入れられている子どもへの暴力です。ほとんどの子どもたちは不平を言わず、おとなたちも報告せず、専門家たちも踏み込んで調査することをためらっています。ユニセフは地域住民とともに、児童婚への理解を深め、子どもたちを暴力から保護する方法などの支援をしています」と、ユニセフ・アフガニスタン事務所 子どもの保護部門のミカエラ・パシーニ部長は述べています。 ファルザナさんは、現在12歳。幼くして結婚しそうになったというつらい試練を乗り越え、学校に通っています。村の宗教指導者のスルタン・モハマッド・ユスフザイ氏や子どもの保護ネットワークのメンバーといっしょにいると、安心するといいます。 *子どもたちの名前は仮名です |