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バングラデシュ:子どもたちの命を守る「水泳教室」【2009年9月4日 バングラデシュ発】
バングラデシュの子どもたちは、最近、近所の池で水泳のレッスンを受けています。このレッスンは、子どもたちの命を守るための活動の一環として実施されています。 バングラデシュでは、子どもの命を奪う主な原因である下痢性疾患、はしか、栄養不良への対策活動が優先されてきたために、子どもたちを水の事故から守るための対策は講じられてきませんでした。しかし、予防接種や治療など、下痢性疾患などの予防可能な病気への取り組みが実を結び始めた今、バングラデシュでは、これまで隠れていた問題への対策が始められるようになりました。 そのひとつが「水死」。予防可能な病気で命を落とす子どもの数が減ったこともあり、子どもたちが水の事故によって命を落とす危険性が問題になり始めました。事実、バングラデシュでは他国よりも、水の事故で命を落とす子どもが多く、毎年約1万7,000人の子どもたちの命が失われています。 拡大する脅威
大河川、デルタ地帯、水田、池。バングラデシュには、「水」がいたるところに溢れています。水の事故の危険性は、気候変動や異常気象、頻発する洪水、海面上昇などの影響により、さらに高まっています。 このため、ユニセフは、地元のNGOなどと協力して、バングラデシュの子どもたちに、自分や友人の命を守るための水泳のレッスンの機会を提供しています。 「いま私たちがやっていることは、数年後の状況に備えるためのものです。」ユニセフ・バングラデシュ事務所のカレル・デ・ローイ代表は話します。「こうした活動は、この国で、十分今日的な意味を持っています。もし、次の100年間に海面が1メートル上昇した場合、バングラデシュの国土の3分の1が水没するという説もあります。」 命を救う技術これまでに、バングラデシュの3万5,000人の子どもたちが「泳ぎ方」を教わりました。そして彼らの多くは、同時に「救命術」も学びました。子どもたちは、友達や家族が溺れていたら、自らは水に飛び込まずに、安全な場所から棒やロープを使って溺れている人を助けるように指導されています。 ユニセフ・バングラデシュ事務所は、水の事故による死亡が多いバングラデシュでのこの取り組みが、予防可能な病気により死亡する子どもの死亡数が削減されているのと同じように、こうした事故による死亡も、いつか「過去のこと」になることを願っています。 「将来のために、子どもたちに泳ぎ方を教えているんです。」水泳のコーチを務めるサヒヌル・アラムさんはこう説明します。「溺れて命を落とすことがないように、水の事故に対するワクチンを与えているようなものですよ。」 |