<ジュネーブ、2001年10月25日(ユニセフ)>
ハリケーン"アイリス"後のユニセフの人道活動
<ベリーズ>
2001年10月8日(日)、中米の小国ベリーズをハリケーンが襲いました。甚大な被害は多くの子どもたちを脅かし、ユニセフも緊急救援活動を進めています。
1. 何が起こったか
2001年10月8日(日)に、ベリーズをハリケーン"アイリス"が襲い、貧しい住民が多く住む南部を中心に甚大な被害をもたらしました。影響を受けた住民は2万人で、国民全体の8.5%にのぼります。最新のデータによると、死者は22名、行方不明者は8名。南部のスタン・クリーク州およびトレド州では、住民の72%が住む家を失いました。またベリーズ・シティ、ダングリガ・タウン、プンタ・ゴルダ・タウン、キーズなど海抜が低い沿岸地域では、少なくとも7,000人が避難を余儀なくされました。
*****
ベリーズは中米で2番目に小さい国で、面積は2万2,963平方キロメートル、人口は25万人です。イギリスの植民地でしたが、1981年に独立しました。人種構成は多様で、住民の44%はメスティーソ、30%はクレオール、11%はマヤ、7%はガリファナ、宗教はカトリックが全体の6割を占めており、3割がプロテスタント、残り1割がその他となっています。
インフラの早急な修復が必要
住宅や学校、地域センターのほか、水道や道路、橋など公共のインフラが破壊され、数千人が家を失って孤立しています。教育・スポーツ省によると、学校が受けた被害は160万米ドルにのぼり、完全倒壊した学校は15校、12校が屋根が吹き飛ぶなど大きな被害を受けました。また設備や本、家具類の損傷も激しく、ハリケーンの影響を受けた学校児童は5,500名になる(スタン・クリーク州2,050名、トレド州3,500名)。
農業への被害
ハリケーンの強風は、農業に壊滅的な被害をもたらした。米やトウモロコシ、ココア、果樹など主な作物はほぼ全滅で、影響のあった農地は面積にして1万2,000エーカー、金額にして数百万ドルの損失がありました
国際的な支援の開始
ベリーズ政府の要請を受けて、国連災害評価・協力チームが10月10日に結成され、影響を受けた地域の被害状況とニーズ調査を引き受けることになりました。そして食糧、調理器具、飲料水、医薬品、衣料(とくに子ども用)、仮設シェルター、建築資材、道具類(建築用工具、チェーンソーなど)、それに持ち運びできる発電機が早急に必要であることが判明しました。
協調した対応
各種委員会を通じて寄せられる全国規模の緊急支援活動を全国緊急管理組織(NEMO)が調整しています。さらにトレド州とスタン・クリーク州の地域緊急管理委員会(DEMO)およびNEMOが村単位で設けた支部が、支援の現地調整と評価活動に貢献しています。
2.
ユニセフの対応:活動内容と実績、制約の数々
ユニセフの迅速な対応
ユニセフは、災害の影響を受けた女性と子どもたちのニーズを満たすことを第一としました。そして緊急対処用として、教育、緊急物資の供給、心理社会的な支援、データ収集の費用5万米ドルを用意して活動にあたっています。被害地域の状況評価に関してはベリーズの人材開発省、食料と飲料水の提供に関してはベリーズ・ケクチ・カウンシル、また仮設教室の建設に関しては教育省とそれぞれ協力して事業が進められています。
ベリーズ国外で活動するユニセフのチームは、グアテマラのユニセフ事務所およびパナマ地域事務所の支援を得て、ベリーズ政府の諸機関のみならず、現地入りしている国連の機関やNGOと対応の調整にあたっています。ユニセフはこれら機関と協力して被害評価を行なうとともに、被害評価フォーマットの作成も行なっています。現地での調整を徹底し、確実な成果をあげるために、ユニセフはプログラム支援のコンサルタントを雇う予定です。
飲料水と衛生設備
今回のハリケーンで最も被害が大きかった地域では、水道および衛生設備の機能が失われています。全アメリカ保健機関(PAHO)によると、水道管が破損して水の供給が停止しているだけでなく、石油やガソリンがあふれたり、浄化槽や便所、ごみ処分場が水に浸かったために、水質汚染も起こっています。被害地域には大量の残骸が集積しており、衛生管理や伝染病予防の措置を講じることが難しくなっています。
安全な飲料水と衛生設備の不足は大きな問題をはらんでおり、衛生状態の悪化によって、現在5万人の住民の健康が危険にさらされています。立場の弱い人びとを助けるために、安全な飲料水と衛生設備(浄水装置など)の提供、衛生知識を広めるなどの活動が、ユニセフ主導で行なわれています。
教育
ハリケーンで全壊また一部被害を受けた学校の正確な数は現在調査中です。しかし、ユニセフはすでに教育省を支援し、40か所の学校建物の再建と修復を開始しています。さらに、児童5,500人分の教材や教科書、教室設備、家具類を提供する予定で、今後は給食や、教師を対象にした災害対応講習なども実施されます。こうした緊急救援策によって、学校がすみやかに本来の機能を回復することは、大勢の子どもたちの生活を元に戻す上で大きな意味を持ちます。
特別な保護措置
ハリケーンの影響を受けた人びと、なかでも幼児と青少年は、家族や友人、近所の人と離れ離れになったり、家庭や暮らしが崩壊状態になって、精神的なショックを受けています。ユニセフはこの問題にも大きな関心を寄せています。ユニセフは世界各地の災害や紛争で支援を行なってきた経験から、心理的トラウマに対して早めに対処することが、社会復帰や学業、家庭生活の回復によい影響を与えることをよく知っています。実際、中米をハリケーン・ミッチが襲ったときも、女性と子どもを対象にした心理社会的な救援活動が、大きな成果をあげました。そして今回ベリーズでも、ユニセフは保健省の地域リハビリテーション局と密接な連絡を取りながら、社会心理的な具体的な支援内容を詰めています。ユニセフは、被害地域で活動する教師や看護婦、コミュニティ・ワーカーを対象に基本的なカウンセリング研修を実施するとともに、カウンセリングの照会ネットワークも整備する予定です。さらに「ハリケーン対処マニュアル」を再版して広く配布し、エルサルバドルやグアテマラ、ニカラグアから取り寄せたその他の資料もベリーズ用に作り直すことにしています。
|トップページへ|コーナートップへ戻る|先頭に戻る|