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ベナン:教育システムを改善する就学前教育【2010年11月26日 ベナン発】 今年の秋、近年まれにみる最悪の洪水被害に見舞われ、国土の3分の2が浸水した西アフリカ・ベナン。ユニセフは、ベナンに対して、教育支援を続けています。 人口の半数近くが一日1.25米ドル未満で暮らす世界で最も貧しい国のひとつ、ベナンでは、教育へのアクセスが課題となっています。 1994年、ユニセフは、ベナン政府とともに、子どもたちが小学校の入学に必要な基礎学力を身につけられるよう、コミュニティを基盤とした就学前教育プログラムを策定。6つの学校で始まったこのプログラムは、現在、農村部を中心に、200校以上で展開されています。 入学率の上昇
ワヒちゃん(4歳)は、ベナン中央部シネンデ町にある就学前教育プログラムに参加しています。農業を営む父親のグナンシ・オロウ・ヨさんは、ワヒちゃんが就学前教育を受けられるよう後押ししました。グナンシ・オロウ・ヨさん自身は、学校に行くという選択肢がありませんでした。「私は、一度も学校というところに足を踏み入れたことがありません。」 就学前教育では、自分の主体性や能力を育むことのできる環境の中で、ワヒちゃんや他の子どもたちが自由に自分を表現できるようにします。 「ユニセフが支援しているこのプログラムが開始される以前は、ベナンの教育システムは悲惨な状態でした。」ユニセフ・パラクー事務所のベルタン・ダンビデ部長はこのように話し、就学率の低さや退学率の高さ、男の子に比べて女の子の就学人数が少ないことなどの問題を指摘しました。しかし、現在こうした数値は全て改善されており、ベナンは、ミレニアム開発目標2『2015年までに普遍的な初等教育を実現する』の達成に向けて順調に推移しています。 保護者への支援
就学前教育プログラムの恩恵を受けているのは、ワヒちゃんを始めとする子どもたちだけではありません。ワヒちゃんの母親のママトウ・オロウ・ヨさんやほかの保護者たちは、プログラムを通じて、シアバターや食料品の作り方など、収入を生み出すための活動をしています。 ママトウ・オロウ・ヨさんは、このプログラムで社会的な力を得て自信がついたと話します。「このプログラムを通して得た収益で、家計を助けられますし、子どもたちにも少しお小遣いをあげることができます。それに銀行にお金を貯めておくこともできます。」 ユニセフは、母親たちへの支援に加え、トイレの設置や教師の研修、子どもと教師のための教育用品・資材の提供も行っています。 「コミュニティを基盤とした就学前教育は、母親が忙しいときに、子どもの面倒をみていなければならない年長の子どもたちも家事から解放され、教育を受け続けることができるのです。」ダンビデ部長はこう話しました。 退学率の減少こうしたかなりの成果が見られるものの、農村部の子どもたちに支援を届け、学校に入学させるだけでなく、通い続けられるようにするためには、まだまだ課題が山積みです。 ベナンの総人口の約半数は子どもたちです。そのうちの3分の1は5歳未満。就学前教育を行うことは、子どもたちの可能性を最大限に生かすために、なくてはならないものなのです。最近の調査で、5歳から14歳までの子どもの45パーセント以上が働いており、学校に通っていない可能性があることが明らかになりました。ジェンダーの格差も、改善されてはいるもののいまだに問題となっています。 「現在、学校に通っている男の子と女の子の比率の差は、10パーセント以下と大きな進展が見られています。」ユニセフ・ベナン事務所のジャーヴェイス・ハビャリマナ教育担当官はこう話します。「ベナン政府は、関係機関・団体と協力して、全ての子どもたちが学校に通えるよう力を注いでいます。女の子への支援がいまだに中心となっていますが、最も困難な立場にある全ての子どもたちへの支援にも力を入れています。」 「学校に通う子どもの割合は改善されてきています。しかし、学校に通い続け、卒業に至るには課題が残されています。」(ハビャリマナ教育担当官) 将来への準備
オロウ・ヨさん一家は、コミュニティを基盤にした就学前教育プログラムのおかげで、確実に生活が変わりました。「このプログラムは私にとって、とても素晴らしいものです。子どもを見てくれる場所が見つかって、私は家事をしたり、農作業を手伝ったりすることができますから。」「そして何より、子どもたちが小学校に通う準備を手助けしてくれるのです。」ママトウ・オロウ・ヨさんはこう話します。 ママトウさんの夫のグナンシさんはさらに付け加えました。「私には学校に通う機会がありませんでしたから、子どもたちを学校に通わせることは大切だと思っています。」 すでに、ワヒちゃんの両親は、大きな目標を心に抱いています。それは、息子が家族で初めて大学を卒業することです。 |