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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

タリクも学校にもどりたい!
〜チャドに逃れたスーダン難民の子どもたち〜
<チャド>

 タリク・アダムは10歳の男の子です。彼にはたった一つの願いがあります。それは家に帰ること。彼は、学校へ行き、友だちのアハミドとアハマットと一緒にボールで遊ぶことを夢見ています。素朴な願いですが、チャドとスーダンの国境近く、ビラクにある仮設の難民キャンプに住んでいるタリクには遠い夢なのです。彼は両親と一緒に、去年の8月、スーダンにあるベル・セリブという彼らの村から追われて以来、ずっとこの地区にいます。村から避難したときに、親友のアハミドとアハマットとは離れ離れになってしまいました。

image1  なぜ難民キャンプにいるの?とたずねられたタリクは、空を見上げました。そして地平線にスーダンの飛行機がないことを確認してからこう言いました。「ぼくらは、村を狙ったスーダンの空爆から逃れてきたんだ。とりわけ、ジャンジャウィードという馬に乗ったアラブの民兵たちの虐殺から逃げるために」
 この民兵たちはライフルや槍、矢、なたを持って、ダルフール地域でテロ活動をし、略奪をしたり村を焼き払ったり、抵抗する人を殺したりしているのだ、と難民たちは言います。彼らは、村人の持ち物や家畜をすべて奪うのです。

 タリクのように難民になってしまった人びとが住んでいるところの状況をすべて把握するのは困難です。多くは、空爆や馬に乗った民兵の襲撃のあと、残酷にも南部スーダンの家を追われた人びとです。彼らはほとんど何も持たずに着の身着のままでここへ来ました。何かを持って逃げるにはあまりにも時間がなさすぎたからです。タリクもほとんど何も持っていません。寒いサヘルの冬の夜を暖かく過ごすために、ここでは毛布さえとても大切なものなのです。

image2  これまで9万人以上の難民がチャドへ向かいました。彼らは400キロ以上の範囲に散らばっており、国境の近辺の安全とはいえない小さな村や一時的な避難所にいると考えられています。難民の実際の数はこの推定以上と考えられます。ダルフール地域では、爆破や空爆、家の焼きうちや、民間人の追撃が、頻繁に起こっているからです。

 難民となってしまった子どもたちもたくさんいます。タリクをはじめ難民となった子どもたちも、世界中のどんな子どもと同じように、学校へ行きたいと思います。難民の子どもの中には8月から9月頃にここへ到着した子どももいます。すでに5カ月間、学校へ行っていないのです。学校へ行きたいと思っても、学校がありません。スーダン人の子どもはアラビア語で教えられるため、フランス語で教えているチャドの地元の学校には通えません。学校へ行く代わりに、薪を集めたり、地元の住民のヤギや羊の世話をしたり、見つけられればどんな小さな仕事でもします。そして、その労働と引き換えに、家族のためにわずかな穀物を買ったりしているのです。

image3  ティネ村の周辺にある3つの難民キャンプでは、4800人以上の就学期の子どもが登録されています。ひとつの地区で最近親たちが集い、子どもたちの将来についての心配事を話し合いました。枝とわらを木の柱に結びつけて2つの教室がなんとか作られ、2人の先生がおよそ450人の子どもたちに授業をしようと奮闘しています。子どもたちは土の床にすわり、机もイスも、チョークもありません。先生は、教える道具もなく、そして、目の前にあるたくさんの問題に圧倒されています。机やイスもなく、教科書や教材もないわらで作られたたった2つの教室で、450人もの子どもを(受け入れを待つ子どもがさらにいる状況で)、どのように教えたらいいというのでしょう。

image4  「私はモーサといいます」と、年をとった男性が言います。「私はティネ第2地区の父母委員会の代表です。私たちは、30人の先生を見つけました。彼らは全員スーダン難民です。しかし、教材や教科書、ノート、ペン、黒板、子どもたちが座るプラスチック製のマットもありません。私たち親にも何もないのです。先生に差し上げられるものもないのです」

image5  学校は子どもが勉強を続けるためにとても重要であり、難民の子どもたちが整った環境に落ち着く助けにもなるのです。学校はまた、子どもたちが数週間、あるいは数ヶ月前に目撃した悲惨な残虐行為を心の中から消し去るにも重要な役割を果たすのです。

 タリクはこの先、ヤギの世話をし家畜の飼い葉を集めて過ごす日々をどのくらい送るのでしょう。彼は学校へ行きたいけれど、そのチャンスがありません。チャドへ難民としてやってきた推定4万人のスーダン人の学齢期の子どものように、タリクにも安心できる日がすぐにやってくるように…。

 今後2ヶ月のうちに、ユニセフは、地元のコミュニティおよび政府当局と協力して、基礎教育の提供を開始します。支援には基礎的な学校教材とユニセフ・スーダン事務所が提供するスーダン語の教科書の提供が含まれています。教科書の提供により、スーダンのカリキュラムに沿った支援を行うことができます。ユニセフは、難民の中から教員やボランティアを見つけ、研修を行う予定です。

2004年1月28日
ヌジャメナ、チャド(ユニセフ)

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