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エチオピア:子どもの栄養不良を防ぐために、
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© UNICEF Ethiopia/2011/Getachew |
22歳のフェティア・シャムさんは、6カ月のイステリアちゃんを連れて、月例の成長観察にやってきました。(エチオピアのオダ・ケベナ村) |
エチオピア中部の村オダ・ケベナの保健員をしているサルトゥ・アブデラさんが、地元の保健事務所で、2歳未満の子どもを持つ母親たちと会合を開いています。色鮮やかな民族衣装に身を包んだ母親たちは、月に1回開かれる、子どもたちの成長観察のために来ました。子どもたちの体重測定と上腕の腕回りの太さを測り、順調に育っているかどうか、栄養不良になっていないかどうかをみます。
成長観察は、ユニセフが支援する「コミュニティを中心とした栄養プログラム(CBN)」の一環です。これは、2008年、フェディス地区を含む、干ばつが多く、食料確保が不安定な地域で、試験的に導入されたものです。
今では、国家戦略のひとつになっており、特にエチオピア人の約85%が住む農村部に力点が置かれています。目的は、エチオピアの5歳未満児の死亡の50%以上に関係している栄養不良を改善するためです。
© UNICEF Ethiopia/2011/Getachew |
シャムさんは、コミュニティ保健員のサルトゥ・アブデラさんの助けを借りて、イステリアちゃんの成長観察チャートに体重を書き入れます。ユニセフは、エチオピア全国で栄養不良改善を目指す「コミュニティを中心とした栄養プログラム」を支援しています。 |
22歳になるフェティア・シャムさんは、3人の子どもの母親です。列の先頭に、娘のイステリアちゃんを抱いて並んでいます。「子どもの体重を測ってもらうために来ました」とフェティアさん。「毎月体重を測ってもらうと、子どもがうまく育っているかどうか分かるの。上手に面倒をみる手助けになるわ」
娘のイステリアちゃんは、先月に比べて、体重が増えていました。保健員のアブデラさんは、フェティアさんに子どもが健康に育っていることを伝えます。2人で、イステリアちゃんの成長観察カードに体重を書き込んでいきます。そして、プログラムに参加している母親全員に配られた家族保健カードを見ながら、何を食べさせたら良いかをアドバイスします。
「娘さんは6カ月に入っていますから、いつもの母乳に加えて、ソルガム粥、そのほか、手に入る柔らかな食べ物を口にさせてもいいことを伝えました」とアブデラさん。「そうすることで健康に大きくなっていけるはずです」
アブデラさんは、ほかの19人の母親とその子どもたちにも、同じように測定を実施し、助言をします。今回は子ども全員が健康に育っていました。万が一、重篤な栄養不良の徴候がある子がいたら、アブデラさんは、その子を村の保健所に紹介して、詳細な検査を受けてもらいます。そして、必要な場合は、栄養不良を治療する村の外来治療センター(OTP)に入院してもらいます。
昨年、アブデラさんは、OTPに2人の子どもを紹介しました。その子どもたちは回復しています。今年は、今までのところ、栄養不良の子どもは出ていません。どうやら栄養不良の防止策がうまくいっているようです。
© UNICEF Ethiopia/2010 |
「コミュニティ中心の栄養プログラム」の主要なポイントは、コミュニティによる議論です。例えば、オダ・ケベナで見られるように、栄養、そのほかのことについて頻繁に話し合います。 |
過去に子どもの栄養不良に苦しんできたオダ・ケベナのような村では、CBNプログラムがとても重要になってきます。オダ・ケベナには、アブデラさんのようなコミュニティ保健員が18人います。ひとりが平均50世帯を受け持っています。
アブデラさんは、栄養不良の子どもが減ったのは、専門的な知識と教育のおかげだと言います。「私たちは母親たちの相談にのります。母親たちは、みんな子どもたちを健康に育てたいと思っているのです。ほかの人たちより自分のほうが下手だと思われたくないですものね。だから、自然と、子育てもうまくできるようになるんです」と彼女。
翌日、シャムさんと、プログラムに参加しているほかの母親たち、ならびに、もっと大きな村の母親たちが、地元のコミュニティ・ホールに集まっていました。アブデラさんと、村の拡大保健員のハイマノット・イメニューさんとジェマネシュ・ドゥレッサさんが進行役となって、みんなで話し合いをしているのです。
「コミュニティに見受けられる問題を探し出して、その解決方法を話し合うんです。やるべきことがあれば、みんなが合意に達するように、私たちが助言をします」とイメニューさん。
問題は何か、最初に話し合うべき課題を見つけるまでに時間はかかりませんでした。アブデラさんは、まず、今月の成長観察の結果をみんなに報告します。次に、子育てへの父親の関与について話が移ります。子どもたちが適切な食事が摂れるよう、父親ができることはないのか、ということです。ある父親は、成長観察カードによって、子どもの栄養不良に目を向けるようになったと発言します。
「妻が、子どもの成長観察に出かけ始めた頃は、あまり深く考えませんでした」と父親。「でも、今日は、ここにいる父親のみなさんにお願いがあります。奥さんたちが成長観察に子どもを連れていけないようだったら、父親自ら率先して子どもたちを連れていって欲しいのです」その発言に大きな拍手が湧き起こりました。
重篤になる前に、そして死に至る前に、栄養不良を食い止めること、これがエチオピアでは国家の栄養戦略の要となっています。ユニセフ支援によるCBNプログラムは、子どもの生存面での成果が持続することを担保するだけでなく、「より良く改善」し続けることに一役買っています。