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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

誘拐結婚をやめさせよう!
エチオピアにおけるユニセフの支援
<エチオピア>

<2004年11月26日掲載>

 14歳のチャルトゥ・ジェイルーは学校への通学途中、15人の少年グループに襲われました。彼らはチャルトゥを殴りつけ、彼女の家から2時間半離れたある村へ連れて行きました。チャルトゥは地元で‘誘拐結婚’として知られる伝統的慣行のターゲットにされたのです。その後彼女は誘拐者にレイプされて妊娠してしまいました。
 エチオピアの伝統的慣習に関する国内委員会(NCTPE)が行った調査によると、チャルトゥが住むオロミア州では80%が誘拐による結婚です。これは南部諸民族州の92%と同じくらい高い割合で、国の平均も69%となっています。

 「何年か前に誘拐結婚が伝統として始まりました。男の子の親が女の子の両親に支払う結婚持参金を準備できないとき、女の子たちを誘拐するようになったのです」スデ区教育庁次長のツェガヤ・アヤネは言います。「誘拐結婚はこの地区ではとても深刻な問題です。現在ではコミュニティがこの問題を認知して、誘拐で学校をやめてしまった女の子たちを復学させる対策を取っています」

 多くの場合、誘拐者の親たちは誘拐に反対していません。というのも、彼らにはこの地域で伝統的に必要な結婚持参金を支払うだけの経済的余裕がないからです。村の長老たちはしばしば親同士の仲介人になり、女の子が誘拐者を告発したり、事件を裁判に持ち込むことを妨ごうとします。たとえ誘拐結婚により有罪になったとしても、2〜3年の刑があればいいほうです。チャルトゥは今では誘拐者から逃げ出すことに成功し、裁判を起こそうとしていますが、とても厳しい状況にあります。

 彼女はやっとの思いで家に帰ってきましたが、父親は彼女を受け入れようとしませんでした。誘拐者の親から400ブル (50米ドル未満)と馬一頭を結婚持参金として受け取っていたからです。結婚持参金を返すように迫られたとき、父親は代わりにチャルトゥの10カ月になる息子、ゲブリルを誘拐者の親に渡しました。

 「父は今でも私を嫌っています。父は夫のところへ帰れと言いますが、母はノーと言って、教育を受けるように言ってくれます」チャルトゥは言います。「とても腹が立っています。赤ちゃんの父親は罰せられるべきです。法に触れることをしたんですから。わたしは赤ちゃんと一緒に暮らしたい。でも父と村の長老たちが赤ちゃんを夫の家族に渡してしまったんです」

 誘拐結婚は女の子たちとコミュニティに多くの悪影響をもたらします。例えば、貧困を長引かせたり、被害者の女の子の人権を侵害します。女の子たちは成長途中にある身体にダメージを受け、HIV/エイズに感染したり、学校をやめざるをえなくなるのです。

 「誘拐による結婚はつまり子どもに対するレイプなのです」ユニセフ・エチオピア事務所の代表、ビヨン・リングウィストは述べています。「誘拐された女の子たちは身体的にも精神的にも暴力を受けています。わたしたちは男の子たち、女の子たち、そしてコミュニティ全体に対し、誘拐結婚は許されない行為だと教えなくてはいけません。わたしたちはこのような暴力行為を止めさせるために協力し合わなくてはならないのです」

 誘拐結婚の犠牲になった女の子は現地の言葉で「グスメティ」と言われ、処女でないためにコミュニティから軽蔑されます。誘拐者を拒んで故郷の村に帰ってきた女の子たちは、その家族と同様に仲間はずれにされます。女の子たちは悲惨な運命を受け入れざるをえないような立場に追いやられるのです。

 「誘拐結婚から逃げ帰ってきた女の子にコミュニティは冷たく接します。村の長老は、女の子が帰ってきたとき、その子の親に、誘拐者のもとへ女の子を返すように言うのです」とスド区女性問題局長のイナボ・ヌラは言います。「拒否すれば彼らは尊敬されません。コミュニティは誘拐された女の子をまるで普通の結婚をしたかのように見なすのです」

 ユニセフは、教育・女性問題局とともに、子どもたちやコミュニティに対する教育・啓発活動に取り組んでいます。誘拐結婚は文化的慣習として許容できるものではなく、基本的人権を侵害するものなのです。誘拐された女の子は身体的にも精神的にも大きなダメージを受けてしまいます。村の長老たちにはそのことをよく知ってもらい、子どもを学校にとどめるよう、親を説得してもらわなければなりません。支援ネットワークの一環として、学校の中には相談グループが設置されつつあります。また、実際に誘拐結婚の被害にあった女の子には、犯罪を犯した人々に対して法的措置をとるように促しています。これらの活動を通じて、ユニセフは誘拐結婚の根絶を目指しています。

2004年11月12日
ユニセフ・エチオピア事務所

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