<2004年3月23日 信濃毎日新聞掲載>
政変で学校閉鎖 食事も困難
<ハイチ>
カリブ海の国、ハイチは、今年、独立から200年を迎えます。しかし、独裁政権や相次ぐ政変で政治や社会が安定せず、今でも10人に1人以上の子どもが5歳になる前に命を失うような、中南米でも最も貧しい国です。
今、さらなる政変がハイチを脅かしています。2月にゴナイブ市が反政府組織に占拠されたことにはじまり、現在までに国の半分ほどが反政府組織の支配下に置かれました。アリスティド大統領が国外に脱出し、米軍が首都の治安維持にあたっていますが、国内では前大統領支持派と反政府組織との間で武力衝突が続いています。
危機の影響を直接に受けているのは子どもたちです。極端に治安が悪化したことにより、人道支援のスタッフも国の大半で活動できない状況に陥りました。現地のユニセフ事務所のスタッフ、ラルフ・ミディさんの報告によると、ハイチ国内では秩序が失われ、燃料不足からバスや車も走らず、物価が極端に上がっています。親は心配して子どもを学校に通わせず、学校自体が閉鎖されている地域もあります。
2003年9月以降、中心部のアルティボニット県だけでも、学校に通っていない子どもの数は10万を超えています。1日で温かい食事が取れるのは学校の給食だけという子どもも多く、学校の閉鎖が子どもたちの栄養面に与える影響も懸念されています。
ミディさんが出会った子どもたちの多くが、疲れきった表情で、気力を失っていたといいます。「すでに1ヵ月も子どもたちはおなかをすかせているのです。子どもたちには長い時間です」
学校が蓄えていた食糧は略奪され、市場でひどく高い値段で売られています。たとえば、一塊のパンが一家の収入の4分の1もします。
医療施設はまだ機能していますが、人々は治療や薬のお金を払えません。仕方なく、無料で医療活動が行われていますが、追加の医療品や物資を購入できず、入院患者は食事さえろくに取れない状況です。
このような中、3月3日、政変が始まってからはじめて、ユニセフの緊急支援物資を積んだ輸送機が現地に到着しました。輸送されたのは、医薬品や、栄養、教育に関する支援物資で、今後3ヶ月にわたって危険にさらされている子どもたちのニーズをカバーします。支援物資を届けるとともに、子どもたちへの栄養補給や予防接種、仮設学校を設置して学校を再開させることなどが計画されています。
3月9日には、国連が、ハイチ支援のために総額3500万ドルの緊急支援を国際社会に求めました。子どもたちの状況改善を中心に考えた一刻も早い正常化への取り組みが必要になっています。
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